【日本料理一年生】 30時間目 鯵の干物(朝食メニュー3)
朝食メニュー第3弾は、海辺の旅館などで提供される朝食の定番「鯵の干物」です。「えっ!干物なんて買ってくるものじゃないの。」と思われる方も多いでしょう。でも、釣り好きのお父さんが、たまに鯵をクーラーボックスいっぱい釣り上げて、「こんなたくさんの鯵、全部は食べきれないよ。」といったとき、一度チャレンジしてみてはいかがですか。
大昔、魚が大量に獲れたときの保存方法として、内臓を取り除き、塩で余分な水分を取り、干すことでさらに水分を除いて保存性を高めたのでしょう。貝塚の跡からも干物らしきものが発見されているそうです。
詳しく説明すると、魚の腐敗が始まるのは、まず内臓ですから、これを取り除きます。さらに、塩をあてて浸透圧の働きで水分を取り除いた後、干して残りの水分を飛ばして乾燥させます。水分を飛ばすことで、旨味が凝縮されて保存性が高まり、保存することで熟成されておいしくなります。
干物には、塩をあててそのまま干す「丸干し」というものもありますが、たいていの魚は、そのままでは身が厚くて水分が十分に抜けないので、開いて干すことが多いようです。これを「開き干し」、縮めて「開き」と呼ぶことが多くなり、「開き」が干物の代名詞のように使われています。
干物を焼く場合、焼き網をあらかじめしっかり焼いておかないと、魚の身がくっついてしまいます。また、焼き上がりに酒・1:濃口醤油醤・1を合わせたものを表面に塗り、サッとあぶると香ばしさが倍増します。
魚を開くには、背側から包丁を入れて開く「背開き(せびらき)」と、腹側から包丁を入れて開く「腹開き(はらびらき)」があります。フライや天麩羅などの料理に用いるのは開いた身の両端が盛り上がる「背開き」にすることが多いですが、干物は「腹開き」にすることが多いようです。でも、決まりはないので、やりやすい方法で開いてください。
また、頭を割るかどうか少し考えてしまうかもしれません。みやげ物は、早く乾燥させないといけないので割っていますが、特に割らなくてもよいでしょう。
焼き上がった「鯵の開き」の身をほぐし、この時季であれば「菊菜のお浸し」などに混ぜるというのもおいしいでしょう。
<このコラムの担当者>
タイ語の話せる日本料理のおとうちゃん
辻調の御言持(みことも)ち
<このコラムのレシピ>