フランスで料理修業 辻調グループ フランス校の30年
"フランス料理の理想の学びの場をフランスにつくる"。
日本のフランス料理が隆盛に向かおうとしていた1980年、辻調グループ校創立者・辻静雄の熱い思いが、フランス校開校を実現させた。以後、30有余年。リヨン近郊のシャトー・ド・レクレール、シャトー・エスコフィエの2校で調理、製菓を学んだ学生は5700人近くにのぼる。
本書は、その開校以来の足跡、教育システムとそれを支える実践的教授法、シャトーでの生活とレストラン、製菓店での研修生活を、学生、教員、研修先のシェフ、卒業生ら多数への取材から丹念に描き出したものである。
学生からプロへの道の狭間に立ち、戸惑い、つまづきながらも、先生や仲間に助けられて確実に成長する若者たち。「芽吹いたばかりの若芽が陽射しを浴びて、ぐんぐんと伸びていく様を見ているようで、どこか眩しかった」と著者は語っている。
国の壁を越えて、同じ道を歩む後進を喜んで迎え入れ、育てるフランス人シェフの姿も印象的だ。技術をひとつの文化として伝えるフランスの伝統と、ひたむきに教え、学ぼうとする日本人の情熱が生み出した、稀有な教育機関の姿がそこに浮かびあがる。