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食のコラム&レシピ

【ラ・ミーア・マンマ・イターリア!!】栗の木からはマロンは採れない?

02<西洋>ラ・ミーア・マンマ!イターリア!!

2010.10.05

<【ラ・ミーア・マンマ!イターリア!!】ってどんなコラム?>

 暑い夏を乗り切ると過ごしやすい秋が来ます。秋には紅葉の秋、読書の秋、運動の秋といろいろな秋がありますが、私にとって最も嬉しいのはやっぱり食欲の秋ですね。芋、南瓜と並び称される秋の味覚が今回のテーマです。それは『栗』です。
 『栗』と一口に言っても色々な種類、食べ方、加工品があることを皆さんご存知ですか。まず栗は歴史がとても古い果物です。縄文時代の遺跡である三内丸山遺跡からはすでに栗を栽培していた跡が見られるそうです。

 主に栗は4種類に大別されます。『日本栗』は果実が大きく、風味は良いですが、甘みは少なく渋皮が剥きにくいのが特徴です。調理法としては、渋皮ごと作る渋皮煮や甘露煮などがあります。

 『中国栗』は小ぶりながら渋皮が剥きやすいのが特徴です。甘みが強く天津甘栗の原料となる『板栗(バンリー)』などがあります。こちらは害虫に弱く日本では栽培されていません。

 『アメリカ栗』は品質がよく大きくて強い樹が木材として重宝されていました。病気により壊滅状態になり、今でも一部の地域でしか栽培されていません。こちらも日本での栽培は難しいようです。

 そして、『ヨーロッパ栗』です。果実は小ぶりで甘みが強いです。ヨーロッパではお菓子や料理の付け合わせとして使われています。こちらも害虫に弱く日本では栽培されていません。ヨーロッパでの主な産地はイタリアです。イタリアでEU圏の栗の生産量の5割を占めています。カンパーニア州、ラツィオ州、カラーブリア州、そしてピエモンテ州の4州で生産が盛んで、特にピエモンテ産は最高級とされています。フランス菓子の『マロン・グラッセ』も有名メーカーから市販されているものは、ピエモンテ産を使用しているそうです。

 栗の洋菓子といえばモンブランなどのフランスのお菓子を思い浮かべますが、イタリアにももちろん栗のお菓子があります。モンブランのイタリア版ともいえるモンテ・ビアンコ(イタリアのモンテ・ビアンコは栗そのもののペーストを生クリームでデコレーションしたようなシンプルなものが多いんですよ)や、栗の粉を使ったカスタニャッチョ等です。そもそもイタリアでは秋になると街角に焼き栗の屋台が出たり、大きいネットに入って売っているものを買ってきて専用のフライパンで焼いたりするので、栗がとても身近にあるようですね。また、秋には色々な場所で栗のお祭りが開かれるそうです。

屋台の焼き栗
屋台の焼き栗

 一口に『栗』と言ってもイタリアでは大きく2つに分かれます。実が大きくイガの中に1粒しか入っていないものを『marrone(マッローネ)』と言い、3粒程度入っているものを『castagne(カスターニャ)』と呼び分けます。甘く皮が剥きやすいマッローネはマロングラッセに、小ぶりなカスターニャは皮が剥きにくいので、形が崩れたものなど、加工品にするにはこちらを使います。栗の加工品にはペーストやクリーム等が市販されていて日本でも気軽に手に入りますが、珍しいのが栗の粉です。


左奥から栗の粉、剥き栗、栗のペースト、左手前から栗の蜂蜜、栗のピューレ

今回はこの粉を使ったイタリアのトスカーナ州伝統のクレープをご紹介します。甘くしてデザートにしたり素材の味を生かして料理の付け合せにしたり様々なバリエーションがあります。秋の味覚の栗も今年はいつもと違う形で味わってみてはいかがでしょうか。

BUON APPETITO !!

<コラム担当>
茂木 紫穂子

<このコラムのレシピ>
栗粉のクレープ
栗のアイスクリーム

<バックナンバー>
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