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『シリーズ 釣って、食べて、生きた! ~作家 開高健の世界~』ロケ日記 ②

テレビ

2011.10.12

■7月25日(月)■ 曇り
07:00に起床。08:30ホテル出発、一路アンカレッジ空港へ。
10:00 「オーパー」取材のコーディネーター、トム・ルーターさんと30年ぶりの再会。
トムさんは関西なまりの日本語を流暢に話す大の親日家。今は海運関係の管理の仕事をして
いると言う。30年ぶりの出会いに話はつきなかった。

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背景を選んで「再開」シーンの撮影の後、11:45発セントジョージ島への飛行機への
搭乗手続きに入るが、掲示板に「出発時間13:45に変更」の文字が。もちろん説明は
一切なし。13:45になっても飛行機は飛ばず、その後は1時間ごと遅れ、最終的に離陸したの
は21:30。この地の天候不順は想像以上でこれぐらいの遅れは頻繁らしい。
約2時間強でディリンガム空港で給油をし、午前1時頃に再離陸、午前3時頃、セントポール島
到着。セントジョージ島にはここからさらに約30分弱の飛行が必要。


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「もう一息」と思いきやセントジョージ島は霧が深く飛行中止となり、機体はアンカレッジ
に戻ってしまう。われわれはそのままセントポール島に残留。次の定期便は2日後、これでは
スケジュールがすべて狂ってしまうということで、スタッフ協議のうえ、不確定な飛行機での
移動はあきらめ、翌日の昼ごろに燃料、食料などの購入のためにこの島に立ち寄る予定のセント
ジョージ島からのオヒョウ釣り漁船を数隻貸し切って移動するほうが確実であるということに
なり、とにかく空港内の宿舎で3~4時間ほどの仮眠。

■7月26日(火)■ 曇り時々小雨
朝10時前後に荷物を一箇所にまとめて、雨に濡れないようにしっかりと保護し、港の桟橋に移動。
チャーターした3隻の漁船はすべて想像以上に小さく、荒れるベーリング海へ出て行くにはどうも
心もとない。しかし、セントジョージ島へ行くには他に方法なし。


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13:00いよいよ出航。トムと私とカメラマンが同じ船に乗り、船中の様子を撮影することに。内海から
外海に出た途端に雨風が強くなり、まるでジェットコースター状態、しかも安全バーはないわけでどこ
かにしがみついていないと身体ごと飛ばされそうになる。そんな我々の状態を時々海上に頭を出す
アザラシやカモメが面白そうな様子で眺めている。

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 港を出て約1時間ほどで、陸地が完全に視界から姿を消す。そして、また悪運が私たちを
見舞う。モーターがオーバーヒート、そして、ストップ。一時漂流状態となるが、なんとか片側の
モーターのみ復活し、スピードは落ちたものの何とか走り出すものの、しばらくすると、
またまたエンジン停止⇒再始動⇒停止。こんなことを何度か繰り返すうちようやく双方の
モーターが再始動し、船のスピードはアップする(アップし過ぎ)が、ますます揺れは
ひどくなる。不運は続くもので、自前のデジカメで船内シーンを撮影しようとした瞬間、
とりわけ大きな揺れが襲い、カメラは手から離れ、きれいな放物線を描いてベーリング海に消えて
しまった。4日分の貴重な映像も全てパー。しかも今後の記録をどうするか?
一瞬、頭が真っ白になるがどうすることもできない。

 IMG_3708.jpgのサムネール画像

 16:00過ぎセントジョージ島無事到着。とりあえずはホッとする。
休憩する間もなく用意されたトラック(相当の年季もの。ドアは閉まりにくく、座席は補修の
ガムテープだらけ)に乗り込む。運転はトムさんが、私は助手席に乗る。スタッフは荷台と
後部座席に分乗。
 島の風景は30年前とほぼ変らない。ただ、定期便が就航したため新飛行場が(以前は定期便がなく
チャーター機のため)造られていたこと、漁船の規模が大きくなったのに合わせて漁港が新設されて
いたことなどが大きな変化かも知れない。
 しばらく地道を走り、30年前の宿舎に到着。当時は要人用の宿舎であったが現在はこの島唯一の
ホテルとして営業している。
 部屋の振り分け後、食材や調理器具のキッチン内への搬入と整理の風景を撮影することになり、
併せてインタビューも受ける。
 スタッフたちが島内ロケハンに出かけている間に夕食の準備をする。とりあえず余り新鮮でない
野菜、骨付き鶏肉、豆腐で水炊きをすることに。準備が一段落ついたときに私たちをこの島まで連れて
きてくれた漁船の漁師の方がカジカ(地元ではあまり食さない)を手にしてやってき来たので大小取り
混ぜて7匹程度いただくことにする。
 早速、煮付けやから揚げに調理。カジカのアラは霜降りして、身のついたアラは冷蔵保存し、
魚の骨と鶏の骨で出汁をとり、ストックしておく。
 日本を出てから実質5日ぶりになるこの日本料理の夕食には一同心より感動!
 明日の朝食の仕込みをして、セントジョージでの初日は終了。

 それにしても疲れた。

■谷口博之 辻調理師専門学校日本料理専任教授■
1982年、オールマイティの技量が見込まれて、作家の故・開高健氏の一連の
フィッシング紀行シリーズ「オーパ」隊に、料理人として参加。
著書:『オーパ!旅の特別料理』(集英社・集英社文庫)『関西風おかず』(新潮文庫)など。
また、NHK「きょうの料理」をはじめ数々の料理番組にも出演。