キャリアデザイン特別授業「プロフェッションズの先輩に聞く」 vol.1「これから社会へ出るエコール辻東京の学生へ、先輩たちが届けたい言葉」
※2020年2月17日(月)に行われたキャリアデザイン特別授業のご報告ですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により公開が遅れております。
エコール 辻 東京では、これから社会で活躍する学生のためのキャリア支援を行っています。その一環として、食のプロフェッショナルの道を歩み続けている先輩方の生き方や働き方などのリアルな声を聞くことは、学生たちにとっても貴重な機会です。
この日は、「アトリエうかい たまプラーザ店」でパティシエとして働く山本彬世さん、「パティスリィ ドゥ・ボン・クーフゥ」などのプロデュースを手がける有限会社apartmentの取締役兼シェフパティシエールを務める武幸子さん、小さなお菓子屋さん「やきがしやSUSUCRE(シュシュクル)」を営む下永恵美さん、3人の卒業生が母校を訪れました。後半では、第57次南極地域観測隊・調理隊員の渡貫淳子さんも来校し、南極でのエピソードを伝えます。
キャリアデザイン特別授業では、それぞれの卒業生が3つのテーブルにつき、参加学生たちが各テーブルを移動しながら、自由な質問や意見交換を行う"ワールドカフェ"形式のワークショップを行いました。この春、卒業・就職を控えた学生をはじめとする32名の学生たちは、先輩たちからどのようなエールやバトンを受け取ったのでしょう。
「なりたい自分」を目指す、ワクワクと不安
「アトリエうかい」で働く山本さんは、学校で学びながら成長することと、社会の中で成長していくことの違いを、自身の経験を交えながら学生たちに伝えてくれました。
「職場の中では、自分がやりたいことよりも、目の前にあるやらなければならないこと、任された役割にいかに応えられるかということが、常に求められると思います」
「たくさん従業員がいる職場だと、経験豊富な先輩もたくさんいるので、自分に役割がなかなか回ってこないかもしれません。私はパティシエが3人しかいない少人数の職場で働いていたので、責任もやるべきことも多かったですが、やらざるを得ない環境に身を置いたからこそ、より早く成長できたと思っています」
ゆったり働ける場所よりも、自分がちょっとしんどい場所を選ぶこと、身を置いた環境の中でいかに頑張れるかが大切だと力を込める山本さん。隣のテーブルでも、「学校と社会では、必要な努力の種類が全然違う」と、有限会社apartmentの取締役兼シェフパティシエールの武さんが学生たちへ伝えていました。
「私は辻調グループフランス校に留学もしたし、学校の中では頑張っている方だと思っていたんです。けど、学校では辛いことがあったら仲間や先生が助けてくれますが、社会に出てからは辛い時は自分の力で立て直さなければならないんですよね」
武さんは、かつて勤めていた職場を短期間で辞めてしまったという自身の挫折を、「学生の延長の甘えがあったから」だと厳しく振り返ります。
「辛くなって辞めても、自分には何も残りません。でも、辛いことがあってもその職場で長く続けていると、一緒に働く人たちとかけがえのない信頼関係が作れるんです。弱い自分はなかなか変えられないけれど、私はパティシエになりたかった。その思いがあったから、弱くても続けることができるようになったと思っています」
「いつかは独立して自分のお店を持ちたい。ですが、女性ひとりでは不安も大きいです」と話す学生の声に耳を傾けるのは、勤めていた職場を辞めて独立し、小さな焼き菓子店を立ち上げた下永さん。
「私は、実はお店を持とうなんて全く思ったことがなかったんですよ。でも、新作のレシピを作らなきゃ、スタッフの采配をしなきゃ、と組織の中でやるべきことをこなしているうちに、誰かの下ではなく、自分でイチから考えながら仕事がしたいと思うようになって。自分のお店を持とう、というタイミングが自然と訪れたんです」
社会に出てから、パティシエとしての経験を積んだ先に開けていく人生。それは、好きな職場で自分の役割を持つ充実感、それとも、信頼関係を築いたチームで働く達成感、それとも、理想のお店を構える充足感でしょうか。
選択肢は無限大。思い描いた通りに進む人生なんてなくても、その先にはきっと自分らしいパティシエ人生が続いているはず。
→vol.2「食のプロフェッショナルを目指すということ」へ続く