【百人一首と和菓子】秋衣
お菓子について
吉野といえば、和菓子の世界では葛粉をすぐに思い浮かべます。
そこで、葛を使った葛焼き生地を、こなし生地で巻いたお菓子にしました。
こなし生地のぼかし方は、夜寝る前に、ふと思いつきました。
同時に、今回は物悲しい雰囲気の歌ですが、
笑顔を届けるお菓子は、やはり、明るい雰囲気の仕上がりにしたいと思い立ち、
黄色や赤色を使って、紅葉の雰囲気を演出することにしました。
最後にふりかけた氷餅で、ひんやりとした秋風を表現しています。
豆辞典
94 参議雅経(さんぎまさつね)
鎌倉時代初期の歌人で、嘉応2(西暦1170)年~承久3(1221)年を生きた人です。「参議」は役職名で、本名は、藤原雅経ですが、飛鳥井(あすかい)雅経とも名乗り、蹴鞠(けまり)の飛鳥井流をはじめた人です。
源頼朝に仕えて鎌倉にいた雅経は、京都の後鳥羽天皇から蹴鞠の会に呼ばれ、のちに、天皇の蹴鞠の先生となります。今の時代に生きていたら、サッカーの名選手になったでしょう。
さて、歌の方ですが、
吉野の山の秋風は、夜が更けると吹きおりてくる。昔の都である吉野の里は寒々としていて、衣を打つ砧(きぬた)の音が響くことだ。
というくらいの意味です。
衣を打つというのは、柔らかくしたり艶を出したりするために、砧という道具で布や衣服を叩く作業のことです。秋や冬の女性の夜なべ仕事でした。
この歌は、古今和歌集にある坂上是則(さかのうえのこれのり)の歌を本歌取り(ほんかどり=以前に作られた歌の語句や趣向などを取り入れながら新しく歌を作ること)しています。坂上是則は以前ご紹介した31番の歌の作者で、雅経同様、蹴鞠の名手でした。活躍した時代は、おおよそ300年ほども違うのですが、同じ蹴鞠を得意とする者として、雅経は何か通じるものを感じたのでしょうか。
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