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食のコラム&レシピ

【半歩プロの西洋料理】夏はあっさりと・・・

01<西洋>半歩プロの西洋料理

2016.07.20

【半歩プロの西洋料理】ってどんなコラム?


過日、父の「たまには魚の炊いたやつが食べたいなぁ」というつぶやきと「いっぺんフランス料理かイタリア料理を作ってくれや」という言葉を受けて、(私としては「しょっちゅう作っているやろ」と言いたいところではあるが、まぁ、言っても仕方がないと割り切って・・・)いつものごとく重い腰を上げて腕をふるうこととなった。


スーパーで買った切り身のいさきとあまだいをポワレして、焼き汁にオリーブ油を加えた軽いソースで


以前から舌びらめを使ってデュグレレやボンファムのようなクラシックなフランス料理はよく作ってきたし、アクアパッツァなどは準備の手軽さもあり、様々な野菜を加えて週一で食卓にのぼることもあったが、最近は「おいしいけど・・・」「重たい」「味が濃い」「食べるとしんどい」という母の言葉を受けて我が家の食卓は大きく変化した。


アクアパッツァに野菜をたっぷりとプラスして


昆布だしとワインだけでさっと煮たり、焼きっぱなしで水をベースにした軽いソースを添えたりと、フランス料理特有のだし汁をベースにしたしっかりとしたソースを使わず、しっかりと煮詰めるという作業も省いた料理に仕上げることが多い。


スーパーで手に入る魚介類数種類を昆布だしで軽く煮てサフラン風味で


今回は夏の食卓に向けて、私なりの軽い料理の作り方をご紹介しようと思う。


まず第一にフランス料理の基本である「フォン=だし汁」を見直すことから始めた。
以前は家で料理する際にはキューブや顆粒のブイヨンなどを使ったり、魚のあらでだし汁(フュメ・ド・ポワソン)をとったりしていたが、それをやめるところからスタートしたのである。野菜や主材料のゆで汁や肉や魚を焼いた際のデグラッサージュ(鍋底の旨みを水で洗い流したもの)などをだし汁の代わりにソースのベースに使うようにした。とりわけ、素材をゆでる際のゆで汁の塩加減には注意している。本来西洋料理では、野菜は1%~2%の塩分濃度の湯でゆでて、火が通る際に味がつくようにするのであるが、塩の分量を極端に抑えている。だからと言って「減塩」というわけではなく、アスパラガスやブロッコリーはゆでる前に1%の塩水に30分程度つけておいたり、日本料理の下漬け(ゆでた野菜を八方だしにつけて味を含ませておく作業)を参考にして、ゆでたての熱いままの野菜に冷たい塩水や八方だし、濃縮昆布だしなどをからめてから冷ますことによって、味を含ませたりすることにしている。本来冷水に落とす青い野菜なども少量なら風を当てることですぐに冷めるので色にも大きな問題はないし、それによって野菜のゆで汁は塩辛さの少ない野菜のだし汁になり、多少なりとも煮詰めて味を強くすることができるようになった。


次にこれもフランス料理のソースを作る上で大切な「煮詰める」という工程を見直した。
本来はしっかりと味が乗るまで煮詰めるのだが、ある程度で煮詰めるのをやめ、昆布だしや刻んだトマトの上澄み汁など旨みのあるものを少し加えて味の相乗効果をはかることにした。


切り身の鯛をさっとポシェし、豆乳とバターのソースで


更に乳製品の使い方を変えた。バターで焼くということを避け、オリーブ油で焼いて焼き上げた表面に溶かしたバターを塗って風味を付けたり、ソースにごく少量のバターを加えて仕上げたりといった小細工をすることにした。生クリームを使っていた料理に関しても豆乳プラスバターでのすり替えを行っている。


今回は父の希望もあり、お買い得品の小さな糸よりを買い込みブイヤベースにでも仕立てようと思っていたのだが、以前作って濃厚な味を覚えていた母は「そんなしつこいのは食べられへんかもしれん」というので、あっさりとした一皿にアレンジしてみた。出来上がりは至極好評で、年よりの口には合ったようである。はてさてどんな料理になったのか?興味のある方はレシピを頼りに一度お試しを・・・