【好吃(ハオチー)!中国料理】 栗餡のサクサク揚げ点心
中国料理には、「点心」と呼ばれる軽食が存在します。
日本の皆さんに馴染み深いといえば、点心と中国茶を楽しむ「飲茶(ヤムチャ)」という呼び名ではないでしょうか?
今回ご紹介する点心は、「甘い点心:甜点心」。この点心は非常に変わっていて、見た目は蜂の巣みたい♪ ご家庭では多少大変な揚げ物ですが、出来上がった点心に対する驚きは、素敵な物だと思います。是非、この機会にチャレンジしてみてください!
塘:今回の点心は非常に変わっているという事ですが、見た目は蜂の巣みたいな衣とはどんな衣?
船渡:塘先生。素敵な質問ありがとうございます!この点心の最大の特徴である生地についてご紹介しましょう。
この生地の特徴としては、揚げ上がりに無数の穴があき、まるで蜂の巣のように見える所にあります。そして、この生地を使用した本日の点心は、「蜂巣芋角(フォンチャオユィヂャオ)」と呼ばれます。
この点心を見ても「作り方がわからない。不思議な点心だ。」といわれるでしょう。
この生地は、蒸した芋と浮き粉とラードが基本になっています。実はこれらの微妙な配合により、揚げる時にガスが膨張して生地が糸状に伸び、その途中で固まるのでレース状になり、同時に生地の中のラードが溶けて流れだし、ラードが流れ出した後にまるで蜂の巣のような細かい穴があくという訳です。
この点心は、膨張剤としてアンモニアパウダ-(炭酸水素アンモニウム)を使用します。アンモニアパウダーは常温では固体ですが、熱が加わると炭酸ガスとアンモニアガスと水に分解され気体となります。全部気体となると、なんと元の体積の2000倍程に膨らみます。膨張剤としてはかなり優秀です。今回のレシピにも300gに対しわずか1.5gしか入りませんが、たくさんの気泡を作ります。またベーキングパウダーを膨張剤として使う場合、時として残留して苦味を感じるときがありますが、アンモニアパウダーは固体としての残留物が残りません。但し、独特のアンモニア臭がするので多量に使うことは出来ません。蒸し菓子よりも、焼き菓子や揚げ菓子の方がアンモニアガスが飛散しやすいので適しています。
ちょっと自慢になりますが、辻調理師専門学校が陣頭指揮を受け持った2000年の沖縄サミットにも、肉料理の添えとして使用され、各国首脳の方々に喜ばれました。そんな輝かしい実績を持った生地なのです。サクサクして香ばしくてとっても不思議な食感。そんな点心です。
塘:そんなにすごい点心なの?コリャ楽しみだ。ところで、この点心で気をつけたほうが良い点はありますか?
船渡: 第一には揚げ方でしょう。この揚げ方には非常にデリケートな技術が要されます。えっ?デリケートな技術?話が違うじゃないか!っとお思いかもしれませんが大丈夫です!今からご紹介するいくつかのポイントさえ押えておけば、必ず成功することが出来ます!それには何よりもまず、生地の特徴をつかむことが大切でしょう。先にもいいましたが、生地にはアンモニアパウダーが入っており、膨らむという点。又、ラードが入っているので油の中に入れたら溶け出すという点。生地は溶けてなくなるのです。油に入れた時から、生地は流れていきます。そのまま流れきらないうちに揚げ切る!それこそが最大のポイントです。
塘:実際に何に気をつければよいのでしょうか?
船渡:前振りが長かった分、既におわかりの方もいらっしゃるかも知れませんが、生地を油の中に入れる際の「油の温度」が大切になってくるのです。
逆に、温度が高すぎても、流れ出る前に固まってしまい、生地に穴があいていない状態になってしまいます。又は、穴の状態が綺麗なレース状になりません。
もう一つのポイントとしては、アンモニアパウダーの効果により大量の気泡が出るため、生地が浮いてしまいます。揚げ網などに押えてくっつけて、揚げ網ごと揚げると効果的でしょう。直ぐに本番を揚げてしまうのではなく、本番前に余り生地を油の中に入れ、その生地の流れ具合を確認してから揚げ始めることも大切です。それでは、綺麗なレース状の蜂の巣状の穴を目指して、頑張ってみてください!
塘:なるほどね・・・。そういえばアンモニアパウダ-は、昔、パン製造時に入れていたりしたそうですね。また、そのまま嗅ぐと強烈にアンモニア臭がするので鼻の下に擦りつけて気付け薬の代わりにしたと誰かに聞いた事があります。
船渡:僕もそういえば何にも知らない新人の頃、塘先生にだまされて思いっきり嗅がされたことがありましたね。
塘:そんな事もあったかな?すっかり忘れてた。でも、そりゃ新人の誰もが通る道じゃないか!
船渡:勝手に道にしないで下さい!(笑)
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