【好吃(ハオチー)!中国料理】<医食同源> 精進料理のイメージチェンジ in台北
畑川:みなさん、お久しぶりです。
8月も後半となりましたが、まだまだ夏真っ盛りですね。
私も大阪で住むようになってから早10年経ちましたが、ここの夏は秋田県出身の私にとってはとても慣れません。
湿度と気温の高い環境で生活をするわけですから、健康に気を遣いながら過ごさないとあっという間にふさぎ込んでしまいます。
料理人の私は、まずは食事から気遣うようにしています。
今年の中国料理班のテーマは「健康と中国料理」。
今回のコラムは私が台湾で食べ歩きをした素食(スゥ シー)<精進料理>に関して書いてみようと思います。
日本人的な精進料理への発想を全て覆してくれる、素敵な衝撃を料理写真と共にお楽しみ下さいね♪
「素食(スゥ シー)<精進料理>」 ※素菜(スゥ ツァイ)も同義。
まずは素食(スゥ シー)<精進料理>とはなんぞや?との部分から説明していきましょう。
「素食(スゥ シー)」を日本語訳すると「精進料理」となり、材料は主に野菜、豆製品、各種キノコ、五穀類、デンプン加工品などを使用します。
日本ではお寺などで提供され、どちらかと言えば普段から口にすることは少ない料理ですね。
歴史を調べてみると起源はやはり中国にあり、前漢の時代にインドから伝来した仏教の教えとともに広まったとされているようです。(研究者の意見がわれているようで、先史時代の社会に起源があるとの説もあるようですが)
仏教の教えの中に「五戒」という信徒が遵守すべき戒めがあり、そのひとつに「不殺生戒(生あるものを害すなかれ)」があります。
この戒めこそが精進料理の起源と言われています。
現在では世界各国に広く認知されている食文化の一種となっている精進料理ですが、世界各国で共有する文化だからこそ考え方の違い(宗教上の戒律の違い)による様々なスタイルがあり、とあるコミュニティでは食べてOKな食物が、別のコミュニティではNGであったりします。
さて、なぜこのような問題が起こるのかと言いますと「不殺生戒(生あるものを害すなかれ)」の解釈の度合いが異なるからのようです。
今回のコラム用に資料を読んでいると、ある本には「不浄肉(直接手を下して得た肉や自身の為に屠殺された疑いのある肉)以外はOK。 ※実際には肉食してもOK」、「食肉以外にも香りの強い野菜(ニンニク、ラッキョウ、ネギ、ヒル、ニラ)もNG」や「生命の根源となる植物(球根を食す野菜)もNG」などなどなどと、本当に解釈の度合いの違いを垣間見ることが出来ました。
近年の健康志向の高まりによって普及している、宗教とは無関係のヘルシーフードとの混同も、線引きの難しさに一役買ってそうですね。
話は戻りまして、冒頭にお話していました「日本人的な精進料理への発想を全て覆してくれる、素敵な衝撃的な料理」に関してお話していきましょう。
まずは私が台北にて食べ歩きをしました料理写真を見ていただきます。
以下の料理は全て精進料理であることをお忘れなく!!
<鈺善閣・素・養生懐石 台北店>
写真(左):椒塩素魷魚条(ヂヤオ イエン スゥ ヨウ ユィ ティヤオ) <精進風イカ天のスパイシー炒め>
※イカの正体は何と凍みコンニャクでした。食感が抜群です!!
(凍みコンニャクとは冷凍したコンニャクを解凍し、鬆<す>が入ったものです。)
写真(右):素三絲魚翅湯(スゥ サン スー ユィ チー タン) <精進風ふかひれスープ>
※キノコ、タケノコ、精進鶏肉の細切りとハルサメが入って本物と見分けがつきませんでした。
ハルサメを固めに戻して使用することで、ふかひれのコリコリとした食感を出しています。
<法華園素食 内湖店>
写真(左):蠔油素牛肉(ハオ ヨウ スゥ ニュウ ロウ) <精進牛肉のオイスターソース炒め>
※精進牛肉の正体は「ヤマブシタケ」というキノコです。
乾燥したものを水戻しし、水分をよく絞った後に卵液に2晩漬け込み吸わせたものを調理します。
これだけ手間をかけることで、食感がまさに肉となっていました。
写真(右):生汁素火腿巻(ション ヂー スゥ フオ トェイ ヂュアン) <精進ハムの巻き揚げ マヨネーズソース>
※精進ハムの正体は「湯葉」です。極細麺で巻き揚げにし、食感がとても良かった一品です。
写真(左):素糖醋肉(スゥ タン ツゥ ロウ) <精進風黒酢酢豚>
※大豆たんぱく加工製品を肉の代わりに使用した黒酢酢豚でした。
写真(右):奶油焗錦菇(ナイ ヨウ ヂュイ チン グゥ) <いろどりキノコのミルクグラタン>
※こちらのお店では無性卵や牛乳は使用しているとのことでした。
写真:素東坡肉(スゥ トン ポー ロウ) <精進風トンポーロー>
※豚バラ肉の赤身と脂身の層は揚げ麩、シイタケを重ね、かんぴょうで巻いて表現しています。
味も濃厚で、本物に匹敵する美味しさでした。
いかがでしたでしょうか?
これが精進料理??と写真からでも感じますよね。
実際に目の前に出されて食べるとその美味しさにも驚かされます。
このような料理を提供するレストランは台北では当たり前のように多く、大通りを歩くと必ず「素食」の看板が目につきます。
さらには市場やスーパーに行っても何の違和感もなく精進食品が販売され、インスタント食品にすら精進用があるのにも驚かされました。
台北では普段使いのレストランでも精進料理が提供されているのですから日本とは大きく違いますよね。
また、食べる人々の考え方の違いもさることながら、日本の精進料理と中国料理のとの大きな違いは、その形状にもあります。
私は中国料理の場合は「擬製(もどき)」にこだわりを持っているように感じました。
「肉の食感をした○○」、「魚の形をした○○」などと言うようにです。
中国の方々の食への探究心が(欲望に近いものがあるかも知れませんが)材料と調理法の枠を飛び出して、より本物に近いものを作り出そうと知恵と技術を折り重ねた結果が今日の素晴らしい素食(スゥ シー)<精進料理>を生み出したのでしょうね。
台北の魅力の一つと言っても過言ではない素食(スゥ シー)<精進料理>をぜひとも皆さんにも試してもらいたいものです。
元々は宗教的な起こりではありましたが、現在ではそれに留まらずに健康を意識した人々、美を意識する女性など様々なニーズがあります。
さらには中国料理ではこれと並行して、漢方を取り入れた「薬食・薬膳」があります。
この二つの食文化を理解してこそ「医食同源」となり、本当の健康へ至るのではないかと畑川は考えます。
もちろん日本でもこのようなレストランはありますので、どうぞご近所のレストランを検索してみて下さいね!
素敵な驚きが皆さんを待っているはずですよ。
最後に今回、レシピ紹介をする料理の写真を載せておきます。
さてどちらが本物か見分けがつきますかね?
片方はウナギでもう一方は干しシイタケを戻して作った料理ですよ!
芫爆鰻魚絲(イエン パオ マン ユィ スー) <ウナギと香菜の強火炒め>
正解はレシピをご確認下さい♪