【半歩プロの西洋料理】イタリア料理外伝・より道トマトソース
こんにちわ!
辻調理技術研究所(技研)イタリア料理担当の小林です。
研究生たちは就職も決まり、ムニュースペシャルという1年間の集大成として
自分たちで考えた料理を作成したり、実技、筆記期末テストで四苦八苦。
卒業前の多忙・多忙な毎日で・・・。過ぎてしまえば、色々なことが・・・・あったな~
11月には、2年ごとに行われるサービスコンクール、【メートル・ド・セルヴィス杯】が行われ、研究生が上位独占とか!
研究生にとっては、 "あっ・・・!!!" という間の1年だったと思います。
今回は、同じように昨年技研で1年過ごし、さらにもう1年
ティーチングアシスタント(TA)として働きながら学び、より技術を高めた・・・?
新居(にい)君です。
それでは、2年間学んだ最終レポート!(主観的に!)
よろしくお願いいたします!
どうぞ~!
辻調理技術研究所ティーチング・アシスタント(TA)の新居寛章です。
研究所では普段、講習の助手や学生の賄いを作ったりしています。よろしくお願いします!
今回は。
じゃじゃ~ん!
イタリア料理といえば...やっぱり"ポモドーロ(トマト)"!!
前菜、スープ、パスタ、リゾット、メイン、時にはドルチェ(お菓子)にと引っ張りだこ。
今回はそんなトマトを使ったシンプルなソース、"salsa di pomodoro(サルサ・ディ・ポモドーロ)"を作りたいと思います。
え?トマトソースなら他の場所でも見たことある?
いえいえ、今回のsalsa di pomodoroは"一味"違います!
―――皆さま、スーパーなどへトマトを買い物に行ったとき、困ったことはありませんか?
...そう、種類が多いのです。
絵にかいたように大きいトマト。小ぶりのトマト。糖度の高い、やたらと高価なフルーツトマトにミニトマト。最近はカラフルなトマト、そしてマイクロトマトなども出てきています。
思いました。このトマトたち。それぞれでソースを作ってみるとどうなるのだろう。
安いトマトで美味しければ家計に嬉しい!高いトマトでもっと美味しければおもてなしにぴったり!
と言うことで、トマトの種類を変えてトマトソースを作ろうと思います...!
トマトごとにソースを作るので、文字通り一味違います。
と、生のトマトばかり紹介しましたが、いつも私たちが作っているトマトソースは、サンマルツァーノ種のトマトの缶詰。
「なぜ生のトマトではなく缶詰のトマトを使うの?」と言う疑問が・・・・。
理由としては、授業等で先生方から・・・、
・トマトの旬に大量に収穫し、一度に加工、そのため流通が安定していること
・味の個体差が少ないこと
・安価なこと
・缶詰のトマトは加熱用の品種改良されたものの為、おいしい・・・?
と学んだ覚えがあります。
缶詰のトマトは"旬の時期に収穫したトマト"を使っているのです!!つまり、どの缶詰でも旬のトマトのまま。あえて言うと毎日が旬なのです。真冬に缶詰を開けても、イタリアのカラッとした夏風が感じられるような...そうそれはParadiso(パラディーゾ:天国)...!
さてさて、前置きはこのくらいにして本題に戻ります。
生のトマトにも種類があり、缶詰のトマトにも種類があります。
それぞれのトマトで"salsa di pomodoro"を作るとどうなるのか。
そんな疑問にアタックしてみました!!!
今回使うトマトはこちら~。
まずはフレッシュチーム!!
いろんなところで目にする人気者です。トマトといえばコレ!と言う人も多いのでは?
実習では主にサラダとかフランス料理のトマトソースに使っています。
静岡のフルーツトマトとしてよく知られています。桃太郎よりも小ぶりですが、ほんとに甘い。
なんだこのトマトは...と思った方もいらっしゃるのでは。黒いですがれっきとしたトマトです。
サイズはミニトマトをご想像ください!
実は私も実物を見るのは初めてです。ネットなどの写真では、お皿を華やかにするために ちょこん と乗せているのをよく見ました。
そして缶詰チーム!!
