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北京料理、上海料理、四川料理、広東料理、点心と5つのジャンルを、それぞれ担当の厨師(料理人)、点心師(点心専門家)が、中国での体験を交えながら料理の作り方とそれにまつわる話を紹介します。まずは、基本的な料理から始めましょう。 |
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三鮮炒麺 |
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辻調に入って夏休みも過ぎ、学校生活にもすっかり慣れた頃、担任の先生の紹介で、本町にある、とある四川料理店でアルバイトをしたのです。初日、緊張しながら厨房で皿洗い、鍋みがきから始めて、時間が空いたら材料の下処理、前菜の盛り付けの手伝いなどをしました。その日の賄い(厨房の食事)が、担担麺でした。麺類がすごく好きで、それまでは地元の愛知県で、ラーメン、焼きそば、スパゲッテイ、インスタントラーメンなどをよく食べていました。それなりにおいしいと思っていたのですが、その担担麺を食べて衝撃を覚えました。細麺、スープの辛味、ゴマの風味が見事に合わさり、あっという間に麺を平らげ、残ったスープに白ご飯を入れ、雑炊風にして食べ、ものすごく満足した記憶があります。
担担麺は、本場四川省ではスープのない和え麺です。担担とは「荷を担ぐ」という意味で、昔は天秤棒で道具一式を担いでこの麺を売り歩いたため、かさばるスープは使わないで、タレと麺をからめて食べるスタイルだったのです。スープが入っている担担麺は、四川料理を日本に紹介した陳建民氏が日本人向けに考えたものだと言われています。
半年くらい厨房で働いてから、ホールのサービスをしました。中国語のメニューからどのような料理なのかを学んでいた日々でした。時間のあるときにじっとメニューとにらめっこです。麻婆豆腐の「麻婆」が「あばたのあるおばさん」であるとか、ナッツの入った鶏の辛み炒め「宮保鶏丁」は丁宮保(宮保は太子を補佐する官職)」と呼ばれていた丁宝驍フ家で作られたので名づけられたとか、「樟茶鴨」は樟(クスノキ)と茶葉を燻して鴨に香りをつけたものということも知りました。宴席メニューでは、「什錦鍋巴(おこげの五目あんかけ)」を見て中国には「おこげ」の料理があるのだと感心したり、「鳳城滑魚生」を見て「滑らかな魚」って何だろうと考え、刺身に油をかけるのだと納得したりしていました。
どれだけ料理がおいしくても、サービスの担当者がメニューをうまく説明できなくてはお客様はどんな料理なのかわからず、わからないままでは充分満足されません。どのようにすれば食事の時間を楽しんでいただけるのかと、毎日が勉強です。嫌なお客さんがいたとしても笑顔で応対をしなければいけません。厨房との連携、料理の出し方などさまざまなことを教えていただいた学生時代でした。
振り返ると、子供のころは「硬焼きそば」が好きだったのです。そう、揚げそばタイプの麺ですね。かむとパリパリ崩れて揚げた麺の香りが口いっぱいにグハーッと広がります。まぁ、ベビースターラーメンみたいな駄菓子に近い感覚を喜んでいたのかも知れません。だから、当時の僕にとって具やあんは邪魔。かかったところは麺が軟らかくなりますから。まず具とあんを急いで食べ、その後ゆっくり硬い麺をパリパリ楽しむという、親にしかられながらそんな下品な食べ方をしていました。
中学時代は「ソース焼きそば」に凝りました。縁日の屋台で食べるのもうまかったけれど、なんといっても「焼きそばパン」です。ソース焼きそばがドヒャッと入ったのが好きで、下校時によく買い食いをしました。 あとはスーパーでよく売っている粉末になったソースがついているタイプ。毎日学校から帰ってきたら作って食べていました。
こんな風に、「硬焼きそば」→「ソース焼きそば」と遍歴してきた僕の焼きそば人生ですが、大人になってからは煎り焼き麺を使った「あんかけ焼きそば」にたどり着きました。ちゃんとした中国料理店で見かける炒麺です。表面はカリッと中を軟らかく煎り焼いた麺は、具やあんとのなじみがよいのです。具だくさんの下に隠れている軟らかい麺。麺と具の入ったあんのバランスも大事なのです。
大の麺好きの僕の一押しは、「担担麺」です。残念ながら、この料理はすでに作り方が掲載されているので、2番目に好きな「あんかけ焼きそば」を今回ご紹介しましょう。麺は煎り焼く前に、蒸してゆでるという手間をかけます。この手間がおいしさの秘密なのです。
そういえば、母が「あんかけ焼きそば」をよく作っていました。市販の焼きそば用蒸し麺を両面煎り焼いて、八宝菜みたいなのを上からかけるのです。今思えばおいしかったな・・・。知らず知らずのうちに「お袋の味」を懐かしんでいるのかも知れません。
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