「フランス料理の本場で働きたい」「海外の人を相手に、おいしいものを提供したい」。将来、料理に携わる仕事がしたいと考えている人の中には、調理師として磨いた料理の腕を活かして、グローバルな活躍をするという夢を持っている人もいるのではないでしょうか。
海外へ。海外から。
活躍の場が
世界に広がる食の業界
フランス料理やイタリア料理、中国料理など、外国の料理を学ぶうち、現地で働くことに憧れを抱く人もいるでしょう。各地にはそれぞれの食文化があり、現地にしかない食材や味があります。その土地の料理を学ぶうえで、現地に行って体験することに勝るものはありません。
海外で活躍する夢をもつ人も多い中、食の世界は実力主義の世界です。調理の実力があることをアピールすることができれば、可能性が広がるチャンスも多くある業界といえます。特に日本人の繊細な仕事や高い技術は海外の料理人から評価されることも多く、ほかの分野に比べて、食の分野は、日本人の活躍の場が開かれている分野といえるでしょう。
これまで14万5千人以上の卒業生を輩出してきた辻調グループ。実際に海外で活躍している卒業生も沢山。一方、本場でのフランス料理を学び、経験を重ねた後、地元・九州に戻り、地域の食材を活かしたフランス料理を独自の視点で展開し活躍している卒業生もいます。
フランスで自分の店をオープン
辻調調理師専門学校からフランス校へ留学。1999年卒業後は、チーズの輸入会社やワインショップに勤務し、チーズとワインを学び、千葉県の「ル・クループ」、東京・恵比寿の「タイユヴァン・ロブション」、2004年からは同所の「ジョエル・ロブション」で働き、再び渡仏。ブルゴーニュ地方の一つ干しレストラン「ステファン・デルボード」などで経験を積み、2012年12月に「レストラン
ソウ」をオープン。
Restaurant SO オーナーシェフ
高橋 創さん インタビューはこちらから。
フランスで一流の技術を身につけ、地元九州の活性に尽力
辻調理師専門学校から辻調理技術研究所を経て、フランス校へ。2000年に卒業後、東京での約4年間の修業を経て渡仏。パリの三つ星店』に勤務するかたわら、休暇中にはスペインやモナコ、ニューヨークやスイスでも研修。念願だったフランス中南部『ミシェル・ブラス』での研修も果たす。帰国後は『ミシェル・ブラス
トーヤ ジャポン』での勤務の後、2015年から福岡のフランス料理店『オーグードゥジュール メルヴェイユ 博多』でシェフを務める。
オーグードゥジュール メルヴェイユ 博多 シェフ
小岸
明寛さん インタビューはこちらから。
世界からの注目が高まる
日本料理
海外を舞台に活躍するために、フランス料理やイタリア料理を学ぶ人はたくさんいます。一方で、近年、日本食が海外からの注目を集めています。
2013年、「和食」がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産として登録されました。「和食」の食文化が自然を尊重する日本人の心を表現したものであること、伝統的な社会慣習として受け継がれていることを評価されたのです。
辻調理師専門学校の岡本健二先生は、日本食の人気は今後も健在だと話します。
岡本「日本食が世界に認められたことで、海外の方の日本食に対するイメージが変わったように思います。今後は伝統的な日本料理が海外で求められる時代になっていくでしょう。
これまで、日本料理は日本文化に触れるときの要素の1つにとどまっていましたが、日本国内でイタリア料理やフランス料理が日常の食事として浸透しているように、海外各地でも日常の食事の選択肢として取り入れられていくかもしれません。
そうなるためには、日本から日本料理の魅力を発信していく必要があります。日本で学んだ人が海外に出て、現地の食材で日本料理を作っていく。今後、再び海外へ出て行く料理人たちは増えていくでしょう」
将来調理師として海外で働きたいと考えている人は、日本食の学びを深め、現地で日本料理店を開くのも1つの手段です。一方で、日本国内にいながらも、グローバルな観点で料理の仕事に携わることもできます。
観光庁の訪日外国人の消費動向調査では、インバウンドで日本を訪れる外国人が訪日前に期待していたことのトップに「日本食を食べること」が長年ランクインしています。
情報引用元:国土交通省 観光庁
グローバル化の進む
日本の食業界
日本食の他にも、日本では食のジャンルが多様化しています。フランス料理やイタリア料理、中国料理だけでなく、エスニック料理や、和洋が融合した創作料理などを提供する飲食店が増えました。
日本食を求めて海外から旅行に来る人たち。日本に住みながら自国の料理を食べに飲食店を訪れる外国人たち。日本で調理師として働きながら海外のさまざまな文化や人に触れ合える時代となっています。
日本における食の多様性の波は、調理師養成施設にも見られます。辻調理師専門学校では、海外から調理を学びに来る留学生の数が年々増えています。
辻調理師専門学校の高岡和也先生は、次のように話します。
高岡「辻調理師専門学校では、留学生の方の割合が年々高くなってきています。
日本人同士のコミュニケーションだと、いわゆる“ツーカー”の関係でお互いの背景が見えています。それは、共通した価値観を持っているからです。
ですが、留学生とコミュニケーションを取ってみると、その人の背景であったり、価値観であったりに違いがあることを感じます。
1つのまとまりの中に多様な考え方、価値観の人たちがいる。そうした、いろいろなものの見方があるんだということがわかるような授業を仕掛けていきたいですね。
学生たちには日本だけでなく、世界を意識してほしいと思っています」
「おいしい」という感覚は世界共通です。「フランス料理の修業をして、フランスで店を開く」「イタリアで修業して、日本でイタリア料理店を開業する」「日本食の魅力を世界に発信したい」。食のグローバル化が進む中で、調理師の活躍の場は世界に広がっています。多様な価値観を学びながら、どこで、何がしたいのか、調理師としての自分の道を選んでいきましょう。