【百人一首と和菓子】恋燃ゆ
<【百人一首と和菓子】ってどんなコラム?>
お菓子について
歌に出てくるさしも草=よもぎを、外郎生地に混ぜて、内ぼかしに使いました。
言いたくても言えない恋心を、水紅色や本紅色に染めた生地で表わしました。
さらに、中央を尖らせることで、燃える思いを炎に見立てて表現しました。
豆辞典
51 藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)
平安時代の歌人です。生まれた年は、はっきりしませんが、西暦998年に亡くなったとき、40歳くらいだったといわれます。26番の歌の作者貞信公(ていしんこう)のひ孫にあたります。父親が早くに亡くなったので、叔父さんの養子となります。
舞が上手で、評判の歌人でした。当時の貴公子らしく、恋愛も派手だったようで、62番の歌の作者である清少納言(せいしょうなごん)の恋人だったこともあります。円融(えんゆう)天皇や花山(かざん)天皇の時代には、出世していますが、一条天皇になってからは、出世とは縁が遠くなったようです。1000年前も今と変わらず、権力者が変わると、その周囲の人間の地位にも影響は及びました。陸奥守(むつのかみ)となって東北に赴任し、都に帰ることなく亡くなりました。
さて、歌の方ですが、
「これほど、あなたに恋しています!」とさえ、言うことができないので、伊吹山のさしも草ではないけれども、あなたは「それほどまで」とは、ご存じないでしょう、私のこの燃える思いを。
というくらいの意味です。
「さしも草」はよもぎの別名で、お灸に使う「もぐさ」になります。伊吹山は滋賀県と岐阜県の境にある山で、薬草が取れる場所として古くから知られていました。
掛詞・縁語・序詞がさまざま使われています。古典の時間ではないですが、解説すると、「いふき」には「伊吹山」と「言ふ」が掛けられていて、「伊吹山」といえば薬草に連想が行くので「伊吹山」は「さしも草」に関係がある言葉です。そして、「いふきのさしも草」の部分が「さしも知らじな」を引き出す序詞であって、「もゆる思ひ」の「ひ」に「火」が掛けられていて、さらに、「さしも草」はもぐさになるので「燃える」や「火」に関係しています。
これほどまでに技巧をこらした歌ですが、肝心の恋心は、相手の女性に届いたのでしょうか。
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