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北京料理、上海料理、四川料理、広東料理、点心と5つのジャンルを、それぞれ担当の厨師(料理人)、点心師(点心専門家)が、中国での体験を交えながら料理の作り方とそれにまつわる話を紹介します。まずは、基本的な料理から始めましょう。 |
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泮水素芹香 |
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フェスティバルの看板 |
香港マンダリンホテルでの研修を始めて半年、生活にもすっかり慣れた1987年の夏の暑い日、お昼の休憩時間にセントラルにあるランドマークに涼みに行くと何やら賑やかな様子で、天井には提燈、花などが吊るされています。人が集まっている所に行くとそこには大きな台が設置され、中国における最高峰の宴席、満漢全席の飾りつけがしてありました。写真で見たり、話では聞いたりしたことはあるのですが、実際に見るのは初めてです。飾りつけ、配置にも色々と決まりごとがあり、その辺りはひときわ豪華な雰囲気が漂っていました。
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華やかな飾りつけ |
さらに、通路には料理の写真(実物でないのが残念でした)が置かれてありました。家禽、野菜、肉、海鮮、点心などの部門に分かれていて、それぞれ白金(プラチナ)賞、金賞、銀賞、銅賞と書かれています。あいにくゆっくり見る時間がなく、後ろ髪を惹かれる思いで急いで調理場にもどりました。「あの催しは何だったんだろう」と思って一緒に厨房で働いている人達に聞くと、年に一度開かれる「香港フードフェスティバル」ということでした。さらに、「知らなかったの」と話が続き、ホテルに研修に来た当初料理長だった林勝倫氏が野菜部門で最高の白金賞を昨年獲得し、受賞した料理を求めてお客さんが殺到して、マンダリンはうれしい悲鳴をあげていたそうです。このように各部門で賞に選ばれた料理はそのお店に行けば食べられるというわけで、お祭り騒ぎの大好きな香港の人達はさらに盛り上がるのです。
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マンダリンの「泮水素芹香」 |
林先生の受賞料理「泮水素芹香」(五目野菜の炒めもの)を初めて見た時に、私は正直な所、「これが?」と思いました。華やかさに欠け、創意工夫もないように思われたのです。ところが、食べてみてびっくり。普通の塩味炒めなのですが、それぞれ素材の味を殺さず、それぞれの素材の食感をいかし、噛んだときの絶妙な歯ごたえに驚きです。野菜の切り方に工夫があり、計算された味付け、食感には目から鱗が落ちる思いでした。
私が香港で暮らした1年の間に日本では体験できない中国の風習を体で感じることができました。新年では年糕(甘い餅)、端午の節句には粽、中秋節には月餅などのように、祝祭日には香港の人達は一斉に同じものを食べてお祝いをするので、小学生の頃にタイムスリップしたような錯覚がしました。
しかし、香港は昔のことばかり重んじているわけではありません。常に新しいことにチャレンジする気持ちを忘れません。私が香港にいた1987年に、いち早くポケベル(香港ではピーピー鳴るからPP機という)が流行っていて、携帯電話もヤクザのボスのような人がすでに使っているのを見かけました。それで、香港では携帯電話を大哥大(ヤクザのボス)とも言うのですが。日本では、その後3〜4年たってから、ポケベルが使われだしたのです。
日本は目先のことばかりに気を取られ、大切な何かを置き去りにしてきてしまったように思うことがあります。昔の風習や習慣がないがしろにされているような気がします。食文化においても同じことがいえそうです。お節料理は作らなくなり、月見団子は食べなくなり・・・・・・門松は見られなくなり、目上の人を敬わなくなり色々です。自己中心的なことが多くなりました。座右の銘というほどではありませんが、「温故知新」この気持ちを忘れないでほしいと思います。過去を振り返り、現在を見直す。良くないことは切り捨て、良いことは続けていくことが大切ではないでしょうか。料理も歴史的な背景を知り、基本をしっかりと学んでこそ前に一歩進むことができます。先人が築きあげてきたものには素晴らしいものがたくさんあります。そう思われませんか。
林先生の受賞料理「泮水素芹香」(五目野菜の炒めもの)を、今回マンダリンホテルの調理場と同じように作ってみました。本場、香港の味に是非チャレンジしてください。
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