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【半歩プロの西洋料理】いつもよりワンランク上のクリスマスの為に・・・

01<西洋>半歩プロの西洋料理

2012.11.21

半歩プロの西洋料理】ってどんなコラム?>

こんにちは、エコール辻東京の三浦です!

近頃寒くなってきましたがみなさん体調は大丈夫でしょうか?

東京校の学生達も体調を崩さず、冬休みまで残り一月に迫った学校生活に励んでいますし、

街を見渡せば年末最大のイベント、クリスマスに向けて騒ぎ始めていますね。

日本で「クリスマスには鶏料理」という習慣を定着させたのはあるフライドチキンのチェーン店という説もあるそうですが、確かにクリスマスの定番料理といえば、鶏や七面鳥のローストなどが多いようです。

とはいえ、クリスマスに家庭で鶏を丸ごとローストする事は難しく感じる方も多いかもしれません。実際クリスマスの時期には市販のローストを購入したり、あるいはもっと手軽な鶏もも肉の照り焼きや、それこそフライドチキンなどを利用する方も多いようです。

ですが丸ごと一羽使った鳥料理というのはやはり豪華さを演出しますし、お祝いの気分をいっそう盛り上げますので、特別な日のご馳走としてぜひ試していただきたいものです。

先に紹介した鶏や七面鳥の他にも美味しい鳥は色々とありますが、フランス校生としてフランスのレストランで研修していた数年前に食べた忘れられない鳥料理の1つに、ほろほろ鳥を使ったものがありました。家庭でのパーティーに招かれた際に蒸し煮にしたものをいただいたのですが、素朴ながらもとても深い味わいで、印象に残っています。

フランス語で"パンタードpintade"というこのほろほろ鳥、鶏肉より少し高めではありますがフランスではポピュラーな食材で、クリスマスや年末年始など、特別な日のメインディッシュにも良く使われていました。

とても美味しかった事は覚えているのですが、実際どんな鳥なのかはよく知らずにいたところ、最近は日本国内でも食肉用に飼養している場所があると聞き、リサーチしてきました。

日本で唯一のホロホロ鳥の専門農場「石黒農場」は、宮沢賢治を輩出した岩手県の温泉郷、花巻市にあります。

石黒農場の看板 専務の石黒さんに案内していただきました 
(左)石黒農場の看板  (右)専務の石黒さんに案内していただきました

敷地内を案内していただきながら、ほろほろ鳥についての説明を受けました。

ほろほろ鳥は、アフリカを原産地とするキジ科の鳥。病気などに強い特性があり、家禽化された後も品種改良はほとんどされていないそうです。しかし一方で熱帯地方原産のため寒さに弱く、また非常に繊細で神経質な性質を持っています。

大きな音はもちろん、見慣れないものにも強い警戒心を示すため、通常と異なる事が起きると卵を産まなくなったり、卵の品質が悪くなることもあるとか。

そのため、飼育作業は最小の人員で行うだけでなく、繊細なほろほろ鳥にダメージを与えないよう、作業員は服を皆同系色のものにしたり、世話の間は動作もゆっくりとし、会話も控えめに...といった具合に、細心の注意を払って世話をしていらっしゃるそうです。

まずは鶏舎を見せていただきました。

薄暗い部屋の地下に渡されたパイプの中に約40度の天然温泉を通してあるため、鶏舎内の気温は常に24~26度を維持しています。この温泉による暖房システムは、温泉郷である花巻においてもとても珍しいものだそうです。

寒さに弱いとされるホロホロ鳥も、この環境なら安心して暮らせそうですね。

1つの鶏舎で最大1000羽の同時飼育が可能で、ここでホロホロ鳥はひなの状態から出荷に適した2キロの個体になるまで、約120日間生育されています。

通常、石黒農場さんでは農場の鳥が産んだ卵を孵化させ育てているのですが、やはり繊細な性質を持つ鳥だけあり、去年の震災以降産んだり産まなかったりで数が安定せず、今はフランスからヒナを空輸して育てているそうです。

成長過程の順に鶏舎を回って見せていただくことになり、まずは一番小さい生後2週間ほどのヒナのいる場所へ向かいました。

ところが、僕らがドアを開けるとみな一斉に奥の方へと逃げてしまいました。

かわいい姿を間近で見たかったのですが泣く泣く断念
かわいい姿を間近で見たかったのですが泣く泣く断念

泣き声は高音で、ニワトリなどのヒナの泣き声とさほど変わらないと思います。

 次に生後70日(体重約900g)の若鳥。

これくらいの固体になると余り怖がらなくはなりますが、まだ半分は怖がって逃げてしまうものが多いよう
これくらいの固体になると余り怖がらなくはなりますが、まだ半分は怖がって逃げてしまうものが多いよう

