【日本料理一年生】 43時間目 筑前煮
<【日本料理一年生】ってどんなコラム?>
●筑前煮●
今回の日本料理一年生は、基本的な日本料理です。本校でも、入学して最初に実習する煮物「筑前煮」をとり上げましょう。
「筑前煮」は、「いり鶏」とか、九州あたりでは「がめ煮」などと呼ばれており、本校の授業では、「鶏肉と野菜の炒め煮」という献立名にしています。
「筑前煮」の筑前とは、福岡県と一部の佐賀県の旧国名で、「筑前煮」とは筑前地方の代表的な郷土料理な煮物という意味です。「いり鶏」というのは、鶏肉や野菜をまず油で炒りつけてから、だし汁と調味料を加えて煮るのでついた名称です。
ところで、「がめ煮」の由来には、いくつか説があります。たとえば、
●「寄せ集める」の意味の博多弁、「がめくり込む」という言葉から、鶏肉や根菜類を中心とした野菜を寄せ集めて煮るという意味で「がめ煮」と名づけられたという説。
●秀吉が朝鮮出兵を試みた文禄(ぶんろく)の役(えき)の時、北九州に出兵前の兵士が集結しました。当時は「とぶがめ」と呼ばれて精がつくとされていたスッポンと、野菜を煮て、兵士に振る舞ったのが始まりで、「亀煮(かめに)」が変化して「がめ煮」になったという説。
●もとは禅宗の料理であったという説。
などです。いずれにしても、本来のがめ煮は、油で炒めることはしないようです。そして、以前は、鮪の切り身のような魚肉を使っていたのが、明治時代ごろに鶏肉だけを使うようになったともいわれます。
ただ、がめ煮では、骨つきの鶏肉を使うと決まっているようですが、その理由は、はっきり分かっていません。スッポンを使っていたのが、鶏肉に代わったからだという説もあるようですが、はっきしりません。
●骨つきの鶏肉で作った筑前煮です●
がめ煮は、筑前地方ではお正月やお祭り、結婚式などのお祝いの席にも欠かせない料理で、「鶏の水炊き」と並んで北九州地方の代表的な郷土料理です。ちなみに、福岡県の鶏肉と牛蒡の消費量は全国でもトップクラスだそうです。
「筑前煮」は仕上がりに煮汁を絡め、材料の表面に艶を出すため、味も濃いので保存食としても多用されます。お正月の煮染めや、お弁当のおかずとしても重宝されています。
調理のポイントは、材料の大きさをそろえて切ること、野菜は根菜が中心なので、あらかじめ炒めておき、だし汁を加えて根菜に火が通るまでよく煮てから調味することです。 以前にお話した「20時間目 煮物のさしすせそ」を、もう一度確認して、調味料を順序よく加えながら作りましょう。
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