【百人一首と和菓子】笹の風
お菓子について
笹の葉が河原でゆらゆら揺れている様子を読んだ恋の歌です。笹の葉がゆらゆら揺れている様子を、夏向きの涼しげなお菓子に表現しました。
豆辞典
58 大弐三位(だいにのさんみ)
平安中期の女流歌人です。生まれた年と亡くなった年ははっきりしませんが、紫式部の娘で、名前は「賢子」といわれます。母親と同じように、中宮彰子(しょうし)に仕えた人です。一度目の結婚の後で、のちの後冷泉(ごれいぜい)天皇の乳母となりました。「大弐三位」という呼び名は、二度目の夫である高階成章(たかしなのなりあきら)の官位に由来します。
紫式部は、生きているうちから『源氏物語』の作者として有名でした。当然、ひとり娘の大弐三位には、親の七光りもあったことでしょう。それをうまく味方につけたのか、それとも、うっとうしく思っていたのか、彼女自身の気持ちは分かりません。10代で母親と死別しましたが、女性としては大変な出世とされる従三位典侍(じゅさんみてんじ)という役職につき、80歳くらいまで長生きしたと伝えられますから、傍目には、それなりに恵まれた人生を送ったといえるのかもしれません。
さて、歌の方ですが、
有馬山に近い猪名の笹原に風が吹くと、そよそよと音を立てて揺れます。そうそう、そのことですが、あなたは私の様子が不安だとおっしゃいますが、私はどうしてあなたのことを忘れられるでしょうか。
くらいの意味です。
自分から遠のいていた男性が、大弐三位が心変わりをしているのではないかと言ってきたので、反論したような歌です。「有馬山いなのささ原風吹けば」までは、「そよ」を導く序詞になっています。「有馬山」は現在の神戸市の六甲山の北側あたりの山のこと、「いなの笹原」は尼崎市の猪名川の両岸の平地で、昔は笹原だったようです。
一見、広々とした自然風景をゆるやかに歌っているのかと思いきや、「そよ(現代語のそうそう)」という言葉を導き出した瞬間に「そよ?そうそう、そのことだけど、そもそも遠のいてったのは、あなたの方じゃない。私のせいにしないでよねっ!」というような締めくくり。相手の男性は、言い返せたのかどうかなのか。
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