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学生60名ほどを引率して北京・上海卒業旅行に行ったのは、SARSが騒がれる直前の2003年3月でした。海外旅行と言えば、10年前に辻調の学生時代に訪れた香港・台湾と新婚旅行でハワイに行った事があるぐらいで、今回は中国本土、しかも、オリンピック開催が決まって急成長を遂げている北京、中国の最先端を走る上海の二大都市なので、とても興奮したのを覚えています。が、実は、帰国した翌日が引越しだったので、旅行の準備よりも、引越しのために荷物をダンボールに詰め込むほうが大変で、本当に忙しかったです。
そんな中、北京に飛び立ちました。空港に着いて市内へ向かう外環をバスでの移動中の事です。郊外を走っていると信号待ちで、ふと公園を見れば、体長30cm位の尾の長い鳥が飛んでいるじゃないですか。しかも青色。これって、もしかして「幸せの青い鳥」? 水彩画か何かで見た事があるものの、子供たちが遊んでいる公園にいるなんて驚き半分、なんだか良い事があるかもと嬉しさと幸せ半分、期待が高まります。
今回はそんな、幸先の良い北京での話を紹介します。市内に近づくにつれ、交通量も多くなり、マナーの悪さ、と言うか強気の運転に冷や冷やです。少しでも車間があればぶつかるすれすれを割り込んできます。バスの高い座席から見ているせいなのか、無意識にバスの中で体を捩らせてよけていました(笑)。不思議なもので、そんな運転マナーにもすぐに慣れてしまいましたが。
ホテルに着き一息つく頃には、もう夕食の時間。その夜は故宮の隣、北海公園にある「膳飯荘」です。この店は御膳房(宮中の調理場)で働いていた料理人が集まって1925年「膳茶社」としてオープンし、1955年に「膳飯荘」と改名したのです。御膳(皇帝の食事)を(まねる)という店の名前の通り宮廷料理が食べられるのです。しかも、今日は「満漢全席」とあって、わくわくしながら店に向かう湖沿いの回廊を歩いていると、天井にはきれいな画が。よく見ると、「あっ!ここにも幸せの青い鳥」、なんだか益々期待が膨らみます。
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部屋に入ると、いにしえの響きをもった琵琶の演奏と宮廷衣装をまとった女性の踊りで歓迎です。お茶の作法が披露された後、前菜から順番に次々と料理が運ばれてきます。特に印象深かったのは子豚の丸焼きでした。以前、香港で食べた事がありましたが、また食べられるなんて。香港のときとは違って、子豚を板状に開いてあるのではなく、ちょうどうずくまった状態で焼かれており、頭も開かず丸のまま。ちょっとリアルでかわいそうと思うものの、やっぱりおいしそうです。サービスされた薄い皮を食べてみるとパリパリッと香ばしくとてもおいしかったです。
さっきのかわいそうは何処へ・・・・・・。
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次に料理人が麺台かと思えばベニヤ板を運んできて、何が始まるのかと見ていると、龍鬚麺(龍のヒゲのように細い麺)の実演です。太さが10cm位ある棒状の生地の塊を伸ばしていき、伸ばしては両端をひとつにくっつけ、また伸ばすという作業を繰り返します。まるで綾取りでもしているような動きのなかで生地はどんどん細くなっていき、最終的には裁縫の糸のようになりました。しかも、全く切れていないのです。
私も挑戦した事があるだけに、無駄のない動き、溢れるスピード感、出来上がった麺の細さにひとしお感心していました。ちなみに私が伸ばした麺はうどん位の太さで、しかもその太さがバラバラ、さらに切れているものもありました。しばらくすると何品かの甘い点心と一緒に、揚げて砂糖がかかった龍鬚麺が出てきました。バリバリとした歯ざわりのシンプルなものでした。
宮廷料理がテーブル一杯に出され、自分がスーツを着ているのに違和感があるような、時代は清、タイムスリップしたような錯覚を覚える店の雰囲気とサービス人の衣装など、とても幸せな気分と贅沢を感じました。まさに口福、幸福。やはりあの時見た「青い鳥」のおかげ?
そんな事を感じて、帰国してから調べてみると、中国で幸せの鳥といえばコウモリが挙げられます。中国語で蝙蝠(ピェンフー)といい、蝠と福が同音なのです。中国の食器や絵でコウモリが描かれているのを見たことがありませんか。5匹のコウモリは五福(長寿、富貴、健康、徳行、天寿)を指すと、とりわけ喜ばれているのです。
それにしてもあの青い鳥の優雅なさまを思い浮かべると、北京旅行の楽しかった日々がよみがえってきます。 |
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現在、私は中国点心を教えています。学生時代を含めると料理を始めて12年が経ちましたが、点心に興味を持ったのは、実家を離れて辻調理師専門学校に通い出し、大阪の生活にもやっと慣れた6月の初め頃です。その当時は飲茶など一般的ではなく、「点心」の意味さえ知らず、食べた事があると言えば餃子や肉まんで、焼売さえ見た事がなかったのです。当然ちまきなんて知りませんでした。そんな時、点心の授業があり、初めてみる品々に驚き、叉焼包(焼き豚饅頭)など小麦粉を使った点心が、手際よく流れるように出来上がっていく様子を見て、手先を使うのが好きだった私は、すぐに興味を持ちました。連休に実家に帰っては、学校で学んだメニューをよく作ったものです。
家でも簡単に作れそうな点心を作っていくうちに中国料理が好きになり、次第にその奥深さにはまっていきました。そんな私ですが、入学当初はフランス料理をしようと思っていたのですよ。 |
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当時を思い出しながら、これからこのコーナーで家でも作れそうな点心をご紹介していきたいと思います。今回は「栗と豚肉のちまき」です。ちまきと言えば、学生時代に作ろうと思いたったのはよかったのですが、包む皮がないのに気づきました。竹の皮などもありません。ふと庭先を見ると、おすし屋さんで使う葉蘭が目にとまり、これはいけると思いました。しかし、葉脈がかたくて包んでいくのがひと苦労でした。出来上がったものはおいしかったです。後で分かったのですが、竹の皮はスーパーで売っているのですね。お弁当グッズのコーナーに・・・。そんな懐かしい思い出のあるちまきです。皆さんも一度作ってみてください。 |
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