【ビバ!!ベバレッジ】紅茶とコーヒーから見た鴛鴦茶
中国の香港で親しまれている飲みものに、コーヒーと紅茶をミックスした鴛鴦茶(インヨンチャー〔広東語読み〕/えんおうちゃ〔日本語読み〕)と言うものがある。
その存在は以前より人から聞いていたが、飲んだ事はなかった。しかし、そのイメージは必ずしも良くなく、コーヒーと紅茶はそれぞれに確立された飲みものであるため、それらをわざわざ混ぜる事に違和感を感じていた。ところが、中国の香港で飲んだ経験のある人々に味の印象を聞いて実際に作ってみたところ、香りや味に意外性があり、私には美味しく感じられた。この意外性とは、当初、コーヒーと紅茶が特性を互いに消し合ってしまうのではないかと予測していたのだが、コーヒーと紅茶の苦味や香り、味がミルクティーとしてうまく溶け合った事だった。
そこで今回のコラムでは、どのようにコーヒーと紅茶の香りや味の特性を生かして鴛鴦茶を作るかと言う点を検証して紹介する。
コーヒーや紅茶を選ぶ際には、コーヒーの特性が苦味や甘味にあり、紅茶の特性が渋味や香りにある事を念頭においた。
まず、紅茶は渋味が特徴のウバ、香りに特徴のあるアールグレイ、中国特産の祁門紅茶を準備し、抽出法はポット式とした。
次に、コーヒーは香りと味に透明感があるアラビカ種から苦味と味に深みがあるタンザニアと酸味のあるブラジルを、後味の余韻が強いカネフォラ種からベトナムを準備し、抽出法はペーパードリップ式とした。
抽出後の混合の割合はコーヒーと紅茶を1:1とし、そこにコンデンスミルク(牛乳に糖類を加えて煮詰めたもの)を適量加えた。
これを元に様々な組み合わせで味を検証をし、数値化してみた。
この検証によると、コーヒーと紅茶両方の特性を生かしたバランスの良い鴛鴦茶はアールグレイとタンザニアを組み合わせたものであった。
もう一つの印象的な組み合わせは祁門紅茶とブラジルだった。祁門のスモーキーだが繊細な香りにブラジルの酸味が合わさり、それが爽快感に繋がるように感じた。冷たく提供する時は本来の鴛鴦茶とは違うイメージのドリンクとなるが、商品には出来ると思った。
中国ではインスタントコーヒーを使用して作る事が多いようだが、それは今回使用したベトナムと同じく、カフェインが比較的多いカネフォラ種を使って作られるものだから、出来上がる鴛鴦茶はアフターテイスト(後味)が強いものになるのだろう。しかし、味や香りの透明感に欠ける点があるのではないだろうか。
提供時に使用する器としては、温かく提供する時はガラス製のグラスか磁器製のカップを使い、冷たく提供する時はガラス製のグラスを使って、キューブアイスかクラッシュアイスを入れ、ストローを添えるスタイルが一般的のようだ。
いつの日か香港の町並みを見ながら、中国で昔から生産されているプーアール茶と中国で培煎されたコーヒーを使った鴛鴦茶を味わう事を想像すると、最高の気持ちになれるような気がする。
ドリンクを提案する時、そのドリンクを構成する要素を理解した上で、どのようなアレンジやブレンドが最上なのかを考案する事は難しくもあり、とても楽しいことでもある。