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【独逸見聞録】加工糖の形状と用途 ~砂糖(其の弐)~

13<海外>独逸見聞録

2016.04.06

<【独逸見聞録】ってどんなコラム?>


食品売り場の棚に並べられている砂糖には、数え上げると切りがない程の種類がある。その多くは、日本のグラニュー糖に相当する「ラフィナーデ(Raffinade)」別名「クリスタルツッカー(Kristallzucker)」と、その加工品である。因みに、日本では「上白糖」が一般的であるが、こちらで見掛けることはない。
家庭用砂糖類の包装は比較的簡易で、紙製の袋や箱がその多くを占める。500g入りの他、1kgや250g入りもある。
今回は、製菓・製パンなどで良く利用される「粉砂糖」や「あられ糖」の他、温かい飲み物に添えられる「角砂糖」など、加工糖を中心に紹介する。

★プーダーツッカー(Puderzucker)
プーダーツッカーは、極細かく挽かれたラフィナーデで、個々の結晶は殆ど感じ取れない。
オーストリアやバイエルン地方などでは、シュタウプツッカー(Staubzucker)とも呼ばれる。
これらの名称は、粉砂糖が「粉末(Puder:プーダー)」または「塵(Staub:シュタウプ)」に似た状態になるまで、非常に細かく挽かれていることを的確に表現している。

プーダーツッカーは湿気を取り込む傾向があるので、水分を吸収して固まり、ダマになり易い。
これを防ぐために、少量のデンプン(Stärke:シュテルケ)が添加されている製品もある。

パンや菓子の生地やクリームに混ぜ込んだり、デザート(Dessert:デセーァ)の上に振り掛けたり、糖衣(Glasur:グラズーア)の材料に利用したり、マジパン(Marzipan:マルツィパン)を加工したりなど、用途は非常に多い。
但し温度や湿度に敏感なので、仕上げとして利用する際には、その点に注意が必要である。

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プーダーツッカー(Puderzucker)は、粉雪の様な微細な粒子の粉砂糖。

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プーダーツッカー(Puderzucker):最初は底に沈むが、掻き混ぜると簡単に水に溶ける。

☆デコーァプーダー(Dekorpuder)
デコーァプーダーは、ヤシ油(Palmöl:パルムエール)などの植物性油やデンプンで加工された業務用の粉砂糖で、通常のプーダーツッカーと比べると、温度や湿度に左右され難い。
こうして周囲の湿気による溶解から守られているので、パンや菓子の仕上げに特化している。 例えば、クリストシュトレン(Christstollen)やテーゲベック(Teegebäck)の様に、比較的長期間貯蔵される菓子にも利用される。
その反面、生地やクリームに混ぜ込むのには適していない。

デコーァプーダーは、甘い雪を意味する「Süßer Schnee:ジューサー・シュネー」とも呼ばれる。

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デコーァプーダー(Dekorpuder:最初は水面に浮き、掻き混ぜても溶けない。

★ハーゲルツッカー(Hagelzucker)
ハーゲルツッカーは、複数の結晶が互いにくっ付き合った粗い粒状の砂糖で、その名称は「あられ(霰)」に似た外観に由来する。
湿らせたラフィナーデを圧縮して乾燥させる。この塊は、その後あられ粒の大きさに突き砕かれる。

ハーゲルツッカーは、パンや菓子の飾りとして利用されることが多く、編みパン(Hefezopf:ヘーフェツォップフ)などを焼成する前に振り掛けられる。
基本的には、焼いても溶け出さずにその白い姿を保つ。

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ハーゲルツッカー(Hagelzucker)は、「あられ(霰)」に似た粗い粒状の砂糖。

☆ジューサー・ハーゲル(Süßer Hagel)
ジューサー・ハーゲルは、ヤシ油などの植物性油で表面が加工された業務用のあられ糖で、通常のハーゲルツッカーよりも、更に溶け難くなっている。
こうして周囲の湿気による溶解から守られているので、パンや菓子の仕上げに特化している。
使用方法は、ハーゲルツッカーと同様である。
焼いても溶け出さずにその白い姿を保つ。

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家庭用のハーゲルツッカー(Hagelzucker)と、業務用のジューサー・ハーゲル(Süßer Hagel)。
この2つの砂糖を、外観だけで区別するのは困難である。

★ヴュルフェルツッカー(Würfelzucker)
ヴュルフェルツッカーは、湿らせたラフィナーデを、大抵の場合「直方体(Quader:クヴァーダー)」、稀に「立方体(Würfel:ヴュルフェル)」に押し固め、その後乾燥させた角砂糖である。
同様に、大きな板状に圧縮、乾燥させた後、サイコロ状に切り分けることもできる。
スイスでは、シュトゥッケンツッカー(Stückenzucker)とも呼ばれる。

ドイツで一般に販売されているヴュルフェルツッカー1個の重さは約3gで、辺の長さが16.16mm×11mmの直方体である。
直方体、または他の形に押し固められた製品の様に、サイコロ形(立方体)でない場合でも、同等の大きさであれば「ヴュルフェルツッカー」の名称が、総称として用いられる。

