【百人一首と和菓子】夏の川
<【百人一首と和菓子】ってどんなコラム?>
お菓子について
先人の涼の知恵の中に「納涼床(のうりょうどこ)」があります。「川床」と書いて「かわどこ」や「かわゆか」などと読みます。京都の夏の風物詩といってもいいでしょう。川の近くまたは川の上に座敷を作り、そこで料理やお酒を味わいます。暑い夏に涼を楽しみ、自然に囲まれ川のせせらぎに耳を傾け、緑の木々を眺めながら清々しい空気が漂います。
私は海のない地域で育ったので、子供のころは、夏休みになると家族や友達と近くの河原で泳いだり、バーベキューをしたり、岩から飛びんだりして一日中遊んでいました。
今回は
白羊羹を水色に染めて 川全体の雰囲気を
かるかん生地で 川しぶきを
白小豆の蜜漬けで 玉じゃりを
銀ぱくで 水面にうつる太陽光の反射を
透明の錦玉羹感で 川の流れを
それぞれ表現しています。
冷やして食べるとよりいっそう美味しくいただけます。
豆辞典
27 中納言兼輔(ちゅうなごんかねすけ)
中納言は役職名で、本名は藤原兼輔(ふじわらのかねすけ)。平安時代前期の歌人で、西暦877~933年を生きた人です。堤(つつみ)中納言とも呼ばれましたが、これは、邸が賀茂川の西側の堤(=土手)近くにあったからです。三十六歌仙(さんじゅうろっかせん)という歌詠み名人に名前が入っています。歌の世界の中心人物でした。『源氏物語』を書いた紫式部(57番の歌の作者)の曽祖父(=ひいおじいさん)にあたります。
さて、歌の方ですが、
みかの原を分けて湧いて流れるという「いづみ川」の「いつみ」という言葉のように、いつ逢ったのだろうか。こんなにも恋しいなんて。
というくらいの意味です。
「みかの原」は京都府木津川市の地名で「瓶原」と書きます。瓶(みか=酒を造るのに使われた大きなかめ)を埋めたところ、水が湧いたという言い伝えがある地域です。「いづみ川」は現在の木津川ではないかといわれます。「いづみ」と「いつみ」は清音と濁音の違いがあって、正確には発音が違うと現代の私たちは思いますが、平安期の人たちは、清音と濁音の違いをあまり気にしていなかったので、ほぼ同じ発音とこの歌では解釈しています。「みかの原 わきて流るる いづみ川」までが「いつみ」を引き出すための言葉、「序詞(じょことば)」になっています。
「いつみきとてか(いつ逢ったのだろうか)」の解釈に2通りあって、顔を見ることなくうわさで憧れで恋をしているというものと、一度は逢ったのだけれど、その後なかなか逢えないで恋しく思っているというものです。さて、あなたはどちらに解釈しますか?
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