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毎日新聞「美食地質学」 第12講 御食つ国と中部沈降帯 若狭マハタ

新聞
美食地質学入門

2024.03.07

2024年3月5日(火)刊行の『毎日新聞・夕刊』に、「美食地質学」が掲載されました。

「美食地質学」は、食通のマグマ学者・巽好幸先生(ジオリブ研究所所長)と、辻調理師専門学校の教員が、地質学と美食の関係をテーマに、それにまつわるお料理とお酒を楽しみながら対談をおこない、理解を深めていくという企画です。

第12講のテーマは「御食つ国と中部沈降帯 若狭マハタ」。
志摩や淡路島とともに、今回テーマとした若狭も「御食つ国」として知られます。中部沈降帯の「中部」とは、伊勢湾―琵琶湖―若狭湾のこと。地図を見ると確かに、各湾が内陸へ入り込み、くびれているように見えます。このラインを繋ぐ古の日本の権力という、ダイナミックなお話となりました。取り上げた食材は、若狭のリアス海岸で養殖された「若狭マハタ」。湾自体が恵み豊かなうえ、養殖としても歴史あるこの地のお話を紹介しています。

>毎日新聞「美食地質学」 第12講 御食つ国と中部沈降帯 若狭マハタ
https://mainichi.jp/articles/20240305/dde/012/070/007000c(閲覧には会員登録が必要です)

今回の対談担当は、辻調理師専門学校の日本料理・松島愛先生です。

福井県では、50年程前から若狭地域のリアス海岸を利用した養殖が行われているそう。日本海側で養殖は珍しいのですが、例えば若狭フグで知られるように、良質な魚を飼育してきた土壌があります。今回取り上げた「若狭マハタ」は、平成27年より養殖試験がスタートしたニューフェイス。マハタは味とお値段のバランスがよい優秀な魚。福井県のお魚に、またひとつ名産品が加わったんですね。

上)今回使用した福井県の若狭マハタ 下)若狭マハタを証明する表示


おいしいことになると話に花が咲く巽先生と松島先生

前回とおなじく、先生たちの前には日本料理では見慣れない回転テーブルがあります。
今回の対談会場も、中国料理の教室。料理も中国料理の先生が担当しました。

左手前から時計回りに、魚の塩水煮 自貢風、ハタのレモングラス炒め、広東風の魚の蒸しもの、中国風造りサラダ仕立てです。
中国にあるリアス海岸を有する南方の地域の料理を中心に、4品で構成しました。

調理を担当したのは、中島圭佑先生と川﨑元太先生です。

中島先生は、前回に続いての担当。湯気の勢いがすごい!
白い煙が出るまで熱したねぎ油をかけている瞬間です。さすが中国料理、大迫力ですね。

初登場の川﨑先生です。薬味だけで10種近く使うような奥行きのある味の料理を2品作ってくれました。
マハタは、火の入れ方によって食感が変わる色んな顔を持つ食材だと話題に。

助手は塩崎亜純先生がつとめてくれました。ありがとうございます!

料理について、お出しした順に簡単に紹介します。

鳳城滑魚生(中国風造り サラダ仕立て)
締めてから寝かせた若狭マハタの、ねっとりとした食感と味わいが生きる1品。料理名の鳳城は広東省にある順徳の別名です。香りのある調味油と奥行きのある合わせ醬油をかけて、たくさんの野菜とナッツ類、カリカリの春巻の皮などとザックリ混ぜていただきます。


香茅炒斑球(ハタのレモングラス炒め)
高温の油でマハタに軽く火を通してから、白キクラゲや銀杏など個性ある材料とともに、最後にレモングラスの風味豊かな香味と炒め合わせたもの。火通しが絶妙で、マハタの弾力ある身質が感じられます。


鮮辣跳水魚(魚の塩水煮 自貢風)
自貢は中国四川省の街の名前で、内陸なのに塩の都として知られる土地だそう。鹹(しょっぱさ)が骨組みとなっていますが、決して塩辛いばかりではなく、多種多様な香りとうまみと刺激のある食材を用いることで、とても複雑なうま味を表現。乳化した餡をマハタですくいあげながら口に運ぶと、お酒が止まらない味。


清蒸鮮魚(広東風の魚の蒸しもの)
つぼ抜きしたマハタを丸ごと蒸し上げるので、魚の鮮度が生きる調理法。魚の香りのあるねぎ類をのせ、高温に熱した油と、魚醤や中国たまりなどを合わせたほんのり甘い醤油を回しかけて、仕上げに香菜をたっぷりと。ふっくらした身を、ジャスミンライスにのせて召し上がっていただきました。長粒米をおいしく食べるポイントは、ご飯にタレをたっぷり。

中国料理ですが、日本の地質との関係を考えたり、つながりを想像したりと、楽しい料理となりました。ぜひ紙面でお読みください。


今回の料理に合わせたお酒は、福井県・株式会社南部酒造場さんの「花垣BLEND in 純米古酒」。
3年超熟成させた純米酒を数種類ブレンドし、飲みやすさと調和のとれた味わいを追求した古酒です。
単体でもおいしいのですが、今回のお料理とは抜群の相性でした。
見た目もとてもきれいで、レストランで出てきても嬉しい。日本酒の熟成には可能性がありますね。


終盤気づけばずいぶん杯を重ねていたお二人

次回の掲載は、「毎日新聞(夕刊)」4月2日発行を予定しています。
どうぞお楽しみに。