毎日新聞連載 -美食地質学入門- 第26講「水ナス」
7月7日(火)の毎日新聞(夕刊)に「美食地質学入門」が掲載されました。
テーマ食材は「水ナス」。
地域によっても特徴のある品種が栽培されており、京都の「賀茂茄子」のように伝統野菜として受け継がれているものも少なくありません。
数あるナスの中で今回取り上げたのは、「水ナス」。
大阪の泉州地方で古くから栽培されており、今は「泉州水ナス」のブランド名で販売されています。
形は卵形で、その名の通り水分が多く、アクが少なく、皮が柔らかいのが特徴。(強く握って水がしたたり落ちる様子が紹介されたりします)
それだけ水分が多いということは、当然ながら栽培時に大量の水が必要です。
そのためという訳ではないようですが、幸いにしてこの地域には周辺に水を供給できる多くのため池が存在します。
水ナスといえば浅漬け(漬物)のイメージが強いのですが、アクの少なさから生でも食べられるというのも売りです。
この連載ではアクの話題がよく出てきますが、ナスのアクはクロロゲン酸といい、ポリフェノールの1種が酸化したものです。
また、現在栽培されている品種名に絹皮という名が付くくらいで(泉州絹皮水茄子)、非常に皮が薄く柔らかいのも特徴です。
これも生食できる理由ですが、逆に自身の葉やトゲでも傷ついてしまうので、栽培時には細心の注意を払って世話をするそうです。
他の農産物にも言えることですが、傷ついたり形が悪くなってしまうと、悲しいことに出荷規格のランクが下がってしまいます(A級品⇒B⇒C・・・と)。
現地では規格にこだわらなければめちゃくちゃ安く手に入るので、お近くに行った際は是非購入してみてください。(無人販売所もあります)
対談に際し、水ナスについての研究も含め精力的に栽培に取り組んでいる北野農園の北野さんにお話しをお伺いしました。
ルーツについてなど色々な興味深い話を聞かせていただいたのですが、その中でも興味深かったのが、「育てる場所でナスの形が変わる」、というものでした。
山手の方で育てると日照時間が短いため中長タイプになり、反対に海側で育てると巾着タイプになるそうです。
さて「水ナス」という名が付いているからには、きっと「水」がキーになりそうですが、
水ナスの栽培と地質の関係についての巽先生のお話は、新聞紙上及び毎日新聞ホームページをご確認ください。
今回の料理は、大引先生自らが担当です。
北野さんの水ナスの品質がすばらしくよかったというのが、感想でした。
▲(左から)水茄子クレープ(ささみ、味噌、白葱)、浅漬け茄子と茎わさびの和え物、蒸し茄子胡麻かけ 蒸し鴨を添えて
▲水茄子旨煮(桜えび、生姜)
▲水茄子博多揚げ(桜えびすりみ)
合わせるお酒は、山野酒造株式会社の「純米吟醸 超辛生原酒 かたの桜」。
低温発酵の吟醸仕込純米生原酒です。
次回8月のテーマは「剣先イカ」。
どうぞお楽しみに。