こちらは"サンマルツァーノ"という品種のトマトの缶詰です。
普段私たちはこの缶詰を使ってイタリア料理のトマトソースを作ります。
【瓶詰ミニトマト】Pomodorini del "PIENNOLO"
缶詰ではないです...。ピエンノーロというミニトマトの瓶詰です。ミニトマトなので、トマト缶に入っているものより、小ぶりです。
役者が揃ったところで、まずは試食。
【桃太郎】
果肉が多く、時期的な物もあり少し色が薄め。
食べてみると、トマトの香りが優しく肉質はしっかり、みずみずしい。酸味も適度にあり、食べ慣れた味です。
【アメーラ】
桃太郎と比べると、少しゼリー部分が多く、色も濃いです。
こちらは先ほどよりも肉質は柔らかくジューシー。そしてフルーツトマトなので、酸味もありながら甘い。食感はしっかりしていて、皮も少し硬く感じました。
【黒トマト】
こちらは一番ゼリー部分が多いです。トマト自体小さいので1つまるまる食べました。
皮は硬くはありませんが、3つの中で一番しっかりした食感でした。
トマトの香りと少し青い香りがあり、触感はアメーラに似ています。味は桃太郎似よりもうま味がある感じがしました。
そして勿論、トマト缶と瓶詰ミニトマトも味見しました。
トマト缶を裏ごしして味見。...酸っぱい。そう感じた後にクッと下の少し奥あたりでうま味を感じます。先ほどの生のトマトではこれほどまでうま味を感じませんでした。瓶詰ミニトマトも同じようにして味見。こちらもトマト缶とほぼ同じ。しかし、トマト缶よりもうま味を強く感じました。
トマト缶・瓶詰はうま味の強い品種を使っているのかもしれません...。
それではトマトソースを作ります。
どんな味になるのかワクワクします。
鍋を火にかけ、オリーブ油とにんにくを投入。良い香りがしてきたら、みじん切りにした玉ねぎを入れます。
ここで少し塩をすると、玉ねぎの味が際立ち、炒める時間も短くなります。油が少なければ足します。
弱火でじっくりじっくり...焦げないように、たまに混ぜながら。
じっくり炒めた玉ねぎ。これがポイントですので、写真を。
しっかりとした茶色です。
ここまで炒めた玉ねぎは、本来の甘みが十分に引き出されています。
肝心のトマトですが...
缶詰のトマトたちは裏ごししました。
生のトマトたちは、皮を湯むきし、種を取り、粗みじんに切りました。
こちら!
左上から トマト缶を漉したもの・黒トマトのみじん切り・瓶詰ミニトマト
左下から 桃太郎のみじん切り・アメーラのみじん切り
これで準備完了...。
それでは!漸く!!トマトソースを作ります!!!
鍋に先ほどの炒めたにんにく・玉ねぎとトマト。そして少しの塩を入れ、火にかけます。
あ、忘れていました。トマトととても相性の良い香草、バジルを入れます。
これを入れることによりソースにバジルの香りが移り、より一層美味しくなります。葉っぱを入れてもいいのですが、料理に使える部分でもったいないので茎を入れます。
目安は約20分。そして、2/3ほどの量になるまで煮詰めます。
普段作っている方法を参考にして、煮込みました。
~煮ること20分~
トマトソースが完成しました!
