【怖くない、怖くないインターナショナルクッキング】アメリカ地方料理・その③
<【怖くない、怖くないインターナショナルクッキング】ってどんなコラム?>
アメリカ西海岸、かつては極西部(Far West)と呼ばれていた地域です。さまざまな民族集団がアメリカ大陸を東から西に押し進み、この民族の大波の中で数え切れないほどの新しい料理が運び込まれ、またネイティブ・アメリカンたちの料理と融合して、アメリカの食生活に複雑微妙な色合いを加えてきました。西部への移住の最盛期は1840年から1860年にかけて、ミシシッピーからカリフォルニアに向け、飛び石状に行われました。1848年に最初の金鉱が発見され、1850年にはカリフォルニアが正式に一つの州となり、続いて1859年オレゴンが州となり、1889年ワシントンが州となりました。
西海岸のあちこちの海や入り江では、クラム、カキ、カニ、イガイ、ダンジネスクラブをはじめ、たくさんの魚介類が獲れ、内陸部はベリー類やシカ、マッシュルーム、リンゴ、洋ナシ、ナッツ類などの恵みで溢れていたそうです。中でもサーモンはこの地方の主要な食糧で、産卵期になると川を埋め尽くすほど遡上しています。
では話題を変えて、西海岸で評判の高い面白いレストランや料理について少し記してみましょう。
はじめに西海岸で知名度ナンバーワンを誇るオーナー&シェフ、ウルフガング・パック氏(Wolfgang Puck)が経営するレストランの一つ「シノワ・オン・メイン(CHINOIS ON MAIN)」を紹介しましょう。
サンタ・モニカのメインストリートに面し、連日超満員の盛況振りです。新鮮な食材はもちろんのこと、店の名前からもわかるように中国料理のテクニックと和のテイストを取り込んだカリフォルニア料理で、基本的には大皿盛りにして提供されます。これを何人で取り分けるかは客しだいで、ちょうど中華の円卓で食事をすすめるのと同じです。
またクーベルのセッティングにも特徴があり、ナイフ、フォークと共に箸がセットされています。
次はサン・フランシスコにある庶民を対象としたシーフード料理の専門店「スワン・オイスター・ディポット(Swan Oyster Depot)」についてです。
サン・フランシスコでは魚介類を扱っているレストランやバー、カフェなどが多くあるのですが、その中でも鮮度の良さには定評がある名店の一つです。入り口のショーケースには持ち帰り用のシーフードが丁寧に陳列され、近くに住む主婦らしい人たちが好みのものを注文して、量り売りで買い求めています。その奥には細長いバーカウンターがあり、サラリーマンやOLたちが昼食のひと時を楽しんでいます。生ガキやクラム、ゆでた小エビやカニのカクテル、クラム・チャウダーなどを注文し、美味しそうに食しています。どこの国の人々も同じでしょうが、こういう店ではあまり話し声が聞こえてこないものですね。またサン・フランシスコでは定番のパン、少し酸味のあるサワードゥ・ブレッド(Sourdough Bread)が実に良く合います。
最後にもう一店、辻調グループ校の卒業生がオーナー&シェフとして腕をふるっているレストランを紹介しておきましょう。1988年10月、ナパ・バレーのセント・ヘレナにあった古い養鶏場の建物を改装して、「テラ(TERRA)」という名前のレストランがオープンしました。
「テラ(TERRA)」とは、「大地、地球」を意味するイタリア語で、辻調18期生の曽根廣喜さんが、その妻であるリサさんと共に活躍しています。二人の共通点は、先ほど記しましたウルフガング・パック氏(Wolfgang Puck)が経営するもう一つの店、ロスのビバリーヒルズにあるレストラン「スパゴ(SPAGO)」で、共に働いていた時期があるということです。ローカルのお客様たちからも高い評価を受けるレストランで、ワインの産地だけに食べること飲むことに興味を持つ人々が数多く訪れています。
さて話が長くなりましたが、今回の料理ついて説明しましょう。西海岸を代表する食材の一つ、サーモンを使ったグリルです。特徴は「タイ風のレッドカレーソース」で、生クリームを加えてなめらかでクリーミーに仕上げています。付け合わせには、アメリカ五大湖周辺で多く栽培されているワイルドライスとトウモロコシを組み合わせました。それに爽やかさを添えるために、グリーンハーブサラダをトッピングしています。主材料のサーモンを他のシーフードや鶏肉に変えても美味しくいただけます。是非、お試しください。
<コラムの担当者>
スパイスの魔術師 三木敏彦
<このコラムのレシピ>
サーモンのグリル、ワイルドライス添え、タイ風レッドカレーソース
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