ブリヤ=サヴァラン「美味礼讃」を読む
美食学の古典として名高いブリヤ=サヴァランの『美味礼讃』をテーマに、岩波市民セミナーで辻静雄が行った講義をもとにまとめたもの。
1989年刊の旧版は入手できなくなって久しく、惜しむ声が多かったのですが、このたび復刊されました。
18世紀末のフランス革命期を生き抜き、フランスのガストロノミー、すなわち美食文化の基礎を築いたとされるブリヤ=サヴァランの主著を、内容構成、著者の人物像と社会背景、味覚表現などの視点から、多角的に読み解いています。
全5講より構成されますが、アナール派など仏英の現代歴史学の新たな成果を用い、19世紀のフランス人の食の実態と突き合わせることで、『美味礼讃』の世界を実体として捉えようとした第2講は、とりわけ読みごたえがあります。
食・料理文献の数々の引用を通して、辻自身のフランス料理史・食文化史研究の軌跡の一端もうかがえます。また、巻末の充実した参考文献は資料的価値に富みます。
[研究所担当]
八木尚子(辻静雄料理教育研究所)