フランスでクリスマスケーキの定番といえばこの形です。直訳すると、「クリスマスの薪」になります。
なぜ薪という形になったかについては2つのお話があります。1つは、前年の冬の燃え残りの薪で作る灰は、これから1年の厄除けになるという伝説にちなみ、お菓子も縁起のいい薪形になったという説。もう一つは、貧しく、恋人へのクリスマスプレゼントも買えないある青年が、せめてもと、薪の一束を恋人に贈ったというちょっとロマンチックな説です。
バタークリームはちょっと・・・と敬遠せずにぜひ作ってみて下さい。
かしまし娘の<ビュッシュ・ド・ノエルよもやま話>
M:クリスマスに向けてぜひ作ってもらいたいお菓子です!
このケーキの形は、「ビュッシュ」=「薪」の形です。フランスに行くとクリスマス前12月のはじめ頃から1月の公現節のお菓子にかわるまでお店に並んでます。普通に売られているお菓子も、トユ型(細長い形)で組んだりしてビュッシュドノエル風にしたり。
今回は、いちばんオーソドックスなバタークリームのロールケーキを基本にした形です。
O: 日本じゃクリスマスケーキというと普通のイチゴのショートケーキにメリークリスマスのプレートとサンタさんが乗ってるイメージだけど。
M:フランスはそもそもショートケーキがないし、丸いお菓子をカットして売るっていうことがないみたい。一人前のお菓子が、そのまま大きくなってるっていうかぁ・・・
O: そうそう、大きいのと、小さいのと同じのが並んでるもんね。
K:すっごいかわいいよね。
M:ビュッシュドノエルの色は、今回紹介しているチョコレートだけじゃなくて、コーヒーとかピンクの色とかいろいろ。この3色がいちばん多いかな。
K:飾り付けは、日本と一緒でケーキに刺すようなグッズが色々あるけど、日本に比べてサンタの顔がこわい。おじさんを小さくしたみたいで。かわいい感じじゃないよね。
O:日本みたいにクリスマスがイベントっぽくなってなくて、厳粛なものだから、サンタさんもキャラクターっぽくない。
M:最近、日本じゃ24日のクリスマスイブがすごく重要視されてるみたいだけど、向こうは25日が一番大切。お菓子屋さんも25日は午前中だけ店を開けてケーキを売って、そのあとは家族で過ごすっていう日のようです。普段は食べられないようなごちそうと、ケーキを家族みんなで食べてそれから真夜中に家族で教会のミサに行く。
O:そもそもヨーロッパじゃサンタクロースにプレゼントをもらうっていうの、聞いたことないよね。お互いにプレゼントの交換はするみたいだけど・・・
M:サンタはセント・ニコラス。鬼と一緒に来ていい子にはプレゼントをくれて、悪い子には棒やなんかで脅かして良い子になる約束をさせるみたい。ちょうど日本のなまはげみたいなのかな。去年ちょうどウィーンのレストランでみたときは、寛平ちゃんかと思っちゃった(笑)。
O:(笑)ベルギーのシュペクラ・キュウスが、貧しい人にものを施したところからサンタさんのプレゼントの起源らしいね。
K:日本のクリスマスの風習はアメリカから来たのかもね。
O:赤い服のサンタさんを広めたのはアメリカって聞いたことがあるよ。何でも、コカ・コーラの会社が自分のところのイメージカラーをサンタに着せたのが始まりとか。だからヨーロッパの昔のカードに出てくるサンタは白や緑、茶色の服を着てる。最近のカードは赤になってしまったけど。ここまで影響を受けてしまってるんやね。
K:今回のケーキの作り方のポイントは?
