【日本料理一年生】 35時間目 鯖船場汁
●鯖船場汁●
本年度の料理一年生は、「背の青い魚」の中でも、我々に馴染みの深い鯖を使った料理を紹介しています。今回は「鯖船場汁」について紹介いたしましょう。
「船場」とは、かつて「天下の台所」と呼ばれた商都、大阪の中心地です。豊臣秀吉が大阪に大阪城を築城したとき、堺や伏見から商人たちを強制的に呼び寄せ、物流の集積地として機能させたところです。
当時の輸送手段は船が中心だったので、縦横無尽に堀川が築かれていて、「水都」とか「なにわの八百八橋」と呼ばれていました。
その中心地である「船場」は、北は土佐堀川、東は東横堀川、南は長堀川、西は西横堀川に囲まれた、色々な物資の物流拠点で、日本最大の商業集積地でした。「船場」の名前も、「船着場」から来ているとの説が有力です。現在でも「船場」は、大阪の代表的な問屋街として知られています。
今回の「船場汁」は、根底には大阪商人らしい「もったいない」という(けっして「けち」ではないのですが)、物を大切にすべて使いきろうという気質が残った料理です。
「船場汁」とは、その昔、船場の商家では、買ってきた塩鯖を、主人とその家族は、身の部分を塩焼きにし、大根おろしを添えて食べました。使用人たちは、残った鯖のアラ(頭や骨など)を鍋に入れ、水を加えて火にかけてだし汁をとり、これに、大根おろしで残った大根の皮や端の部分を刻んで加え、火を通して、鯖のアラと共に椀に盛って食べました。鯖のアラには、すでに塩がしてあるので調味料もいらず、材料も本来は捨てるようなものを使った料理です。「船場」では盛んに作られたので、この名が残っています。
現在でも大阪では、大阪寿司の専門店では、「箱寿司」と「船場汁」のセットが販売されています。この「船場汁」は、だし汁こそ鯖のアラでとっていますが、具は、鯖のアラと大根の皮というわけにいかないので、鯖の切り身と大根の真ん中の部分を短冊切りにしたものが入っています。
今回、松島先生が紹介している「船場汁」は、鯖のアラでだし汁をとるときに、鯖のくせを消すために日本酒を加えています。また、仕上げにも生姜や青葱を加えてくせを消しています。
<このコラムの担当者>
タイ語の話せる日本料理のおとうちゃん
小谷良孝
辻調の御言持(みことも)ち
重松麻希
<このコラムのレシピ>
鯖船場汁
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