【日本料理一年生】 47時間目 子芋の煮っころがし
<【日本料理一年生】ってどんなコラム?>
●子芋の煮っころがし●
今回は、日本料理の中でも、基本的な料理「子芋の煮っころがし」についてお話します。
「子芋の煮っころがし」は、子芋をある程度煮てから煮汁を煮詰め、子芋の表面に煮汁を絡ませるように鍋の上を転がして煮上げる方法です。子芋には味が染み込みにくいため、このような方法を使います。子芋自体は薄味ですが、表面に調味料が絡んでいるため味を濃く感じ、子芋全体を食べるとちょうどよい味になります。主婦が夕刻に買い物に行ってから、御主人が帰宅するまでに急いで作っても、夕飯には間に合うといった家庭料理の手法です。
料理屋で子芋を煮るときは、子芋の白い色を大切にするために「含め煮」という手法を使います。薄味の煮汁で軽く煮た後、煮汁につけたまま冷めるまで置いておき、お客に提供するときに再度温めてお出しします。一度煮たものを冷まし、さらに温めることで、味が染み込みにくい子芋でも中までちゃんと味が染み込みます。
煮物の種類は非常に多く、手法、形態、特徴的に使う調味料などによって、料理名がつけられています。ほかにも、主となる材料に関係ある地名や、ときには駄洒落?と思うような料理名がついているものもあります。「煮っころがし」や「含め煮」は、手法によって名前がついていますが、このほかどんな種類があるのか、少しご紹介しましょう。
まず、仕上がりの形から名づけられたものには、伊勢海老の殻を鎧に見立てた「伊勢海老具足煮」や、筒烏賊の胴の部分に具材を詰め込んで煮た「烏賊印籠煮」などがあります。
使用する調味料によって名づけられたものには、「味噌煮」があります。鯖などの背の青い魚を煮るときは、臭みを取るために「味噌煮」にします。このほか、鮎やもろこなどを使う「甘露煮」も同じ種類です。
地方名によって名づけられたものには、「土佐煮」や「筑前煮」があります。筍を煮るときは淡白な筍に旨味をさらに加えるために、鰹節をガーゼに包んで一緒に煮ます。鰹節の産地が土佐(現在の高知県)であるため「筍土佐煮」といいます。
最後に、駄洒落?のような名前に「従兄弟煮・いとこに」というのがあります。これは、小豆、南瓜、牛蒡、里芋、大根、豆腐などを一緒に煮て、醤油や味噌で味を調えたものですが、用いる材料の火の通り加減が、すべて異なるため、火の通りにくいものから順番に時間差をつけて煮ていきます。つまり材料を「追々(おいおい)」入れて煮るのです。この「追々」を、「甥甥」という言葉に掛けて、甥と甥は従兄弟同士であるから「従兄弟煮」という名前になったといわれます。
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