【ビバ!ベバレッジ】<食後のコーヒー>デミタスコーヒーとエスプレッソコーヒー
フランス料理を食べに行きますと、食後にコーヒーが提供されます。そういうときに出てくるコーヒーはたいてい、通常より小さなカップに入っています。
最近では食後のコーヒーを注文するときに「コーヒーですか?エスプレッソですか?」と区別して聞かれることが多いですが、20数年前は、小さなカップ(デミタス)に入れたドリップコーヒーを「エスプレッソコーヒー」や「デミタスコーヒー」と呼んで、食後に出していました。
そのため、私は長い間、「エスプレッソコーヒー=デミタスコーヒー(小さなカップに入ったコーヒー)」だと信じていました。食後には濃い(苦い)コーヒーを少量飲むものと思い、そのコーヒーの種類は考えたことがなかったのです。
エスプレッソマシーンを使った本物の「エスプレッソコーヒー」が日本でも紹介され、今ではすっかり日本に定着しました。このエスプレッソマシーンの登場によって、「エスプレッソコーヒー」と「デミタスコーヒー」は種類も器も違うものであることを初めて知りました。
辞書で調べると、
デミタスは「(半量用カップの意)主に食後に用いる小型のコーヒー・カップ。また、それに注いだコーヒー」、
エスプレッソコーヒーは「ごく細かく挽いた深入りのコーヒーに圧搾蒸気を通して一気にいれた濃いコーヒー」
と書いてあります。
つまり、デミタスは小さいカップのこと、一方のエスプレッソコーヒーはコーヒーの種類のことです。ですから、デミタスにどんなコーヒーを入れてもデミタスコーヒーなのです。
エスプレッソコーヒーには専用のエスプレッソカップがあります。これはデミタスとほぼ同じ大きさですが、形はだいたい決まっています。デミタスと比べてみましょう。
エスプレッソカップは、
飲み口に丸みがある。
カップに厚みがある。
カップの底が丸い形状である。
エスプレッソコーヒーのおいしさを引き出すように作られているカップです。
エスプレッソカップには当然エスプレッソコーヒーを入れますから、デミタスにはエスプレッソ以外の、つまりドリップコーヒーが入っている、ということになります。
では、ドリップコーヒーとエスプレッソコーヒーはどんな風に違うのでしょう。
抽出方法の違いを紹介します。
ドリップコーヒーは、挽いた豆をフィルターに入れ、湯をかけて抽出します。
焙煎より2週間以内の新鮮な豆で抽出した場合、湯をかけた豆がドーム状に膨らみ、焙煎が適切なコーヒー豆ほどその中央に均等な泡が出来ます。
エスプレッソコーヒーの抽出は極細の豆を金属のホルダーに入れ、90度の湯に9気圧の圧力を加えて抽出します。
豆の鮮度、メッシュ(豆の粒度)、タンピング(豆を金属フィルターに入れて押して圧力を加えること)、抽出時間がマッチした場合、コーヒーの液面に泡(クレマ)の層が出来ます。
エスプレッソの泡(クレマ)がしっかりしたものは、このように泡の上に砂糖がのります。
ドリップコーヒーでもエスプレッソコーヒーでも、提供するときは、味(苦味、酸味、甘み)のバランス、温度、濃度(濃さ)、抽出量が大切です。また、どのような器を使用すれば良いかを考えることも重要です。
<コラム担当者>
マエストロ 寺尾雅典
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