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今までは本校の先生方の思い出話とか料理にまつわる話、歳時記等の話が中心でしたが、今年は日常を振り返り、例えば「チャーハンをパラパラに上手に作りたい」とか「プリプリエビチリを作りたい」とか、より具体的、実践的な内容でお贈りします。つまり、ある料理にスポットを当てそれに関する疑問に答え、どのようにしたらより美味しくなるかを考えます。けっして難しいことはないのですが。 |
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今回は、揚げ物の基本、鶏の唐揚げにスポットを当てたいと思います。そういえばWBCで大活躍の松坂大輔選手の西部ライオンズの入団のきっかけとなったのも鶏の唐揚げでしたね。当時の監督、東尾修氏が松坂君を高級中華料理でもてなしたとき、その中にさりげなく好物の鶏の唐揚げを入れました。感動した松坂君は入団をそのときに決めたそうな。粋な話ですね。鶏の唐揚げを嫌いな人はあんまりいないと思います。私(塘)も大好きな料理です。簡単な料理ですが、奥が深く上手く揚げるにはそれなりのコツがいります。今回は高橋先生に唐揚げについてのコツを色々聞いて見たいと思います。
塘:
まずは、唐揚げに向く鶏肉は?
高橋:
主にスーパーでは、鶏肉はムネ肉、モモ肉、ササミ、手羽先、手羽元等の部位に分けて売られています。唐揚げでは、肉の味が濃く、適度な脂肪分のあるモモ肉が向いています。ムネ肉、ササミは、モモ肉より柔らかくしっとりした肉質ですが、味が淡白で脂肪分も少ないため、火を通しすぎるとパサついてしまい、唐揚げには向いていないと感じます。どちらかというと前菜向きです。また、手羽先、手羽元は脂肪分、ゼラチン質が豊富でコクがあるので、煮込みに使うことが多いのですが、身が少ない点を除けば唐揚げにも向いています。
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やはり唐揚げに向くのはモモ肉と |
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手羽元、手羽先など |
塘:
骨付きの方が美味しいと聞きますが、やっぱりモモ肉でも骨付きがいいの?
高橋:
唐揚げの美味しさは何と言っても、あのジューシーな肉汁です。その肉汁を外に逃げないようにするのは皮です。また、骨があるとそれがちょうどつっかえ棒みたいになり、肉の縮みを少なくします。結果ジューシーに仕上がるのです。だから全体を皮で被われて、骨があるモモ肉は唐揚げにとっては理想的といえます。でも、今回は食べやすさや、家で作る場合に骨を断ち切る包丁が必要になるため、それは大変面倒なので、手軽な鶏モモ肉開き(骨無し)を使います。
塘:
唐揚げの衣はどんなもの?
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衣は薄すぎず厚すぎず |
高橋:
一般の唐揚げの衣は中国では軟炸糊(ルワン ヂャー フゥ)といわれ、卵、水、小麦粉、片栗粉で作ります。小麦粉、片栗粉の割合は様々ですが、小麦粉の割合が多いと軟らかく仕上がり、片栗粉が多いとカリッと仕上がります。また、卵の割合が多いとふっくらした衣になります。今回は少量の卵と水、片栗粉のみを使います。衣の量は極端に多いとカリッとはなるが香りが出にくく、逆に少ないとカリッと感が持続しません。程よい量が大切です。程よい量かどうかは文ではなかなか説明しにくいので写真を参照してください。
塘:
油の温度を見るにはどうしたらいいの?
高橋:
揚げ物をするときの油の最適温度は、170〜175℃といわれていますが、見た目だけでは分かりません。どうやって判断するかというと、衣を入れてみるのが一番わかりやすいと思います。油の中に少量の衣を落としてみて、底に引っ付いてなかなか上がってこないのが150℃以下で、鍋底に一度ついてすぐに上がってくるのが160〜165℃。中ほどまで沈んで上がってくるのは170〜175℃。衣が沈まず表面で浮いて、すぐ色がつくのが、180℃以上といわれています。しかし、落とす衣の量にもより誤差がでますので、何回か経験をつんで感覚をつかんでください。油は温度が上がるにつれて、粘度が少なくなり、サラッとしてきます。そんな性質を利用して我々中国料理人は油の泡立ち具合とか、油をお玉からたらしてみて、粘り具合を測り、それによって油の温度を判断します。
塘:
揚げ方のコツは?二度揚げとは?
高橋:
揚げ物は、油の適切な温度を保たせることが大切です。そのためにも、できるだけたっぷりの油で揚げることです。油の量が少ないと、材料を入れたときに油の温度が急激に下がり、衣が油を吸ってしまいます。油の温度を一定に保つようコントロールする事が大切です。
二度揚げとは2段階に分けて揚げていく方法です。二度揚げは大きい物、火の通りにくい物に向いています。逆に小さい物やイカやエビなどの魚介類は火が通りやすく、すぐに硬くなってしまうのであまり向いていません。一度揚げは、165〜170℃の少し低めの中温にして揚げます。材料の内部に水分をとどめながら中心まで火を通すことが目的です。この段階では衣はまだ水分があり、油も多く含んでいてべチャッとしています。
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揚げるときに皮をのばして 身を覆い包みこむ |
二度揚げは、175〜180℃の高温で、水分を飛ばしながらカリッと揚げます。衣の中の油も水蒸気と一緒に外に流れ出て、カラッと仕上がるのです。中国料理では揚げ物の理想的な出来上がりは「外脆裏嫩(ワイツェイリーネン)」です。これは外側がカリッとしていて、中は軟らかい状態をあらわしています。この状態に仕上げるためにも二度目は高温にして揚げていきます。特に鶏の唐揚げは表面の水分を念入りに飛ばさないと中からにじみ出る肉汁によってすぐに湿気りベチャベチャになります。皮は先ほど述べたように肉汁を外に逃げないようにする役目がある、裏を返せば衣を肉汁から守りカリッとさせる働きもあるので、できるだけ取らずに残しておいてください。
塘:
なるほどよくわかりました。唐揚げ一つとっても色々あるのですね。
高橋:
料理って奥が深いですね。ところで僕も松坂君みたいに、たまには高級中華料理でもてなして(おごって)くださいよ。
塘:
あ〜、唐揚げだけならね。
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