それぞれ違いがあります。では、食べてみましょう。
【トマト缶】
食べ慣れているトマト缶から。
水分が飛び、どろっとした濃度に。トマトの酸味もしっかり感じられるソースになっています。
【瓶詰ミニトマト】
こちらもトマト缶と同じような状態。トマト缶よりも少し濃度が濃い気がします。
味わってみると、十分な酸味もありつつ、先ほどのトマト缶よりもガツンとくるうま味が印象的です。
そしてフレッシュチーム。
【桃太郎】
色が淡く、濃度も緩いです。生で食べたときにみずみずしく感じたので、トマト缶よりも水分が多いのだと思います。食べてみても水っぽく、もう少し煮詰めて水分を飛ばせばもっと美味しくなる気がします。
【アメーラ】
桃太郎よりは色が濃いです。濃度は少し緩め。
食べてみると...甘い!加熱し、煮詰めたので甘みが更に増しています。しかし、これが美味しいかと言われると、うーん...。生で食べたときは美味しかったのですが、加熱することによって全体的なバランスが崩れたソースになってしまいました。
【黒トマト】
黒トマトなので色は黒です。濃度は桃太郎と同じ感じ。
しかし、香りが違います。一口食べてみると、なんと、カレーのような香りがしました。香辛料が入っているような。味はしっかり酸味もうま味もあり、トマトソース。ですが、謎の香辛料の香り。一番の驚きです。
トマトの種類、缶詰の種類を変えるとこれほどまでに違いが出ました。
生のトマトは全体的に水っぽい印象がありました。なので、煮る時間を長くするか火を強くしてもっと煮詰めれば良いのかなと思いました。黒トマトを加熱してソースにすると、他のトマトと全く別物の香りが出てきたことに驚きました。黒トマトだけなのか、それとも他の色のトマトだと別の香りがするのか...謎は深まるばかりです。
5種類のトマトソースを作りました。私が一番美味しく感じたものは瓶詰ミニトマトのソースですね。普段のトマトソースと同じようですが、それよりもうま味が強く濃厚だったので、シンプルにパスタと和えるだけで美味しいだろうなと思いました。
そこで、番外編。
作ったトマトソースの中で一番のお気に入り、ミニトマトソースを使ってトマトパスタ、"Spaghetti al pomodoro"を作ってみます!
では早速。
トマトソースをフライパンに入れ、パスタを茹でます。
少し歯ごたえのある状態で、フライパンに。
和えます!!
...完成!!
と作ったところで、イタリア料理の神様、永作達宗先生が来てくださいました!
永作先生「...うん。ええんちゃう?」
と、褒めてくださいました。感激...!
私も試食したところ、いつも使っているトマト缶よりもうま味が強いため、味は濃く感じました。今回はパスタでしたが、野菜と和えたり、淡白な肉のソースにしたり...このミニトマトソースはピッタリだと感じました。
他にも、フレッシュトマトのソースでパスタを作ってみましたが、どれも少しパスタとの絡みつきがよくありませんでした。そして、火にかけ過ぎたからなのか酸味の角が取れ、穏やかになってしまい、味のバランスが崩れかけているような印象がありました。
しかしまずいわけではなく、冷製パスタという形にすれば美味しく食べられるのではと思いました。温かい状態で美味しく食べるには、缶詰のトマトと同じように裏ごしをして滑らかな状態にする。そして、表面積の広い鍋を使って水分を飛ばしやすくすれば、良い状態のトマトソースが出来るのではないかと思いました。
シンプルですが、だからこそ奥が深い...トマトソース。
今回は、イタリア料理のトマトソース"Salsa di pomodoro"を、いろんなトマトを使って作り、比べてみました。そして私が感じたのは、"そのトマトにはそのトマトに合ったソースの作り方があるのではないか"と言うこと。同じ食材でも種類を変えればこれだけ違いが出る。面白いです。
このコラムを読んで、興味を持っていただければ...そんな人が増えれば、将来的に「この料理はこのトマト、その料理はそのトマトを...」と、料理に合わせてトマトを変える。そんな素晴らしいお店が出来るのではないかと思っています。
そんなことよりもなによりも、一番の結論は...
"トマトは美味しい!!!"ということだと思います!!!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
さあ皆さま!
八百屋さんやスーパー、冷蔵庫で待っているトマトたちを迎えに行って、是非イタリア料理のトマトソース"Salsa di pomodoro"を作りましょう!
新居君、ご苦労様でした。個人的な意見も多々ありましたが・・・。
トマトから色々なことを学びましたね!トマトソースの煮詰め方やもう少し概論的なことも、
調べてくれたら・・・、☆3つでした。
あと、トマト売り場の写真・・・ちゃんと許可とりましたよね~。(頂いたそうです)
来年から職員として、色々なことを学ぶと思いますが、
好奇心を無くさず、しっかりと仕事してくださいね。BY イタリア好きのおっさんより