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今までは本校の先生方の思い出話とか料理にまつわる話、歳時記等の話が中心でしたが、今年は日常を振り返り、例えば「チャーハンをパラパラに上手に作りたい」とか「プリプリエビチリを作りたい」とか、より具体的、実践的な内容でお贈りします。つまり、ある料理にスポットを当てそれに関する疑問に答え、どのようにしたらより美味しくなるかを考えます。けっして難しいことはないのですが。 |
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残暑厳しい今日この頃ですが、こんなときは冷たいデザートが食べたいですよね。中国料理の定番デザートといえば杏仁豆腐かマンゴープリンというところでしょう。ですが、今回の「ハオチー!中国料理!」では今後ブレイクするのではないかと思われるデザートを紹介いたします。それは「茘枝布甸」、ライチプリンです。ライチは最近、認知度が上がり、オーストラリア産や中国産など冷凍品ですが、よくスーパーでも見かけます。国内では、宮崎県、鹿児島県でも出荷されていて、高級果物としてまれに百貨店でも売られています。ライチは楊貴妃が大変好きだった事で有名ですね。唐の玄宗皇帝は楊貴妃のために、夏になると南方から早馬を走らせて運ばせたと伝えられています。今回は辻調の楊貴妃?「点心の妖精」こと藤田先生に、冷たいデザートについて熱く語っていただきます。質問者は前回に引き続き「上海の兄やん」こと塘です。
塘:
ライチについて色々教えてください。
藤田:
ライチは中国南部が原産で、広東、広西、四川、福建などが主な産地です。夏が旬で、5〜7月が最盛期です。癖がなく、程よい甘さと酸味があり、爽やかな香りが漂います。しかし、その風味は長持ちせず。昔からその保存には苦労したようです。唐代の詩人、白居易は「茘枝が枝から離れたら、一日にして色が変わり、二日目で香りが変わり、三日経つと味が変わる。四、五日たったら色、香り、味が尽きてなくなる」といったそうです。新鮮なライチは表皮が鮮やかな赤紫で、甘い香りがします。しかし、時間が経つにつれ、黒っぽくなります。冷凍品でも明るい赤色をしていれば、それは良品といえます。最近は宮崎産や鹿児島産のものなど国産の完熟ライチを手に入れることができるようになりましたが、まだまだ全国的に出回るには少ない状況です。今年は特に天候不順で出荷量が少ないそうです。ライチの生鮮品を入手するのは難しいけれど、冷凍品か缶詰であれば割と簡単に手に入れることができます。しかも安価です。今回は冷凍品を使っていますが、缶詰めを使う場合はシロップも一緒に使ってくださいね。製菓材料を扱っている店ではライチピュレが売られています。これならそのまま使えるので、とても便利ですね。
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冷凍ライチ:出来るだけ 明るい色のものを選ぶ |
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手前:ライチの缶詰め 奥:ライチピュレ |
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NG:沸騰しているところに 入れてはダメ |
塘:
今回のデザートはゼラチンを使いますが、使うときの注意点があれば教えてください。
藤田:
ゼラチンは寒天と違って、弾力と粘りが強く、柔らかくて口溶けがよい。また、泡を抱きこむ力を持っているので、冷やしながらビーターで混ぜるとムースのように仕上げる事ができます。酸に弱いのですっぱいものを固めるときはゼラチンの量を少し多めにします。熱に弱いので、加熱するときは溶かしたら煮立たせないようにして下さい。また、タンパク質分解酵素プロテアーゼ(protease)を多く含むパパイヤやパイナップル、キウイフルーツなどの果物を使用する場合は固まりにくくなりますので、ゼラチンの量を多くするか、一度加熱して酵素の働きを弱めてから使用してください。 さらに、ゼラチンは長時間冷やすと結着力が強くなり、固くなります。1時間冷やして程よい固さでも、そのまま一晩おくとかなり固くなって口当たりが重たくなります。一晩おく場合は1時間で程よく固まる分量の1/2〜2/3量で良いといわれています。今回のゼラチンの使用量は1時間で程よい固さになる分量です。
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氷水につけて十分ふやかす |
塘:
他に「これはポイントだ」というようなところはありますか。
藤田:
ゼラチンは前もって氷水につけて膨張させておくと、さっと溶けやすくなります。以前に板ゼラチンを直接鍋に入れて溶かしたことがあるのですが、鍋の底に貼りつき、なかなか溶けないで結局それが焦げてしまって失敗した事があります。「ゼラチンは氷水で戻す」失敗しないためのポイントです。
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技術研究所の生徒に点心を指導中 |
塘:
ところで藤田先生はなぜそんなにデザートが得意なのですか?
藤田:
私は辻調理師専門学校を卒業した後、“辻調理技術研究所”という上級進学校の“中国料理研究課程”でさらに!中国料理を勉強しました。実は学生の時に一番苦手だったのが点心で・・・(内緒ですヨ)。技研中国で点心を学び、その時点心を教えてくださった先生の技術がすばらしかったこと!そして実習が、点心を作ることが楽しかったんですね。職員になってからも点心を得意とされる先輩方との“運命の出会い”をしまして、今ではどっぷり点心・デザートの虜です(笑)。デザートが得意というよりは、デザートを作るのが楽しくて、好きなんでしょうねぇ。食べるのはもっと好きです!
塘:
なるほどとてもおもしろい話でした。「人に歴史あり」って感じですね。
藤田:
点心とデザートでは誰にも負けません!(のつもりです)
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