肥田 |
まずはアペリティフに、リースリングとアルザス名物クグロフをどうぞ。これは甘くないクグロフで、ベーコン入り。クグロフはシュクレ(甘味)でもサレ(塩味)でもアルザスワインといっしょに食べるものなんです。さて今回は、ポールとジャン=ピエールのエーベルラン兄弟、そして息子マルクのレストラン、オーベルジュ・ド・リルの料理を作りました。 |
西川 |
オーベルジュ・ド・リルのサービスは家庭的で、温かい雰囲気だとよくいわれますけど、本当に格式ばっていなくて、客がリラックスして料理を楽しめる所ですよね。 |
肥田 |
そうですね。例えば、昼食の客でも、3時くらいにテラスに移って、食後のコーヒーを何回もおかわりしてゆっくりくつろぐ人が多かったですね。僕ら従業員は4時頃に一回休憩するんですが、6時ころ戻ってきたらまだ昼の客がいる。8時前に夜の客がきてアペリティフを飲み始めたころにやっと帰りかけるんですからびっくりしました。 |
西川 |
兄のポールとその息子のマルクが料理人で、弟のジャン=ピエールがサービス担当。マルクの妹のダニエルも夫君のマルコといっしょに手伝ったりしていたそうですね。以前はポールとジャン=ピエールのお母さんや伯母さんも料理したりサービスしたり。代々家族ぐるみで協力してきた、そういういい雰囲気が客にも伝わってくるんでしょう。 |
肥田 |
僕が研修に行ったころでも店を開ける前にマルクのお祖母さんが花をいけたりしてました。今年(2000年)はストラスブールでMOFの料理部門の大会があって、今のオーベルジュ・ド・リルのメートル・ドテル(給仕長)がサービス部門でMOFを受賞しましたよ。 |
西川 |
へえ、そりゃすごい。そういえば、あそこはソムリエも、フランスとかヨーロッパのソムリエコンクールで優勝したことのある人でしょう。 |
肥田 |
セルジュ・デュプスさん。1989年には、世界最優秀ソムリエコンクールに優勝しました。私がいた当時はまだ勉強中という感じで、いつもワインカーヴの入口の所にいて、ワインに気を使ってか、蝋燭の光で勉強していたのが忘れられないなぁ。彼もアルザス出身で、穏やかな性格の絶対あわてるということのない人でした。 |