通常の家庭用砂糖(Haushaltszucker:ハウスハルツツッカー)に対する、ヴュルフェルツッカーの長所は、簡単に適正量を計量できることと、湿気を吸収しないので、保存の際にダマにならないことである。

主に、お茶(Tee:テー)、コーヒー(Kaffee:カフェー)など、香りを楽しむ熱い飲み物(Heißgetränk:ハイスゲトレンク)に甘みを付けるのに利用される。
焼きリンゴ(Bratapfel:ブラートアプフェル)の開口部や、アプリコットの団子菓子(Marillenknödel:マリレンクネーデル)の中に詰めるのにも用いられる。

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ヴュルフェルツッカー(Würfelzucker)は、しっかりと角のある直方体の角砂糖。

☆グリュクスツッカー(Glückszucker)
グリュックスツッカーも、一般的なヴュルフェルツッカーと同様に作られる。
湿らせたラフィナーデを、型に入れて押し固め、その後乾燥させる。
典型的な角砂糖と異なるのは、トランプのモチーフであるハート(Herz:へァルツ)、スペード(Pik:ピック)、クローバー(Kreuz:クロイツ)とダイヤ(Karo:カーロ)に倣った、特別な型が用いられることである。
因みに、グリュック(Glück)とは、幸運や幸福のことである。

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グリュックスツッカー(Glückszucker)は、トランプのマークの型で抜いてある。

☆ブラウナー・ヴュルフェルツッカー(Würfelzucker)
ブラウナー・ヴュルフェルツッカーは、ブラウン・シュガー(Brauner Zucker:ブラウナー・ツッカー)から作られる茶色の角砂糖である。名前通りの「立方体」の他、大きな砂糖の塊を突き崩した様な、個々の形や大きさが不規則な製品もある。

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ブラウナー・ヴュルフェルローァツッカー(Brauner Würfelrohrzucker)は、サトウキビ由来の
ブラウン・シュガーの立方体の角砂糖。右端の様に、個々の形や大きさが不規則な製品もある。

★ツッカーフート(Zuckerhut)
ツッカーフートは、湿らせたラフィナーデを、尖端が丸くなった円錐形の型に入れて押し固め、その後乾燥させた砂糖である。

円錐の角度は10~30度で、家庭用ツッカーフートの高さは約15cmである。
この名称は、祝いや公式の場で被られた様な、高さがあって糊付けされた硬い「帽子(Hut:フート)」に似ていることに由来している。
スイスでは、ツッカーシュトック(Zuckerstock)とも呼ばれる。

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ツッカーフート(Zuckerhut)は、尖端の丸まった円錐形。家庭用の高さは約15cm。

ツッカーフートは、以前は砂糖を販売する際の一般的な形状であった。現在では、寒い季節に好まれる「フォイアーツァンゲンボウレ(Feuerzangenbowle)」という名前の、熱いアルコール飲料の材料としてのみ用いられている。

この円錐形の型は、砂糖を結晶化させるための容器で、尖端には小さな穴が開いていた。サトウキビを煮詰めたシロップを、型の縁まで注いだ。砂糖が結晶化して凝固する間に、非糖分を含む液体が流れ出した。型の尖端が丸くなっているお陰で、冷却の際に収縮して容器の内壁から剥がれ、円錐形の砂糖の塊が滑り出した。その重量は、11~17kgもあったという。

20世紀初期まで、入手可能な砂糖は唯一この形のみだったので、使用する際には、先ず小さく砕かなくてはならなかった。
ツッカーフートは非常に堅固だったので、砂糖専用のハンマー(Zuckerhammer:ツッカーハマー)や、ペンチ(Zange:ツァンゲ)が使用された。

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左は、金属製のフォイアーツァンゲ(Feuerzange)。
右は、待降節から公現節までの行事に合わせた料理や菓子、飲み物を紹介した「Es weihnachtet sehr」という本に掲載されている「フォイアーツァンゲンボウレ(Feuerzangenboule)」の頁。

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フォイアーツァンゲは鍋の上に、架ける様に乗せ、その上にツッカーフートを寝かせる様に置く。

◆フォイアーツァンゲンボウレ(Feuerzangenbowle)
主な材料は、赤ワイン(Rotwein:ロートヴァイン)、オレンジ(Orange:オーランジェ)とレモン(Zitrone:ツィトローネ)、グローブ(Gewürznelke:ゲヴュルツネルケ)やシナモンスティック(Zimtstange:ツィムトシュタンゲ)などの香辛料、54%のラム酒(Rum:ルム)、ツッカーフートである。

フォイアーツァンゲ(Feuerzange)とは、「火ばさみ」または「炉ばし」のことで、この上にツッカーフートを乗せて、アルコール度数の高いラム酒を浸み込ませて火を点ける。
熱によって溶けた砂糖が、金属製のフォイアーツァンゲ中央の切れ目から、その下に置かれているボウレ(Bowle)の中に滴る仕組みである。

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Kimiko Kochs

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