【半歩プロの西洋料理】駆け出し料理人対談「チキン(きちん)と作れましたか?」
前田:いや~川中先生、まだ春の便りが聞こえてこないですね。
川中:そうですね、前田先生。
前田:今回先生が紹介された「鶏もも肉のきのこソース マスタード風味」ですが、
どういった経緯で考案されたんですか?
川中:はい、僕は鶏の料理が好きなのでベーシックな料理を作ってみようと思い、「若鶏の白い煮込み」を作るつもりだったのですが、すでに登場していたんですね。
鶏肉とクリーム系の何かを使って一品作りたいのに、名案が出てこない。これでは企画に穴があいてしまうと悩んでいたら、天の声が聞こえたんです。
『生クリームではなくもっとサワーヤカなものを使いなさい』ってね。
前田:「サワーヤカなもの」・・・なるほど、それでサワークリームが使われたんですね。
本当ですか~?
川中: ・・・すいません・・・冗談です。
近所のスーパーに買い物に出かけたときに、乳製品売り場にサワークリームが置いてあったんです。これはいけるかなと思い、早速購入。自宅で試作をしてみたのですが、なかなか思うような味にならなくて困っていました。サワークリームの酸味がちょっとだけでしゃばった感じがしていたんです。するとまた、『この料理をマスターするにはドウする?』って天からの声が。
前田:マスターにドウ?・・・マスタードですね。出来すぎじゃないですか?
川中:ちょっとオーバーですかね。実は家の冷蔵庫に「練りマスタード」があったんです。物は試しにと思い、少し混ぜてみたら、自分の考えていた味に近づいてきたんです。でも、サワークリームの酸味とマスタードの酸味がけんかしているようで・・・。それををどうしたらいいのかわからなくて、砂糖を加えたり塩を加えたりして試行錯誤していました。
数日経って、インターネットで食材を探していたら、粉末マスタードという文字が目に飛び込んできたんです。これはいけるのではと思い、今回イギリスの「コルマン」という粉末マスタードを使うことにしたんです。
前田:なるほど~。
ところで、今回はだし汁などほとんど使われていませんが、どうしてですか?
川中:はい、自宅で試作した時、だし汁を使うかどうか迷ったんです。仮にだし汁を使うとなったら鍋が必要になりますよね。幸い僕はこういった仕事をしていますから、家にはある程度の器具はそろっていますが、そうでないご家庭もあるんじゃないかと思い、だし汁を使わない方法ってないのかも考えてみたんです。
前田:ほうほう、それで?
川中:野菜やきのこってそれ自身にたくさんの水分があるじゃないですか。それをどうにかすれば、自身の持っている水分を引き出すことが出来るのではと思い、「蒸し煮」と言う操作を当てはめてみたんです。
おかげさまでビンゴ~!って感じですかね。
前田:では鶏肉はどうしてあのような調理法を取られたのですか?
川中:だし汁を出来るだけ使わずに調理できればという考えがありましたので、野菜やきのこの水分を利用して鶏肉に火を通してみようと考え、「蒸し焼き」という操作をしてみました。
前田:すべてがうまくかみ合ったってことですね。
川中:おかげさまで。ありがとうございます。
前田:僕も試食させていただきましたが、生クリームの重たい感じではなく、軽い感じがしましたし、マスタードの辛味や風味がサワークリームとうまくマッチングしていますね。
川中:そうですね。
前田:最後に、ひとつ気になることが・・・二度ほど『天の声』という表現をされていましたが、あれって何気ない顔して、何気ない振りして、僕に聞いてきませんでした?
川中: ・・・すっ・・・すっ・・・すいませ~ん!
皆さん簡単でおいしい料理ですから、是非試してみてください。それでは失礼いたします。
川中~待て~!
END
<コラム担当者>
川中 大輔
前田 賢
<このコラムのレシピ>
鶏もも肉のきのこソース マスタード風味