【お菓子あれこれ談義】 よしながふみさんのインタビューはエコール・キュリネール国立で辻製菓専門カレッジの高原先生、今井先生を交え、お菓子を食べながら行われました。ここでは、お菓子が話題の中心になったところをお届けします。
●ドラマ『アンティーク〜西洋骨董洋菓子店』のケーキたち よしなが「これは、ドラマに出て来た」 高原「はい、ピュイ・ダムールです」 よしなが「どんなお菓子なんですか?」 高原「ピュイ・ダムール自体はフランス菓子としては定番ですが、このスタイルはうちの堀田先生がノルマンディで働いていたお菓子屋さんのものです。むこうではクロワッサン、ブリオッシュを土日に食べるように、ケーキも土日、それも日曜日の教会のあとに買って帰るということが多いんです。日本のように平日にばくばく食べるということは少ないですね。田舎でケーキ屋さんがないところは、パン屋さんが土日だけケーキをつくったりということもあります」 よしなが「TVで見たときに『おいしそ〜っ』て思って、今日食べることができて、ホントよかったです」 高原「ありがとうございます。よしながさんの『西洋骨董洋菓子店』を読ませていただいて、渋めのお菓子が多いなぁ。きっと、プロ向けの本を読んでいらっしゃるなぁ。と思ったのですが?」 よしなが「先生方の前で恥ずかしいんですが、柴田書店のケーキングという本を読んでます」 高原「やはり、そうですか」 よしなが「あとは私が好きなお菓子屋さん、尾山台のオーボンヴュータンとか、伊勢丹の地下のルコントとか、行ったことはないのですが、パリのピエール・エルメとか、深沢の高木康政さんとか・・・。先生方はTVドラマのお菓子をつくられる上でご苦労とかはないのですか?わたし、台本読んだとき『天使の羽』とだけ書いてあって『すごい、どうするんだろう?』って思ったんですが」 高原「あれは1回目に登場するケーキだったのでまだ時間があったのですが、確かにお菓子を知ってるスタッフが少なく共通のボキャブラリーが少なくて「ふわっとした」「かる〜く」とか抽象的な言葉ばかりで、その点は大変でしたね」 今井「天使の羽は5回ぐらいデザイン違いをつくらせてもらいました。自分で考えてただつくるだけでしたら、それほど迷わずにつくれるのですが、演出家をはじめTVの方々が考えていることを、まず言葉を引き出し、イメージをうつしかえて、という作業は大変でしたね」 高原「今井先生はいつもは、それほど他人の意見を聞く方じゃないのに(笑)。今回はあちこち相談してたもんね」 今井「ホント、大変でした」 よしなが「今はもう大丈夫ですか?」 今井「いやぁ、最後の回まで、大変かもしれません(笑)」 高原「お菓子はオーヴンに入れたものが思った通りに焼き上がってくるかといったら、毎回そうなるわけじゃないですし、それが、自分のイメージでなく他の人がイメージしているものとなると、そうとう大変ですよ」 よしなが「ドラマに映るケーキを収録後に、ちょっぴりいただけるとうかがって、『きゃっ』って感じだったんですよ」 高原「きちんと食べていただけるものを用意させていただいていますから」 よしなが「どれくらい、つくられるのですか?」 今井「お店の表で見えるものと、店内のショーケースと合わせると小さなケーキ屋さんができるくらいは」 高原「今回フジテレビさんから、ドラマ放映中にお台場でケーキを出せないだろうかというお話もいただいたんですが、学校で授業をやりながらお台場でケーキ屋さんをやるのは、もう1日40時間あっても・・・」 よしなが「たいへんすぎますよね(笑)」
●ケーキは茶色系! よしなが「最近のケーキの流行というか、傾向はありますか?」 高原「フランス人でも知らないようなフランスの地方菓子、かと思ったらプリンとか普遍的なものも。私はコレ、私はコレ、という具合に選択肢が増えて、例えばコンビニのケーキだってけっこう凄いですから。だから昔のティラミスのように、みんながティラミスという時代はもう来ないと思いますね。授業で、生徒から『おいしいケーキ屋さんはどこですか?』という質問をされることがありますが、僕はひとりひとりが自分にとっておいしいと思える店やケーキを探す、また探せる、そんな時代になっていると思うんですよ」 よしなが「そうですね。ホントいろんなケーキがありますもんね。『西洋骨董洋菓子店』を書いていて思うのは、キャラメルとかタルトとか焼き菓子とか、茶色系のものにグッと来る自分がいて、で、ドラマを見ていてもアシスタントの女の子たちも茶色系に弱いみたいですね」 高原「フルーツの鮮やかなものとか、ふわっとしたものは?」 よしなが「それもいいのですが、茶色系です。キュンとくるのは」 高原「ふわふわしたものの方が女の子は好きなんだと言うのは、男の幻想ですかね(笑)」 よしなが「(笑)やはり、茶色系ですよ!」 |