ポール&ジャン=ピエール・エーベルラン 『エーベルラン兄弟のアルザス料理』 柴田書店 1983年
オーベルジュ・ド・リルで提供している料理を中心に、ポールのレシピをまとめた著作。アルザス地方独特の料理が多くとり入れられている。 |
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彼<ポール・エーベルラン>がとりわけ好むのは、土地の産物を使った料理である。それで猟鳥を喜んで料理するし、また魚も彼を熱中させる。ただし、魚は現在、この地方の河が汚染されてからというもの、輸入せざるをえなくなっているのだが。
ポールはヌーヴェル・キュイジーヌには無関心であるといってよい。
「私の就いた料理長ヴェベール氏は、自らの手書きの料理の作り方の本をくれました。それには彼がロシアで作っていた料理が多かった。例えば「キャサリン大帝のサラダ」Salade
Catherine de Grande(フォワ・グラとさやいんげんのサラダ)というのがありますが、これが現在まるであたらしい着想であるかのように話されているのです」。ポールの主張によると、現代人は昔のようにたくさん食べられないので、シェフたちはただ昔の料理を簡素化しようとしているのにすぎない、ということである。「ただし、おいしいソースが欲しければ、クリームとバターを使わなくてはならないのですよ」。食事はだいぶ軽くなってはいるが、伝統的な基本には変わりがないのである。
(クエンチン・クルー著『フランスの大料理長たち』 三洋出版貿易株式会社1983年)
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