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北京料理、上海料理、四川料理、広東料理、点心と5つのジャンルを、それぞれ担当の厨師(料理人)、点心師(点心専門家)が、中国での体験を交えながら料理の作り方とそれにまつわる話を紹介します。まずは、基本的な料理から始めましょう。 |
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中国料理のご馳走といえば、フカヒレ(魚翅)である。北京の一流レストランでフカヒレを食べ比べるという贅沢な経験をしたことがある。
六本木ヒルズにも出店している「家菜」の鴨包魚翅(アヒルのフカヒレ包み蒸し)。
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鴨包魚翅。 アヒルの中にフカヒレが詰まっている。 |
黄燜魚翅(フカヒレの上級スープ煮)をアヒルの骨を丸抜きした中に詰めた料理で、大変手間がかかるため日本においては決してポピュラーではないが、アヒルの味がフカヒレに移り大変美味しかった。店の御主人、善麟氏の祖父が西太后の食事の管理に携わっていたそうで、宮廷料理の一つといえるだろう。食事を終えた後に話を伺った。「宮廷料理は素でなければならない。良い材料を選択して、丁寧に料理を作り、味は甘すぎず、濃すぎず、塩辛すぎず、油っぽくならないことが大切である」と氏は力説した。一人200元〜2,000元(日本円で3,000円〜30,000円)で、私達が食べたのは1人500 元(日本円で7,500円)のコース。
続く2軒では、フカヒレの煮込みをご飯に混ぜ合わせていただく、フカヒレあんかけご飯を賞味する。香港で景気のよかった1970年代前半に生まれ、一世を風靡した味を、まずは自分の舌で試してみよう。
周恩来首相の肝煎りで北京飯店に店を構えた「譚家菜」で、譚家菜蟹黄翅撈飯(譚家フカヒレあんかけご飯)を食べた。
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譚家菜のフカヒレ料理。 これをご飯にかける。 |
譚家菜は清朝末期の官僚、譚宗浚の家で作られていた料理なので、官府菜(官僚の料理)といわれる。門外不出の料理であるとの理由から、作り方を教えてもらうことはできなかったが、『北京譚家菜』(彭長海ほか著、中国旅遊出版社刊)によると、「戻したフカヒレをすのこにはさんだまま鍋に入れ、上に鶏、アヒル、中国ハムをのせ、葱と生姜、水を加えて弱火でやわらかくなるまで煮込む。別の鍋に鶏油、蟹の卵を入れてさっと炒め、フカヒレと漉した煮汁を入れ、酒、塩、砂糖などで味をつけ、弱火で10分ほど煮て、皿に盛りつける。煮汁の味を調え、水溶き片栗粉でとろみをつけ、鶏油を加えてフカヒレにかける。タレは濃くコクがあり、フカヒレはやわらかくもちっとして、蟹の卵の旨みもある」そうだ。私達が食べたのは一人3,000元(45,000円)の最高級コース料理だったが、フカヒレ料理以外は国営店にありがちな、伝統を守ることに固執し過ぎていて、時代の流れに沿ってもう少しなんらか工夫が欲しいところである。「中央指導者から伝統を守るようにいわれていて勝手に味を変えられない」と料理長のコメントあり。なるほど。
そして、貴賓楼「グランドホテル北京」の広東料理「明園」で食べた砂鍋翅泡飯(フカヒレのあんかけご飯)。
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明園のフカヒレ料理。 半分食べたらご飯を入れる。 |
香港の広東料理店で食べる紅焼魚翅(フカヒレの醤油煮込み)のように、上湯(上級スープ)ベースで仕上げた料理とは違い、スープに濃湯(ノンタン)が使用されていて、大変コクのある仕上がりになっている。聞くところによると「明園」では、濃湯はひね鶏(2.5〜3歳)とアヒル(3〜3.5歳)を約20時間煮出したものに、豚肉、金華ハムを加えてスープを取る。そうして出来上がったスープは鶏の脂肪が出て黄金色に仕上がるとの説明であった。食べ方は、先ずスープの香りを嗅いで一口味わい、次に香菜を入れて味に深みを増し、最後に赤酢を入れてまた味わう。半分になったところでご飯を入れて食すとのことであった。濃い味を好む北京の人たちに合わせて仕上げているので、濃湯の味が口に広がり過ぎて、日本人には少ししつこいという印象だった。驚くのは、一番高いコースは一人3,500元(日本円で52,500円)もし、平均1,500元(日本円で22,500円)である。ちなみに砂鍋翅泡飯(フカヒレのあんかけご飯)の入ったコースは850元(日本円で12,750円)から。
家庭でフカヒレ料理というわけには行かないので、中国料理の奥深い部分が見え隠れする卵料理を紹介したい。中国語で賽パン蟹(パンは虫偏に旁)といい、パン蟹は蟹を意味し、賽は蟹の身よりも勝る、蟹の身を使っていないのに蟹の身に匹敵するという意味である。私がこの料理を初めて知ったのは、昭和50年頃に香港から招聘され、約5年間に渡って辻調理師専門学校の客員教授をされた、山東料理が専門の石健義先生からだった。一見何気ない卵だが、手を加えると食べる側に小さな感動を与える。新鮮な卵白を低温の油でゆっくり揚げることによって、ふんわりとやわらかい状態に仕上がるのだ。ぜひ一度チャレンジしてください。
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