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中国料理TOPへ好吃(ハオチー)!中国料理! コラム一覧へ
連載コラム 好吃(ハオチー)!中国料理!
北京料理、上海料理、四川料理、広東料理、点心と5つのジャンルを、それぞれ担当の厨師(料理人)、点心師(点心専門家)が、中国での体験を交えながら料理の作り方とそれにまつわる話を紹介します。まずは、基本的な料理から始めましょう。
なすの四川風辛味煮込み
魚香茄子


魚香茄子

   
   1979年、1983年に、合わせて約7ケ月間、台北にある「萬順樓」と「榮星川菜餐廰」で研修をするチャンスを得ました。

板の1番、劉さん(左)と私

板の1番、劉さん(左)と私

   最初の研修は、1979年12月〜1980年3月にかけての4ケ月間、台北の長安東路1段沿いにあった江南料理のお店、寧波浙江菜「萬順樓」でした。私にとっては初めての海外での生活でもあり、期待も不安もとても大きかったのが正直な気持ちです。

   「萬順樓」は昼は近くのサラリーマン、OLを対象にランチを提供し、夜は一転して一品料理よりも、宴会料理が多く入ります。江南料理の特徴として、特に寧波は海に面した地域とあって魚介類が豊富です。

   代表的なものとして、前菜では、田ウナギをカリカリに揚げて甘辛いタレと薬味でからめた「脆」、料理では、同じく田ウナギ、黄ニラ、モヤシを炒めた「炒糊」や河海老を塩味であっさりと炒めた「清炒蝦仁」、イシモチを蒸した「清蒸黄魚」がありました。毎日大量のイシモチが使用されるとあって、魚肚(浮き袋)を取って屋上で干して、料理に使っていました。そのほか、生きたスッポンやウナギを栗と氷砂糖で煮込んだ栗子裙邊、栗子河鰻があり、清蒸裙邊、清蒸河鰻などの蒸しものもこの店のスペシャリティです。

   研修期間中に、133卓(1卓12人)もの予約が入った日がありました。その日は、調理場全員が朝早くから出勤し、メイン料理の材料であるスッポン、ウナギが大量に処理され、各セクションで順調に仕込みが進められて行きます。
セイロ一杯の野菜ギョウザ

セイロ一杯の野菜ギョウザ

私もスッポンとウナギをさばいていたのですが、余りに沢山処理したので臭いが手に 染み付いてなかなか取れませんでした。宴会の多い日は午後 になると点心部からお呼びがかかります。 この日は1000個を超える包子を夕方まで延々と包んでは蒸していました。多少の調理経験があったので、結構点心部から頼られていたようです。しかし、よく考えてみると、忙しい日は猫の手も借りたいというのはどこの部署でも同じかもしれません。


  そして、宴会が始まりました。前菜は4品出され、夏は冷たい前菜が、冬は温かい前菜が多くなるのですが、この日は卓数が多いので、冬でしたが冷たい前菜が2品です。昼の間に仕込み、盛り付けてあった冷たい前菜が、大きなチャンバーからラックごと出され、次々にソースがかけられてテーブルに運ばれます。

   冷たい前菜の次は温かい前菜です。
そして、ここからが鍋担当のコックさんの本領発揮です。まずは、「炒糊」。鍋の一番と二番が、二人で半分ずつ、直径1メートルもある大きな中華鍋で炒めていました。20〜30卓分を一気に仕上げるのですが、私が1卓分を作るのと全く同じような出来上がりで、さすが!と思いました。もう1品は「脆皮蝦球」で、鍋の3番手が大きな中華鍋で大量に海老を揚げていました。

   いよいよメイン料理です。
萬順樓の蒸し場

萬順樓の蒸し場

ウナギの蒸しものは、蒸しもの担当のコックさんによって作られ、仕上がると次々に厨房から出されます。また、昼に仕込んであった40〜50卓分のスッポンの煮込みは、4人の鍋のコックさんが1卓分ずつ温め、味を調え、水溶き片栗粉でトロミを付け、鍋をひっくり返して仕上げます。とても大変なことですが、鍋で1卓分ずつグツグツ煮込んで仕上げるというのが、この店のこだわりなのです。圧巻!これぞプロの仕事だと思いました。そして、残りの料理が時間内に正確にてきぱきと作られていました。

  
その後、30卓や60卓の宴会が入っても、そんなに苦労と思わず仕事に取り組むことができました。この店で学んだことは、江南料理の特徴ある料理、技術はもちろんのこと、中国料理の宴会料理の最大の特徴である、大量に料理を作り、サービスするノウハウです。

   次に研修したのは、1983年12月〜1984年2月にかけて四川料理店「榮星川菜餐廰」においてでした。料理長の呉少臣氏は、来日して料理講習会の実演をされたこともある(当時は珍しかった)、台北の調理業界で大変有名な方でした。

   季節こそ同じでしたが、「榮星川菜餐廰」は「萬順樓」と料理内容も違い、10卓〜30卓程度の宴会は入るものの、昼も夜も一品料理客が多く、また、ガイドブックにも載る有名店のため、日本人観光客もたびたび訪れるなど客層も違っていました。異なる環境の中で研修ができたのは大変有意義だったと思います。日本でも馴染みのある四川料理とあって、知っている料理も多かったのですが、台湾で産する食材、調味料を使うので、出来上がり、味付けなどは、日本の四川料理とは大きく異なり、大変勉強になりました。

   調理場が地下にあり、ここで起こった四川料理ならではのエピソードを紹介しましょう。昼の営業時間が始まって暫くたった時でした。調理場の排気ダクトが突然故障して、調理場がみるみる内に、豆瓣醤、唐辛子、山椒を炒めた煙で真っ白になり、私は目を開けていることも、息をすることも出来なくなってしまいました。しかし、この調理場に慣れた人達は、黙って控室に入り、なんと水泳用のゴーグルをかけ、口にタオルを巻いて出てくると、何事もないかのように淡々と鍋を振り始めたのです。ゴーグルもタオルも持たない私は、両手で口と鼻を覆うのがやっとで、とても仕事にはなりません。さすが、榮星の精鋭達!なんとか夜までには排気ダクトの修理も終わり、通常営業ができたのですが、四川料理店で排気ダクトが故障したらどんなに大変か身をもって経験しました。みなさんも是非その時のためにゴーグルとマスクを準備しておいては如何でしょうか(笑)。こうして、3ケ月間の「榮星川菜餐廰」での研修も無事終了しました。

   二度の研修を終えた感想は「百聞不如一見(百聞は一見に如かず)」。まだまだ自分の知らない料理、食材、調味料、覚えなくてはならない色々な技術があることを思い知らされたのでした。この地方の1品、このお店の1品を、是非皆さんも機会がありましたら、見て、食べて、覚えて、感じていただきたいと思います。研修期間中、料理以外では、人の親切が一番心に残っています。本当に多くの台湾の方々がとても親切に接してくれました。海外において、自分1人では何もできない小さい力しかないところを、ちょっと人の力を借りることによって、大きく学べることを痛感しました。

   今回は、「榮星川菜餐廰」の数多くのメニューの中から、日本人には「マーボーナス」の名で知られる、なすの四川風辛味煮込み(魚香茄子)を紹介したいと思います。私にとっての魚香茄子は、麻婆豆腐同様、研修中、御飯のおかずに合う料理としてよく食べていました。ピリッと辛味があり、なすと豚挽肉の旨味と甘味、酸味がよくマッチして美味しい料理と思います。一度お試し下さい。

 

このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ なすの四川風辛味煮込み

辻調の異烹人
人物 中村真
中文之星
人物 福冨奈津子
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