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今までは本校の先生方の思い出話とか料理にまつわる話、歳時記等の話が中心でしたが、今年は日常を振り返り、例えば「チャーハンをパラパラに上手に作りたい」とか「プリプリエビチリを作りたい」とか、より具体的、実践的な内容でお贈りします。つまり、ある料理にスポットを当てそれに関する疑問に答え、どのようにしたらより美味しくなるかを考えます。けっして難しいことはないのですが。 |
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今回の「好吃(ハオチー)!中国料理!」は、基本中の基本「中華鍋」にスポットを当てたいと思います。一家にひとつ、かならず中華鍋はあると思いますが、どう扱っていいのでしょうか?そもそも中華鍋はなぜ丸いのでしょう?なぜ鉄なのか?そんな疑問を今回レシピ担当の「四川の貴公子」こと船渡先生に聞いてみたいと思います。質問者は今回も「上海の兄やん」こと塘です。今回の話を聞くと明日から中華鍋を手放せなくなるかもしれません。
塘:
中華鍋はなぜ丸いの?
船渡:
調理用具の形には意味があります。特に鍋は火口の形と関連があります。中国料理は元々竈なので火口が丸く、だから鍋もすんなり収まりがつくように丸いのです。また丸い形は熱効率もよく、しかも均一に熱を伝える事ができます(図1、2)。辻調中国料理班で使用する中華鍋ですが、20年間使い続けているものがあります。中華鍋は、現在鉄板を機械でプレスして作ったりもしますが、昔ながらの金鎚で叩き、打ち出して作ったものも健在です。それらは叩く事により、鉄が固くしまり、また丸い形は外からの力に強く、へこみにくいのでかなり長持ちします。
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図1 普通の鍋 底が平たい 鍋の温度にムラができる |
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図2 中華鍋 底が丸い ムラなく均一に熱くなる |
塘:
なぜ鉄なのですか?
船渡:
鍋の材料に使う金属は、今のところ銅、鉄、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられます。
熱伝導の点からいえば銅が一番良く、熱をすばやく伝えるので焦げにくい。次にアルミニウムが続きます。あとは鉄、チタン、ステンレスの順になります。但しアルミニウム、チタンなどは軽さが売りなので鍋に加工する場合は薄くしているのが実情です。そうなると実際の鍋の熱効率を考えると鉄はもう少し順位が上がります。丈夫さの点でいえばチタンが一番強く、次に鉄、続いてステンレス、銅、アルミニウムの順になります。価格の安さの点でいえば一番は鉄。アルミニウム、ステンレス、銅、チタンの順。つまり総合点で評価すると鉄が一番優れているという事になります。それになによりも鉄は油との吸着力が強く、なじみやすく、はがれにくいので、油を欠かせない中国料理には鉄は中華鍋にとって最適の素材といえます。
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珍しいアルミの中華鍋 |
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チタン製 丈夫で軽い |
塘:
中華鍋を購入するときのポイントがあったら教えてください。
船渡:
まず家庭では火力の問題があります。あまり大きいと使いづらいし、熱効率が悪くなります。
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取手が耳か棒かの問題もとっても大事。 左が四川鍋、右が北京鍋 |
我が家の場合は口径30cmぐらいのものを使いますが、別に不便と感じた事がありません。それぐらいでちょうど良いと思います。あとは重さでしょうか。重すぎても鍋が振りにくく、使いづらいだけですので。ちょっと鍋をふってみて、しっくりくる重さかどうかで判断してください。家庭用の中華鍋は、今はフッ素樹脂加工されたものが主流ですが、もしフッ素樹脂加工されていない昔ながらの鉄製の鍋を購入された場合は一度十分空焼きをしておく事。表面にさび止めの油が塗られている場合があります。これは邪魔なので焼いて取り除いてください。焼いたあとは自然に冷まして、冷めたらタワシでよくこすって水洗いします。鍋には取手が棒になっている北京鍋と耳が2つある四川鍋がありますが、どっちがよいかは、手にとって使いやすい方を選んでください。
塘:
うちのかあちゃんが良く中華鍋に材料をくっつけて焦がすのだけれども、どうしてでしょうか?
船渡:
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炙鍋(ヂー グオ) 鍋ならし 熱くした鍋に油をお玉1杯入れて鍋を回す。 |
たぶんそれは鍋ならしが不十分だったからではないでしょうか。中国料理の基本の操作で「鍋ならし」があります。中国語で炙鍋(ヂー グオ)といいます。やり方はまず鍋をよ〜く空焼きして熱くしておきます。そこに冷たい油をお玉1杯ほどたっぷり注ぎます(油が少ないと火が出る場合があり危険です。用心のためコンロの火は消しておきましょう)。そうすると鉄の表面に油の皮膜がしっかりついて、食材が貼りつくことを防いでくれます。ポイントは最初の空焼きのところで十分熱くするかどうかで決まります。冷たい鍋に油を引いても皮膜は脆弱で食材がくっつきやすくなります。ところで今回の天津飯の卵もよく鍋ならしをしないとくっつきますよ!注意してくださいね。・・・・・・って言うか先輩はもっと奥さんの面倒見てくださいね。
塘:
天津飯は卵の火の通し方にポイントがあると思いますが、どんなところに気をつけたらいいでしょうか。
船渡:
火の通り具合は半熟だけど卵液が流れてこない感じがいいですね。火力は焦がさない程度の中火です。
油の量は卵1個に対し油大さじ1ほどで。まず油を少し煙が出るほど十分温めます。そこに卵を入れて一気に混ぜます。この混ぜ方がポイントで、底から大きく素早くかき混ぜ、均一に卵に火を通す事が大切です。また余熱で火が通ることを考えて良い状態の一歩手前で火を止める。この見極めも大事です。
中華鍋は一つで、焼いたり、揚げたり、煮込んだりと何でもできる便利さがあります。目的に合わせて鍋をいくつも購入する必要がありません。大変使い勝手がよい器具です。使い慣れたらこれほど愛らしい調理器具はありません。早速今晩でも中華鍋で天津飯にトライしてみてはどうでしょうか。フライパンでもできなくもないが、なかなかきれいな丸い形になりません。やはり中華鍋でやると卵が自然に中央に集まり、丸くなり恰好がつきます。
塘:
ところで船渡先生はフードファイター並に食べる事ができるとか?
船渡:
食べ歩きに行ったとき、珍しい料理があれば片っ端から注文しますね。今度いつ来られるか、わからないから後悔しないように沢山注文します。先輩と一緒に行くといつも「注文し過ぎだ!いったい誰が食うのか!」って怒られます。約30品のメニューの端から端まで食べた事があります。
塘:
勉強家なのか食い意地が張っているのか、わかんないですね。
船渡:
こんなに食べても体はスリムなんですが・・・・・・っていうかほっといてください!
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