【好吃(ハオチー)!中国料理!】中国人は油がお好き?
中国料理といえば、かつてはラーメン、チャーハン、餃子、一昔前は麻婆豆腐にエビチリ、青椒肉絲、近年ではよだれ鶏やユーリンチーと、「日本人に合わせた中華料理」から「現地の再現」まで、幅広く普及し、日々深化を続けています。
(左)餃子 (中)麻婆豆腐 (右)よだれ鶏
1970年代までの大皿で豪快にこってりおいしいといった料理から、バブル期には希少価値・斬新さへ。
21世紀に入るとシェフの哲学や料理の成り立ち、生産者の思いや社会問題までもがビジネスの一部として考えられようになり、中国料理の更なる広がりを期待せずにはいられません。
そこで私もこの機会に中国料理の歴史について考えてみました。
一部仮説がありますが、温かい目で見ていただけますと幸いです。
中国料理といえば上記にもあります「豪快にこってり」という印象があるかと思います。
確かに、水の料理と呼ばれる日本料理に対して、中国料理は火の料理と呼ばれ、大量の油を媒介するからこそ生まれる美味しさがあります。
では中国人は油が大好きなのでしょうか。
このような発展を遂げた経緯はいったい何処にあったのでしょうか。
鉄が武具ではなく、日常の道具として使われる以前は、土鍋のような器具では高温には耐えられず、炒め物や揚げ物には向かないため、煮たり、焼いたりといった調理が主に行われていたといわれていますが、金属の普及とともに料理も発展し、次第に大きな違いが生まれてきます。
推測になりますが、書籍などを紐解く内に、その要因が水質にあったのではと考えました。
近年、工業排水や上下水道の整備不足による水質汚染が取り沙汰されていますが、そのような問題だけではありません。
ひとつは大陸の大きさによる河川の長さが挙げられます。
小さな島国が連なる日本は、雨が多く、川の流れが速い傾向にあり、且つ川の水の滞留時間が短いため、カルシウムやマグネシウム等のミネラルの含有量が少ない「軟水」となり、逆に中国は広大な土地により、川が長く、水が地層に接する時間が長いため「硬水」となります。
※地域によっては軟水の地域もあり
軟水は材料の持つ味が液体に溶け出やすく、口当たりが軽いため茹でたり、さっと炊いたりといった料理に向くといわれており、硬水は苦みのような風味がありますが、
ミネラルの作用によりタンパク質が固まり、煮崩れにくくなったり、アクを出やすくしたりする特徴があります。
その特徴を表した例としましては、ふっくらと炊き上げる日本の米に対して、硬水を扱う国は中国の炒飯やフランスのリゾットなど、米の品種も違うものの米がしっかりとした仕上がりとなります。
他にも短時間の加熱により煮汁に風味を移す日本の「だし」の発想と、アクを除き、肉類からじっくりと味を移す中国の「鶏がらスープ」やフランスの「フォン」の発想は
水の硬度による風味の移り易さやアクの出方による違いが大きくあると考えられます。
前振りが長くなりましたが、こういった水を扱う中で、硬水が多く流通する国は、大豆、ピーナッツ、ラード、バター等の油の台頭により、水質上向かない、水煮や湯通しといった調理が日本に比べて淘汰され、炒める、揚げるといった調理法やスープストックが普及し、油を使う技術が発展したのではないでしょうか。
中国にとっての油の重要性は古くからエネルギー源として考えられており、「加える油:加油」と書いて「頑張れ!」等の歓呼や喝采の意味があったり、油の一文字でも精力や活力の意味があったりと言葉にも色濃く映し出されています。
結論としまして、印象として持たれてしまう「中国=油」は、水を使えない環境が生んだ努力の結晶ではないか私は考えます。
今回のレシピは油に対する中国の方々の熱い思いを描きながら、上海の古の料理「ウナギの醤油煮込み」を作成致しました。
ねぎ油により一味違う風味やコクを感じて頂けるかと思います。
長々と妄想のような話が続きましたが、インターネットによる情報の流通速度の加速によって作り手は勿論、食べての知識も飛躍的に進歩しており、現地に行かずともメニューや写真、作り方を見ることができる時代となりました。
少数民族に伝わる料理、孔子や楊貴妃、西大后、乾隆帝が食べたといわれている料理、秘境と呼ばれるような地域で食べられている料理など、中国には日本には伝わっていない料理がまだまだ存在します。
古くから存在する料理ですが、日本では新しい。
そんな料理を学校としてフィールドワークや翻訳、検証を行いながら、今後とも発信していけるよう精進したいと思います。
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