【日本料理一年生】 40時間目 冷や汁
今年(2011年)の夏は震災の影響で、エアコンの設定温度は28℃に!とマスコミでは盛んに訴えていますね。節電に協力しないと、いつ停電が起こるか分からないとか。この28℃というのは、案外大切な温度のようです。人間が少し動いて、暑いと感じる温度は29℃なので、これより1℃下げる温度を推奨しているのだそうです。温度を1℃下げると電気使用量は約10%削減できるようです。でも、今年の夏は、猛暑だとか……。
クールビズやグリーンカーテンなど、さまざまな工夫がなされる中、「食」の分野では、体を内側から冷やすメニューが登場してきています。日本には夏の食事として、冷や麦や冷やし素麺、そして冷や汁などの冷たい料理があります。昔から、これらを食べることで、体を内側からクールダウンさせる方法をとってきました。2011年の夏は、冷やしリゾットや冷やし茶漬け、冷やしカツ丼など、「冷やしご飯(冷たい米飯)」がブームになりそうです。最近、温かいご飯が冷めるとき、食物繊維に似た働きをする成分が作られることが明らかになり、食物繊維の不足で悩む若い女性に人気を呼びそうです。
そんな暑くて、食欲も減退するようなときに、ぜひ食べてほしいのが今回紹介する「冷や汁」です。
冷や汁は、さまざまな地方にあって、いろいろな作り方があるようですが、宮崎県の地方料理の冷や汁が有名なように思います。今回は、この冷や汁についてお話します。
職員室の私の斜め向かいの席に、宮崎県出身でフランス料理担当の先生が座っていらっしゃいます。ちょっぴりダンディーな、自称BBQ界の貴公子、N教授に冷や汁についてお聞きしてみました。
N教授は「俺は、嫌いだ!」といいながら、次のように話してくれました。
子供の頃に、家庭で食べていた冷や汁は、朝食の残りの味噌汁を冷やご飯にぶっかけ、漬物を乗せたものだった。晴れの食事ではなく、日常の食べ物なので、どの家も同じようなものではないだろうか。最近、テレビや雑誌に紹介されているのは、おしゃれで、ひと手間かけた冷や汁だが、宮崎の多くの家庭がこのような冷や汁を食べているわけではないだろう。
ということです。
私が在タイ日本大使館に出向中、体調を壊して食欲がなかったことがありました。このとき、宮崎出身の日本料理店の料理長の家に呼ばれました。冷や汁を麺つゆ代わりにした、冷たいクイッティオ(現地の米麺)を頂いたのですが、これが大変おいしくて、一度に元気を取り戻しました。
食材の中には、体を温める食べ物と体を冷やす食べ物、そしてちょうど真ん中にあたる食べ物があります。今回の冷や汁は、暑気払いという意味があるので、体を冷やす食べ物の麦、胡瓜、豆腐をたっぷり使いました。その効果をお試しください。ただ、そもそも体はあまり冷やしすぎてはよくありません。体をあっためる食べ物の田舎味噌で味つけをして、薬味として青紫蘇や茗荷、胡麻を添えることでバランスを考えています。
では、そのおしゃれな宮崎県風「冷や汁」を松島先生に紹介していただきましょう。
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