M:生地はイチゴショートで使ったジェノワーズ生地の応用。今までのケーキはみんな厚みのある型で焼いてたんだけど、今回は鉄板に流して薄く焼くっていう生地。
O:ターンテーブルしかないオーブンだったらちょっとつらいよね。
M:う〜ん、ターンテーブルしか持ってない人は、ターンテーブル内で作れるように厚紙なんかで枠を作って小さく焼いて、小型のビュッシュドノエルを作るしかないかなぁ。
K:もし、今からオーブンを買おうとしている人は、角皿かターンテーブルかよく気をつけて、買った方がいいと思いますよ。二段角皿のなんかすっごくいいよね。
M:うん。あと、薄い生地なんでうまく焼かないと乾燥してクッキーみたいにカリカリになってしまう。だから、オーブンの温度を守ることと、あとはオーブンに入れたあと開け閉めをしないことと、焼きあがったらすぐに熱いプレートからはずして冷まし、乾燥しないように紙を掛けておく。それで、もし焼きすぎたなって思ったら、濡らしたふきんを上からかぶしておくとちょっとマシになる。
スポンジ型で焼いたときはバターを入れたんだけど、今回は、生地をよりしっとりさせるために、牛乳を入れて水分を多くしてます。
K:もしパリパリになってしまったときの解決策はある?
M:そしたらもう、巻くのをあきらめてクリームをサンドして重ねてちょっと四角いビッシュドノエルにするしかないかなぁ。
O:積み上げてから角を削ればドーム状になってちょっとそれらしくなるかも。
それと、私の失敗した経験から、焼き上がりの目安は、紙がうまくはがれるかどうかで確認するのも失敗が少ない。よくふわふわしてたらとか弾力で見ようとするけど、なかなかわかりにくい。私が職員になって1年目に失敗したのはこれで、弾力がよくわからなくて焼きすぎちゃって・・・・そのときはシロップを塗って使ってもらえたけど。
M:でも、全体がパリパリになってしまったものにシロップを塗ると、パンを牛乳に浸したみたいにぐちゃぐちゃになってしまうから気をつけた方がいいよね。ちょっと端を焼きすぎたぐらいだったらそこをカットしてしまうか、シロップを塗るとかでカバーできるけど・・・・・
K:そうやね。じゃあ次にクリームのポイントは?
M: みなさんバタークリームが嫌いっていう人がすごく多いんですけど、でも毛嫌いせずに食べてみてください。今回はパータボンブとバターを合わせてるから、卵黄のコクとか出てきてバターを食べてるって感じがしない。
O:おいしさのポイントは、おいしいバターを選ぶこと。マーガリンとか古いバターとかで作ると嫌いになってしまうかも。
M:あと塩の入ったバターとかもね。
O:そう、食塩不使用バターを使うこと。最近いろいろ種類も出てきたね。
M:回転のいいスーパーで買えば鮮度のいいのが買えるよね。あと、飾りのグッズは、この時期、スーパーでセットになって売ってたりするみたいですよ。
K:フランスはビュッシュドノエルだけど、それぞれの国でいろんなお菓子があるよね。
O:イギリスのクリスマスプディングは中学のときに作ってことがある。
M:すごい!
O:例の「入門シリーズ」に載ってて、茶色の色に惹かれてチョコレート好きの私としては作ってみたけど、それより香辛料とかが効いてて、大人の味だったから、一回しか作ったことがない。
ドイツはシュトーレンやね。向こうに行ったらいろんなお店においている。中身もいろいろあるし。クリスマスの日だけ食べるんじゃなくって、アドベンドという、クリスマスに向かっての4週間のお祭りの間食べてるね。
イタリアはパネトーネ。
K:イタリアにはパンフォルテっていうのもあるよね。フルーツがいろいろ入ってるの。
O:ビュッシュドノエルは、小さいときからうちの近所で売ってたけど、私はバタークリームのケーキには惹かれなかったから、買ったことなかった。初めて食べたのは辻調の生徒のとき。
K:私は、生徒のときマジパンでおおっきなサンタ作ったなぁ。今も写真がある。
M:家で食べるクリスマスのケーキは予約して買ってたね。
K:うん。
O:ちっちゃいときはクリスマスと誕生日ぐらいしかケーキが食べれなかったから、すっごい楽しみだった。
M:うちでは、ケーキの上にのっているいろんな飾りが取り合いになってたよ。サンタはかわいいけどおいしくない。
O:私は、家が嫌いやった。
K:えっ、チョコレートの家じゃなかったの?
O:ウエハースの家やったから、パスパスで。メリークリスマスのプレートだけがチョコレートやったの。これが取り合い。母親がけんかにならないように切ってくれてたけど、切ると価値がなくなるみたいでいややった。
M:そうそう。でもサンタだけは食べずに最後まで残ってた!
O・K:なつかしぃ〜。