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食のコラム&レシピ

【とっておきのヨーロッパだより】J'adore Côte d'Azur コート・ダジュール大好き

12<海外>とっておきのヨーロッパだより

2010.09.23

<【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム?>

ブイヤベース、サラド・ニソワーズ、スープ・オ・ピストゥー、ストックフィッシュ、ピサラディエール、アンショワイヤード......好きな料理をあげてみると、ん?私、南仏料理が好き???
ということで、フランスに来て早10ヶ月。待ちに待った夏! このチャンスを逃すまいと、太陽を求めて南仏、コート・ダジュールへ。海岸線は観光拠点のニース、香水の町グラース、映画祭で有名なカンヌをはじめとするリゾート地帯。夏には無数のパラソルが並ぶニース海岸の「プロムナード・デ・ザングレ(イギリス人の散歩道)」などなど、フランス人にならって夏を満喫してきました。


ニース海岸

その中でもニースの雰囲気!
エメラルドグリーンのきれいな海、雲ひとつない青い空、日本とは違い湿気がなくカラっとした空気、パラセイリングで空を飛んでいる人がいたり、海岸沿いをジョギングしたり、散歩したり、ビーチに座って海を眺めたり、本を読んだり、海水浴を楽しんだり......おじいちゃん、おばあちゃんは仲良く手をつないで日光浴をしていたり、なんて自由!!!
これぞヴァカンスの地、ニース?!!! 初めて目にする光景に、はしゃぎまくっていた私。
ニースで目にとまった地方料理を紹介したいと思います。

 

 
ラ・メランダLA MERENDA
(4 RUE RAOUL BOSIO 06300 NICE)
旧市街にあって市場散策の帰りによく寄ったのが、地元の人にも人気でいつも満席の「ラ・メランダ」。電話予約をとっていないので、市場に行く前に立ち寄って予約していました。穏やかで優しそうなお父さんがシェフ。息子さんがサービス。奥さんはサラダを和えたり、コーヒーを入れたり、お会計をしたり、小さなお孫さんも時々お手伝い。アットホームで親しみやすくて料理もおいしいので、大好きになったお店です。

 


ストックフィッシュstockfisch
干しダラの煮込み。ストックフィッシュは素干しのタラのことで、3~4日かけて水で戻し、タマネギ、トマト、オリーブ、ニンニク、ハーブ、ジャガイモなどと共に白ワインで煮込んだ料理。全体をフォークでつぶし、なじませてから食べる。南仏名物だが、土地ごとに作り方は異なる。

 


トリップ・ア・ラ・ニソワーズtripes à la niçoise
ニース風牛胃の煮込み。家畜や家禽の内臓類もあますことなく食べるフランスでは牛胃を使う煮込みも各地各様。ニース風はトマト、ニンニク、バジルで風味をつけるのが特徴。メランダではパニス(ヒヨコ豆の粉を水、オリーブ油と混ぜて粥状に炊き、濃度をつけてシート状に固め、揚げたもの)を付け合わせにして、煮込みの上にはパルメザンチーズをたっぷりと。ん~おいしい!!!

 


フルール・ド・クルジェット・ファルシーfleurs de courgettes farcies
ズッキーニの花に詰め物をして衣をつけて揚げる料理。メランダでは詰め物をせず、フルール・ド・セル(塩の華)をつけて素材そのものの味を楽しむ料理でした(写真上)。

 
(写真左)トマトソースと食べるルー・ピストゥーのズッキーニの花
(写真右)シェーブルチーズを詰めたラ・タプナードのズッキーニの花

2軒隣のルー・ピストゥーでは同じく詰め物をせずトマトソースを、旧市街のラ・タプナードLa Tapenadeというニース料理の店ではシェーブルチーズ(山羊乳)を詰めて、トマトソースと提供していました。素材の味を楽しんで塩だけで食べるのも好きですが、個人的にはシェーブルチーズが詰めてあるのが味が濃厚で好き。衣でいうと、先の2件は天ぷらに近い感じで、ラ・タプナードのはベーニェ生地のようでほんのり甘くておいしかったです。

 


プティ・ファルシー・ニソワpetits farcis niçois
パプリカ、トマト、ズッキーニなどの野菜に挽き肉を詰めて焼く料理(手前右から時計回りで、パプリカ、ズッキーニ、トマト、玉ネギ)。大量のニンニクとタイムを効かせるのがミソ。フランス校でも学生に人気の1品♪(昼はレストラン形式の実習をしているので、三ツ星レストランで出しているような料理を作っています。夜はみんなそろって夕食を取るので晩御飯といった感じですが、勉強のため、きっちりとクラッシックなものや、地方料理を作っています)。

 

 
サラド・ド・メスクランsalade de mesclun
メスクランの語源は「混ぜる」という意味のプロヴァンス語。地元産の葉野菜の若菜を組み合わせたニース発祥のサラダのことで、現在は全国的にポピュラー。メランダではバタビア・ブリュンヌ、バタビア・ブラン、マーシュ、ロケット。写真で赤っぽく見えるのがバタビア・ブリュンヌ、白っぽいのがバタビア・ブラン。


三つ星レストラン「ルイ・キャーンズ」のメスクラン

世界的に有名なアラン・デュカスが経営するモナコの三ツ星レストラン「ルイ・キャーンズ」のメスクランは、野菜の種類が多く、イワシのマリネ、ズッキーニの花びら、からすみ、アーティチョークなども入っている。

