【辻調おいしいレシピ・Pick UP! 食材編】第16回 侵略的外来生物
豆腐と若布の赤味噌仕立て
「ワカメ」は日本人にとって昔から身近な食材で、今(冬~早春にかけて)は生のワカメが出回る季節です。
しかし海外では朝鮮半島を除いて食材としての認知度はほとんど無いようで、そもそも東アジア以外の海には無かった海藻です。
ところが、今では日本などから移動して各地の海で繁殖しています。
ワカメの移動手段として有力なのはバラスト水※で、ワカメの胞子(遊走子)がこれに紛れ込んで各地に運ばれ定着してしまったようです。
それらの国からみれば生態系を壊す悪者(害藻)ということになり、侵略してきた外来生物ということになります。
結果、日本発の「侵略的外来生物」として国際自然保護連合(IUCN)が定めた「世界の侵略的外来種ワースト100」※に入ってしまっています。
この「ワースト100」の中には、日本発としては葛粉の原料になる「クズ」も入っていて、海外では駆除が続けられているそうです。
何だかちょっと悲しいですが。
その他には、日本でも問題となっている北アメリカ発の「ブラックバス」や、中国発の「チュウゴクモクズガニ」なども入っています。
(これらの移動手段は人が釣りの対象や食材として持ち込んだケースですが)
チュウゴクモクズガニは上海ガニの名で高級食材として取り扱われることから、増えてしまったんだからいっそこれで商売を、ということにもなっているようです。
ワカメも日本向けに輸出できるのでは、という動きがニュージーランドなどで出てきているそうです。
※バラスト水...大型船舶が航行時のバランスをとるために船内に貯留する海水のことで、到着港で放出される際、バラスト水中に含まれる様々な海洋生物(動植物プランクトンや海藻の断片など)も一緒に放出される。
※世界の侵略的外来種ワースト100...国際自然保護連合(IUCN)の種の保全委員会が定めた、本来の生育・生息地以外に侵入した外来種の中で、特に生態系や人間活動への影響が大きい生物のリスト。
企画部 藤井嘉人