毎日新聞連載 -美食地質学入門- 第22講「関サバ」
1月7日(火)の毎日新聞(夕刊)に「美食地質学入門」が掲載されました。
テーマ食材は「関サバ」。
何か言いたげな関サバですが、漁法に始まり徹底した品質管理を行うことで、刺身で食べられるほどに鮮度を保ったサバとしてブランド化に成功し、それを維持してきた。
「関サバ」を名乗る条件は、
1.佐賀関の組合員が一本釣りしたもの
網ではなく、釣りで獲ることで魚体を傷めず、併せて資源の管理を行う。
2.漁場は豊後水道(豊予海峡)の「速吸(はやすい)の瀬戸」
豊後水道の中で水路が一番狭い豊予(ほうよ)海峡に住み着いた瀬付きのサバ。流れの速いこの瀬に住み着くのはエサが豊富にあるということ、結果身のしまりがよくなるということに繋がる。
3.エサの制限、疑似餌かゴカイだけ。まきえの禁止
アミなどが魚に悪臭をつけないように、速吸のエサ以外を食べさせないように。
4.面(つら)買い
生け簀で生きたまま佐賀関漁港へ、魚が傷まないようにそのまま泳いでいるものを見て重さを見極め値決め、生け簀で1日休ませて魚が暴れないように活け絞め、神経抜きして出荷。
5.佐賀関から出荷されたもので専用のパウチと証明のタグシール付き
1996年に水産品として全国初となる商標登録。ブランドを作り上げるのも大変だが、守っていくことはもっと大変。
ところが、漁獲量がピーク時に比べて1/5にまで減っている「関サバ」。
原因は、他の漁業による資源の減少や漁師不足の影響と言われているが・・・。
今回は大分市のご協力で数少ない800gサイズの関サバを揃えていただき、地質学との関係についての対談となりました。
巽先生には豊予海峡が出来たいきさつと、その流れの早さの訳をわかりやすくご説明いただきました。
料理担当は辻カフェ&パティスリーマスターカレッジのフランス料理 片山祐子先生
通常なら日本料理で、となるところですが、大引先生は片山先生を指名。
さらに合わせるお酒が焼酎ということで、悩みどころ満載です。
(中段左)アミューズ:盛り合わせ
(手前、中段右)オードブル
(上)メイン
アミューズ:
▲左から「リエット」、「燻製サラダ」、「エスカベッシュ」
オードブル:
▲「関サバと大分産干し椎茸のブラックオリーブ焼き」
椎茸はこれも大分産の冬菇椎茸。
農林水産大臣賞を受賞した肉厚の椎茸に関サバのミンチを詰めたもの。
▲「関サバのマリネ きんかんのチャツネ添え」
関サバはアニサキスの寄生の恐れが少ないとも言われていますが、念のため冷凍してからこれも大分のカボスでマリネ
メイン:
▲「関サバのポワレとコンソメ」
下に十六穀米を置き、上に関サバのポワレ、ここにサバの頭とあらでとったコンソメを注ぎ...。
今回は日本酒ではなく、麦焼酎を合わせて。
四ツ谷酒造場有限会社さんから、宇佐むぎと焼酎屋 兼八をご提供いただきました。
▲左)宇佐むぎ;味と香りの調和を大切にし、やわらかくて、きれいな飲み口の焼酎。軽やかな中にも奥床しい味わいが潜む気品ある酒質。
右)焼酎屋 兼八(かねはち);麦本来の香りと味を最大限に引き出すよう努力し、既存の麦焼酎とは一線を画す香ばしい麦の香りと深みある味が楽しめる本格派麦焼酎。
いつもお酒でお世話になっている三井酒店の三井さんのアドバイスで、どちらも冷水割で焼酎が6・冷水が4で
前日に加水して冷蔵庫で保存おき、
冷たい状態で一口、それを湯煎で温めて前割燗、そしてロックでと料理に合わせて・・・。
見事な関サバのフレンチとのハーモニーに、「速吸(はやすい)の瀬戸」のごとくピッチも速く見ている方が先に陶酔してしまいそうな。
対談の詳しい内容は、新聞紙上及び毎日新聞ホームページをご確認ください。
次回のテーマは「レンコン」。
どうぞお楽しみに。