【日本料理一年生】 41時間目 稲荷寿司
●稲荷寿司●
今年度の「日本料理一年生」は、「ご飯もの」についてお話しています。今回は、「稲荷寿司」です。稲荷寿司は、みなさんご承知のとおり、甘辛く煮た油揚げの中に寿司飯を詰め込んだもので、老若男女から好まれています。
「稲荷」といえば「稲荷神社」ですが、祀られているのは食物をつかさどる「宇迦御魂(うかのみたま)」という神様です。この神様は「御饌神(みけつかみ)」とも呼ばれます。「みけつかみ」というのを「三狐神」とも書いたので、狐との関わりが深いといわれますが、狐と稲荷神社との関係については、ほかにも説があるようです。
稲荷神社の総本社といわれるのが、全国的にも有名な京都の伏見にある「伏見稲荷大社」です。ここは「日本三大稲荷」の筆頭でもあります。ただ、三大稲荷のほかのふたつは、愛知県の豊川稲荷(正式名称「宗教法人 豐川閣 妙嚴寺」)、佐賀県鹿島の祐徳稲荷神社、茨城県笠間の笠間稲荷神社、岡山県の最上(さいじょう)稲荷、さらには、私の地元の奈良県大和郡山の源九郎(げんくろう)稲荷神社など、いくつか候補があり、はっきりとしたことはいえないようです。ちなみに、源九郎稲荷には、浄瑠璃の「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)」に関わりの深い話が出てくるので、興味のある人は調べてみてください。
●三角形の稲荷寿司です●
ちょっと話がそれたので元に戻します。ではなぜ「稲荷」=「油揚げ」なのでしょう。狐は油揚げが好物とされるところから、稲荷神社には油揚げを供える風習が起こったようです。19世紀の初めごろに稲荷神社にお供えしてあった油揚げにご飯を詰め、お寿司にしたものが考え出されたようですが、起源には諸説あります。江戸や名古屋と並んで豊川稲荷の門前町も発祥の地の一つとされるようです。
●俵形の稲荷寿司です●
また、稲荷寿司には、三角形のものと長方形のものがありますが、西日本では三角形、東日本では長方形が多いようです。三角形は、狐の頭部や耳を表しているといわれます。長方形は、米俵を表わしていて、穀物を食い荒らす鼠を退治する狐は、稲の守り神とされていたようです。
ちなみに、稲荷寿司と巻き寿司を盛り合せたものを「助六(すけろく)」や「助六寿司」といいますが、歌舞伎の演目「助六縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」に登場する遊女の揚巻(あげまき)の名前から洒落て「揚げ」と「巻き」の盛り合わせを「助六」と呼ぶようになったようです。
●これが「助六寿司」です●
「和のおいしいことば玉手箱」の「鳶に油揚げをさらわれる」でも、油揚げにまつわる話をしています。よろしかったらご覧ください。
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