素材の豊かさが天下の台所を生んだ まず、最初に大阪は新鮮でおいしい食材に恵まれたているということがあります。
日本料理は、何といっても素材です。良い素材が手に入れば料理はしめたもの。そういう意味では大阪は地理的に最高に恵まれているんですね。
例えば魚介類でしたらこのようなことなんです。大阪に「難波」という地名がありますね。「難波」という地名の由来は今でこそ信じられませんが、昔は大阪城付近まで海が入り込んでいましたので、潮の流れが急で船を止めることができなかったからというところからつけられているんです。「なんば」と読みますが別の読み方では、「なにわ」とも読みます。「なにわ」 は「魚庭」とも書き、すなわち魚介類が豊富なことを意味しています。大阪湾は、昔から鰯の宝庫でした。その餌になる鰯を追って多くの魚が湾にはいってきたんですね。新鮮な魚が手に入れば美味しい料理ができるにきまっています。
そして、次に野菜に関してですが、大阪の特産物といってもぴんとこないかもしれませんが、例えば泉州地方でしたら水茄子、玉葱、里芋などがあります。河内地方なら千両茄子、紅ずいき、空豆、石川子芋、海老芋などがあるんです。大阪は平野部では盛んに良い野菜がつくられていたんです。何と昭和の初めには、セロリ、芽キャベツ、カリフラワー、レッドキャベツは、東京へも出荷していたとのことです。
大阪は、南北に長い島国日本のほぼ中央に位置していますので、気候的にはちょうど温暖な所です。また、その土地も南北に肥沃な大阪平野が広がり、淀川の豊富な水にも恵まれています。気候も土地にも恵まれ、野菜類・米麦を作るには大変適していたと言えます。自然に、大阪の農家は昔ら品質が良くて商品となるような野菜を多く作ることに力を注げたのですね。