日本ではこの大きさのうちは出荷しないそうですが、フランスではホロホロ鳥の若鳥(パンタドーpintadeau)として販売されています。

ちなみに、ほろほろ鳥という名は、鳴き声が「ホロホロ」と聞こえる事に由来するといわれており、今回の取材でも、本当に「ホロホロ」と鳴くのかどうかが興味の1つでもありました。

鳴き声としてはこの大きさのものが一番ホロホロ~と鳴いているように聞こえましたが、数が多いためなかなか聞きとりづらかったです。

そして最後に出荷直前の生後120日(約2kg)の鳥。

出荷直前の生後120日(約2kg)の鳥 出荷直前の生後120日(約2kg)の鳥
どうですかこの素晴らしいボディー!と某テレビショッピングで言われそうなほどの美しさ

ここまでくると全く人を怖がることもなくなり、ドアを開けた瞬間もほとんど反応がないどころか、こちらを威嚇してくる鳥がいるほどです(体が大きいので怖かったです!)。

この鳥達の鳴き声は・・・・なにせ数が多いので、擬音で表すなら「ギャアギャア」という音に一番近かったです。

製品になったほろほろ鳥
製品になったほろほろ鳥。左はフランス産、右は石黒農場産のほろほろ鳥。個体の色の差は飼料の違いによるものだとか

 

最後に農場の方に、ほろほろ鳥について色々とインタビューをしてみました。

Q:ほろほろ鳥はどんな料理法が一番おいしいですか?

A:骨ごとぶつ切りにして、鍋物や煮物が一番おいしいと思います。

Q:こちらの農場ならではの食べ方などはありますか?

A:ほろほろ鳥の燻製です。低温でゆっくり燻しているので、柔らかく、ジューシーに仕上がっています。

こちらの農場の大型燻製機、チップは桜を使用。燻製は、通販もしているそうです
こちらの農場の大型燻製機、チップは桜を使用。燻製は、通販もしているそうです

Q:ほろほろ鳥を飼育していて、一番辛かった事。嬉しかった事はなんでしょうか?

A:辛いというか、大変なのは寒さへの対策ですね。寒さに弱いほろほろ鳥はすぐ体調を壊してしまうので、ここが一番気を使うところです。

逆に嬉しかった事はフランスで修行された料理人の方にうちのほろほろ鳥を使っていただいたところ、フランス産のものよりもおいしい、と言っていただけた事です。

実際に僕も石黒農場さんのほろほろ鳥を焼いて食べてみたのですが、たしかにいつも学校で使っているフランス産のものより脂が乗っていてコクがあり、美味しかったです。

燻製の方は胸肉、もも肉共にほどよい燻香、農場の方がおっしゃっていた通り肉はしっとり柔らかく、味が濃かったので、冷たいサラダに入れても合うな、と思える味でした。

四季により寒暖の差が大きい日本ではほろほろ鳥の飼育は難しいと言われる中、石黒農場さんでは「他の地域にはない花巻の特産品を作りたい」との思いから飼育、生産に取り組んでいらっしゃいます。

近年はフランス料理店などでの需要が高まっているようで、月に約2000羽ほどが出荷され、販売先は日本各地のレストランが8割、通販での個別販売が2割で、最盛期のクリスマスシーズンにはその3倍にもなるそうです。

以前よりもフレッシュなほろほろ鳥が手に入りやすくなった昨今、もうすぐ訪れるクリスマスの特別料理として、皆さんにもぜひその味を知っていただければと思います。

フランスでの鳥料理の代表的な調理方法としては

・ロースト(丸のままオーブンで焼く)

・サルミ(焼いたものを煮込む)

・フリカッセ、ブレゼ(煮込み、蒸し煮)

などがありますが、今回は、僕が研修先で食べて美味しかったほろほろ鳥料理の思い出から『パンタード・ブレゼ・オ・シュー(ほろほろ鳥とキャベツの蒸し煮)』をご紹介いたします。

蒸し煮なら必要な器具も少ないですし、特別な日の食事にテーブルにお鍋をドン!!と置くのも良いプレゼンテーションになるでしょう。

特別なクリスマスなのにキャベツ?と思っている画面の前のあなた、この料理に使うキャベツは、普通のキャベツとは一味違うのです。

それは「ちりめんキャベツ」。ちりめんキャベツは普通のキャベツに比べ肉厚で煮込みに向いているキャベツです。もし手に入れば、ぜひこのちりめんキャベツを使って作ってみてください。

この二つさえそろえばあとは手に入りづらいものはありません。

完成した料理は、クリスマスをいつもと違う特別なものにしてくれるでしょう!

パーティーの始まる前に、フランス語で「ジョワイユ・ノエルJoyeux Noël(メリークリスマス)」と言えば、クリスマス気分がさらに高まるかもしれませんよ。

※コラム執筆に当たっては、石黒農場さんへの直接取材で得た情報、およびホームページ内のほろほろ鳥に関する記述を参考にさせていただきました。この場を借りて深謝いたします。

URL: www.ishikuro-farm.com/index.html