辻調理師専門学校: 料理に国境はある・鶏
日本において鶏肉は、淡白さゆえに料理のバリエーションも多く、価格も安い為、一般的な食品として、広く親しまれています。食用としての利用は、明治の初期頃から始まったようですが、戦後アメリカから導入された生産効率の高いブロイラーにより、生産量が飛躍的に伸びました。さて、些か個人的なお話をさせて頂きますが、今から20数年前に鶏に対する私の認識が大きく変わった事件がありました。フランス人のシェフが作った、を食べた時の感激を今も忘れる事が出来ません。つまりこれが私とブレス産の鶏との初めての出会いでした。そして、もう一つはブロイラーを食べたシェフが「この肉に魚の味を感じるが...」とおっしゃった事です。くどくどとは申し上げませんが、フランスと日本の鶏は、素材的にかなりの違いがある事を思い知らされ、「僕も美味しい物を一杯食べたいな」と、単純に感じた事を思い浮かべます。さて、昨今の地鶏ブームは皆さんもよくご存知と思いますが、鶏本来の味を知ってしまった消費者と、その要望に答えるべく研究された生産業者の努力により、素晴らしい食材が手に入る様になりました。本章では、それぞれの持ち味が生かせるような調理の注意点も説明していきたいと思います。鶏の調理法においては、「焼く」「蒸し煮にする」の二つを集中的に紹介致します。鶏は、淡白で癖が無く、非常に扱いやすい食材です。しかし、調理法や調理時間によっては味が抜けやすく、鶏料理らしさが損なわれる事もあります。骨付きの鶏肉の表面に壁を作り、旨みを外に逃さずに、短時間に仕上げる事が、大切な要素と思われます。尚、本章で使用する鶏は一般的に言われている地鶏を使用しておりますので、調理法、調理時間などは、ブロイラーを使用する場合とは細かい所で異なる場合があります。