和食WEBマガジンWA・TO・BI 日本料理のことば「砧巻き(きぬたまき)」
『あまから手帖』による料理人のための和食専用ウェブマガジン「WA・TO・BI」では、最新の調理技術、大切にされてきた古い仕事、生産者による食材紹介、日本の酒のこと、うつわの知識、雑学など、日本料理にまつわる旬の話題が日々更新されています。
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辻調はそのなかで、「日本料理のことば」を担当し、月に1度「へぇ~」と思える語源由来を紹介しています。
2024年6月のテーマは「砧巻き(きぬたまき)」。
大根や独活(ウド)、湯葉など、布や衣のように薄くやわらかい状態にした食材で巻いた料理を「砧巻き(きぬたまき)」と呼びます。では、なぜ「薄くてやわらかいもの」を砧と呼ぶのでしょう?そこには現代では見られなくなった"布打ち"の情景と関係がありました。
●ことばのコラムへのリンク● 日本料理のことば ―砧巻き(きぬたまき)
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コラムでは、砧ということばや砧打ちのあれこれについて解説しています。
砧打ちは明治時代以降、紡織が工業化するとともに、すっかり失われた情景です。お店で、お客さんから「砧って何ですか?」と聞かれたとしたら、うまく説明できるでしょうか。今回のコラムは、イラストにも注目です。
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コラムに合わせて、今回ご紹介した料理は「鱚と胡瓜の砧巻き」。
昆布じめしたキスに青じそをのせ、桂むきにしたきゅうりで巻き、梅肉を天に盛った一品です。
料理写真(上)撮影:東谷幸一さん
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料理制作を担当したのは、日本料理の小川健先生(辻調理師専門学校)です。
砧巻きという料理名であるからには、材料をわざわざ薄く切ってやわらかくする工程が欠かせません。
それを芯となる材料に巻きつけるのが一般的。
味については、酢にあてたものが多いので、なますの一種という感じです。包丁技術も高度で、結構手間がかかるので、ある意味で"料理屋仕様の"なますとも言えそう。記事中では、料理人の方からのお悩みである「巻く材料が波打ってしまって困る」という質問についても、小川先生がアドバイスをしています。
今回の撮影では、日本料理の堀井翔先生が、調理工程を担当しました。
実はこれぐらいの距離から、様子をうかがっていた小川先生。
ちなみに「砧打ち」を検索すると、いろんな芸術のモチーフになっているのが分かります。例えば、葛飾応為の「月下砧打ち美人図」(江戸時代19c)は写実性が高くて、ドラマティック。東京国立博物館研究情報アーカイブズ(https://webarchives.tnm.jp/)のこちらで検索できます。料理名の砧巻きが、別の方面の興味を想起させてくれるのは面白いですね。