「若菜摘む」と言う言葉から、この歌は正月の歌だとわかります。旧暦のお正月は、現在の2月頃。まだ、寒ながら春を感じるころです。
七草は「七草の節句」の略であり、「人日(じんじつ)」とか「若菜の節」ともいわれます。中国では、前漢の時代、東方朔が記した占いの書に、正月1日に鶏、2日に狗、3日に羊、4日に猪、5日に牛、6日に馬、7
日に人、8日に穀を占ってその日が晴天ならば吉、雨天ならば凶の兆しであるとされています。
7日の人の日には邪気を祓うために、七草の入った粥を食べ、一年の無事を祈ったのだともいわれています。日本でもその歴史は古く、延暦23(804)年の「天皇神宮歴史帳」にその記録が残っています。
平安時代には春の七草は「若菜」とか「春の草」と呼ばれていました。当時七草粥は「七種粥」、つまり七種の穀物で作られたという説もあります。入っていたものは「米、粟、きび、ひえ、みの、胡麻、小豆」で、現在、七草として知られている「せり、なずな、ごきょう、はこべら、仏の座、すずな、すずしろ」が使われるようになったのは鎌倉時代になってからのようです。
古来、宮中や神社でもこの日七種の野草を摘む行事を「若菜摘み」といい、これらが入った粥を食べると、邪気が払われ万病が除かれると信じられていました。
さて、お菓子の方ですが、私達に関係の深い「七草の節句」をイメージして作りました。
薯蕷生地には、若菜(みぶ菜)を使い、衣の袖に見立て焼き印で模様を付けました。きんとんのそぼろは、早春の草花に見立て、細かく裏ごした薯蕷練切を散らしています。この菓子全体で、初春の野原を表現しました。
定岡 宏和