 

 
サルディーヌ・ファルシーsardines farcies
イワシの詰め物。刻んだニンニク、タマネギ、フダン草を炒め、ハーブを混ぜ込んだパン粉と合わせたものを開いたイワシにのせてオーブンで焼いた料理。


フダン草
アカザ科。ビーツやテンサイの仲間。葉の部分はホウレン草と同様に用い、白い葉柄の部分はアクが多いのでオリーブ油、レモン汁、塩を加えた湯でゆでてグラタンやソテーなどにしたりドレッシングで食べたりする。

 


レストラン ルー・ピストゥーRESTAURANT LOU PISTOU
(4 RUE RAOUL BOSIO Tél,04 93 62 21 82)
メランダの2軒左にあるレストラン ルー・ピストゥー。マダムがサービス、旦那さんがシェフの小さなレストラン。感じのいいマダムが元気よく話しかけてきてくれるニース料理のお店。

 


ラタトゥイユratatouille
パプリカ、ナス、トマト、ズッキーニなどの味の濃い土地の野菜類にニンニク、オリーブ油を加えて野菜のエキスを引き出しながらじっくりと煮た野菜の煮込み。フランスのお惣菜として世界的に定着しているが、実はニース生まれ。凝縮された野菜の甘みと地元産のオリーブ油が絡む味は格別。

 


ドーブ・ド・ブッフ・ア・ラ・ニソワーズdaube de bœuf à la niçoise
ニース風牛肉の赤ワイン煮込み。本来はドービエールと言われる陶器の鍋で煮込む。ルー・ピストゥーではほうれん草のヌイユ(パスタ)を付け合わせ。

 

その他に見かけたニース料理

スープ・オ・ピストゥーsoupe au pistou
野菜のスープ。ズッキーニ、サヤインゲン、トマト、ジャガイモ、白インゲンなど、その時ある野菜をできるだけ使ってつくる具だくさんの野菜スープ。ポイントはバジル、ニンニク、オリーブ油、パルメザンチーズで作る「ピストゥー(ペーストの意)」を加えること。写真中央の緑がピストゥー、ふりかけてあるのはパルメザンチーズ。

 


サラド・ニソワーズsalade niçoise
ニース風サラダ。トマト、パプリカ、キュウリ、サラダ葉、黒オリーブ、ジャガイモ、サヤインゲン、アンチョビー、茹で卵、ツナなどを盛り込んだ具だくさんのサラダ。材料を和えるボールにニンニクをこすりつけて香りを移し、またドレッシングにはバジルを入れるのが正式。ニースで生まれ、フランス中で定番となった1品。

 


サルディーヌ・グリエsardines grillées
イワシのグリル焼き。シンプルにイワシをグリル板で焼いただけの料理。付け合わせは、写真左からトマトのオーブン焼き、サフランライス、スフレ。ここのスフレは、細かく切ったニンジンとズッキーニが入っていて、スペインオムレツのよう。

 

 
アンショワイヤードanchoyade
ニンニク、アンチョビー、オリーブ油で作った温かいディップソースのこと。生野菜やパンにつけて食べる。ここでは野菜で。ラディッシュ、プチトマト、キュウリ、アーティチョーク、アンディーブ、カリフラワー、マッシュルーム、ニンジン、ミニポワロー、パプリカ、紫キャベツ、フヌイユ。とてもヘルシー。

 
(写真左)アンショワイヤードをつけて食べる生野菜
(写真右)ルイ・キャーンズのアンショワイヤード

「ルイ・キャーンズ」ではアンショワイヤードがアミューズ(突き出し)で出てきました。ソースはバジル風味のマヨネーズって感じでした。

 


シェ・テレザChez Térésa
ソッカ屋が集まっているのは旧市街。町一番の人気店がシェ・テレザ。売り切れると旦那さんが少し離れたお店からバイクで焼き立てを届けて、奥さんが売るという珍しいスタイル。


焼いた鉄板ごと蓋をしてバイクで運んでくる

 


ソッカsocca
地元の人たちには馴染み深いニースきっての名物、ヒヨコ豆のお焼き。粉にしたヒヨコ豆と水、オリーブ油、塩、こしょうを合わせ、巨大な鉄板に流して焼いた、香ばしい塩味のパンケーキ。注文が入るとナイフで引っ掻くように剥がして紙にのせて渡してくれる。お好みでブラックペッパーを!

 


ピサラディエールpissaladière
ニース生まれのピザパン。オリーブ油を加えた発酵生地を丸く延ばし、甘くなるまでしっかり炒めた玉ねぎと、アンチョビー、オリーブを飾って焼く。名前の由来になっている「ピサラ」=アンチョビーぺーストを下に塗って焼くのが本式。

初めての南仏は私にとってすごくいい刺激になりました。みなさんにもぜひ訪れてほしい地です。お勧めは1週間くらいかけてゆっくり滞在すること。時間のゆとりはまた違った点から町が見られておもしろいと思います。あとはなんといっても、陽気な南仏の雰囲気にのって現地の人に喋りかけること!きっと楽しい時間を過ごせると思います。私も今度は冬の南仏がどんな感じなのか、また旅してきたいと思います。冬のおいしいものを探しに♪

 

 
(写真左)ニース海岸
(写真右)憧れのルイキャーンズのシェフと筆者


<コラムの担当者>
レクレール校のナイチンゲール
青木 彩


<バックナンバー>
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