【半歩プロの西洋料理】 鶏もも肉のコンフィ
今回は「鶏もも肉のコンフィ」という料理を紹介します。
「コンフィ」はフランスでは古くから伝えられている伝統料理のひとつで、秋に肥えた豚や鳥肉を使って作ります。
塩漬けした肉を低温(約80℃)の油脂でじっくり煮て火を通します。脂で煮ることで素材のうまみが失われず、低温で加熱するためしっとりやわらかく仕上がります。
できあがったら、煮た脂ごと器に入れ、肉が空気にふれないように脂に漬かった状態にすると、涼しいところで長期に渡って保存することができます。冷凍技術のない時代に肉を保存する手段として始められたもののようです。豚、鴨、ガチョウなどの脂に漬けるのが一般的です。脂に独特な風味があるので、保存している間に肉に旨味が移り、美味しさが一層増しますよ。
3カ月以上漬けておいた方が美味しいと、フランスの知人が言っているのを聞いたことがあります。噂では、5カ月おいた方がいいという人もいるみたいですね…。ちょっと大丈夫なのかと思う一方で、チャンスがあれば、ぜひ食べてみたいとも思います。ご家庭で作る場合は、完全に冷やしてから、冷蔵庫で保存します。また、最低1日おくと、味がなじんでおいしくなります。
現在のフランスでは肉類のコンフィはどのように食べられているのでしょうか。一部の地域では秋や冬に手作りをするそうですが、スーパーで購入して食べるのが一般的になりつつあります。缶詰で売られていることが多いようです。また、地方のビストロなどでも出てきます。脂から取り出し、こんがりと焼き色をつけて食べるのが定番です。豆といっしょに煮込んだりもします。
フランス語の「コンフィ」をあえて日本語にするとすれば、「漬け込んだもの」といったところでしょうか。
名詞として用いる場合は、豚、鶏類を煮て、脂に漬け込んで熟成させた料理を指します。例えば、confit de canard(コンフィ・ド・カナール)といえば、鴨を脂に漬け込んでじっくりと火を通した料理、「鴨のコンフィ」のことをいいます。
果物の砂糖漬けやアルコール漬けのことを言う場合もあります。orange confite(オラーンジュ・コンフィット)といえば「オレンジピール」、cerises confites(スリーズ・コンフィット)といえば「さくらんぼのアルコール漬け」のことを指します。
また、野菜を煮くずれするまで煮る調理法を表す場合もあります(例:トマトのコンフィ tomate confite(トマット・コンフィット)など)。
鵞鳥や鴨のコンフィは、バスク地方など、フランス南西部の名物とされています。
僕は辻調グループのフランス校に在籍していたころ、フランス南西部のピレネー地方を訪れたことがあります。ピレネー地方は、静かで綺麗な景色が多く、時間がゆったり過ぎる所です。フランスというと、華やかな国だというイメージがあるかもしれませんが、こういった地域も多いのです。自転車競技で有名なツール・ド・フランスのコースとなっているため、競技の間は、お祭りのように各地からの観戦者でにぎわいます(僕も観戦しようと試みたのですが、電車のストに巻き込まれ、現地にたどりつけなかったという悲しい思い出が…)。
ちなみにツール・ド・フランスは、フランス全土を一周するようなコースになっているので、コースに沿ってフランスの各地を見てまわるのも楽しいと思います。
今回ご紹介するレシピでは、ご家庭でも作れるように、鵞鳥や鴨の代わりに鶏肉を、油はサラダ油を使っています。ぜひお試しください。
<コラム担当者>
大西泰典
<このコラムのレシピ>
鶏もも肉のコンフィ サラダ仕立て
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