No.14 豚肉

 食べ物の世界もブランド化が進み、それに伴っていろんな商品が発売されています。内容はわかりませんが、「きみに愛」なんて言う卵が売られていたりします。ネーミングで販売量が変わってくるのでしょう。しかしながら固有名詞が氾濫して、買い手としては迷ってしまいます。これからの消費者は勉強することがいっぱいで大変です。やはり自己責任の時代でしょうか。

 畜産関係・肉も例外ではありません。今回はに焦点を当ててみたいと思います。

 お店に行くと、様々な名前で豚肉が並べられています。少し前までは単に豚肉としか表示されていなかったものが、×××豚、○○○豚と表示され、売られています。1軒のお店に並んでいる種類は少ないかもしれませんが、別のお店に行けばまた違った名前のものに出会います。

 さて、これらはそれぞれどこが違うのでしょうか?キーワードは「味」?「ヘルシー」?

 我々が目にする豚肉には、どのような種類があるのでしょうか。この辺を知っておくと購入の手助けになると思いますので、簡単に説明したいと思います。本当は色々な要素が絡んでいるので、あまり単純化はできないのですが、いくつかの点をピックアップしてみます。

 一般に食べられている豚肉は、三元交配と言って3種類の豚を掛け合わせて生産します。いわゆる雑種ですね。たくさんの種類の中から、特に生産効率や高く売れる部分*が多く取れることなどを考えて掛け合わせをし、販売されているのが通常の今まで主流だった豚です。だいたい生後6ヶ月で肉になります。すごく若い豚なんですね。

 (*豚肉の部位の中で高く売れる部分と言えば、ロース、フィレそれからモモとなります。)

 一方、よりおいしい豚肉をとの願いで作られているものもあります。鹿児島の黒豚というのは非常に有名ですね。この豚はバークシャーという品種で、味の良いことで知られています。ところが、前述の一般の豚よりも育つのが遅く(生後約8ヶ月で肉にします)、かつ飼育に何かと手間のかかる豚なのです。こうなると価格が多少高くなるのも納得できる話ではあります。

 こんな風によりおいしい豚肉を、という目的で生産されているものが、鹿児島以外にもあります。私ども(辻調グループ校)の教授陣が出演しているどっちの料理ショーでも様々な豚肉が紹介されました。まぼろしの島豚の血をひく沖縄のアグー、中国ハムの原料として有名な金華豚など、肉質に優れると言われる豚たちです。ということで、大ざっぱに分類すると、「今でも主流の雑種」「優れた肉質を持つある特定の品種を育てたもの」に分かれます。

 さらには、バークシャーなどの優秀な品種と他の豚との雑種もあります。たとえば、最近話題の東京のブランド豚「TOKYO X(トウキョウ エックス)」は、3種類の豚の掛け合わせなのですが、使っている元の豚がそれぞれ「バークシャー」「北京黒豚」「デュロック」と、通常の雑種とはまったく違った試み(掛け合わせ)なのです。結果、豚肉の常識を破る「霜降り豚肉」が出来上がりました。

 というような具合で、様々なブランド名が付けられ売られている中からの豚肉選びには「バークシャー」という品種名をキーワードにしてみるのも一つの手かもしれません。ただし、イギリスのバークシャーです。

 品種とは違ったアプローチですが、SPF豚という名前を目にすることがあると思います。これは、Specific Pathogen Freeの頭文字を取ったものですが、特定の病原体がいないものという意味になります。細かな技術的なことはともかく、母豚の産道を通る時に病原体に感染することを防ぐため、帝王切開で子豚を取り出すという方法を用いています。

 特定の病原体がいないと聞くと、無菌で生で食べられるように勘違いしてしまう人がいるかもしれません。実は、子豚の成長に関わる病原体がいないという意味なので、お間違え無きように。




辻調グループ 最新情報はこちらから